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日本と同様にドイツにもある家族崩壊

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僕がホームステイした家族では、長男(25歳)と長女(21歳)が全く会話をしないという絶交状態だった。でも両親は放任していた。


僕がドイツ語勉強のために1999年春に、シュツットガルト郊外に住むH家にホームステイしたことは他のブログにも書いたけど、H家でホームステイを始めて数日後に奇妙なことに気づいた。初めて訪れた日の夕方には、主人(Rさん・55歳)と奥さん(Iさん・50歳)と長女(W・21歳)と彼女の夫(A・29歳)が僕と談笑をした。でも、長女夫婦はバンドを組んでいるほどの大の音楽マニアだったので、僕があまり音楽に興味がないことを彼らに告げると、それ以来、僕にはほとんど話かけなくなった。

それで、数時間後にH家で夕食の支度をしていると、今度は長男(J・25歳)と彼の恋人(C・22歳)がやってきて僕と親しく話を始めた。それで、その日は夕食を食べ終わった後もJと彼の恋人Cと長時間談笑をした。どうも、長女夫婦よりも長男カップルの方が僕と合うようなこと僕でもよくわかった。長女夫婦は別の家に住んでいて、大の音楽ファンだから家の中にも楽器や音楽機材がたくさんあったので、音楽に興味がない僕とは話も性格も合わないようだった。一方、長男のカップルは映画を見たり一緒にTVを見たりと、気分次第で色んなことをしていて僕も誘ってくれたので、彼らの方が僕との交流を楽しみたいようだった。

 

家族の中には長男の友達グループと長女の友達グループがあり、僕は知らないうちに長男の友達グループに入れられていた。

それで、その後、ホームステイの日にちが経っていくとよくわかったのだが、H家の中には長男Jを中心とする友達のグループと、長女Wを中心とする友達のグループがあって、この2つのグループが交流することは全くないのだった。3月末にイースターを祝うホームパーティがあったから家族がみんな集まったのだが、ここでもJグループとWグループは一つのテーブルに分かれて向かいあって座って、彼らが会話をすることは全くなかった。家に2人が同時にいる時も、僕がキッチンにある机でお菓子を食べていると、Jが僕と会話をしている時にはWは他の部屋にいて、Jが出ていくとWが入ってきて僕と会話を始めるという有様だった。

それで彼らの親であるH夫婦に、「あの、どうして長男Jと長女Wは話をしないのですか?なんか問題でもあるのですか?」と質問してみると、夫婦は手を広げて「お手上げ」という感じで、「彼らはお互いを理解できないんだ。親としては何も干渉せずに、放任主義で彼らのやりたいようにやらせているけどね。数年前からほとんど話をしなくなったけど、そのうち自然に仲直りするのを待っているんだ」と、やりきれない表情で言った。

でも、僕も日本にいる自分の家族の中で同じような問題を抱えていたので、「でも、別に大した問題ではないですよ。なんだが、僕の家に戻ったよう感じがします。僕の家でも僕と父は思想、趣味が合うからよく話をするけど、母と兄と妹とはあまり話をしないんですよ。僕の家族もで僕と父が1つのグループで、母と兄と妹が1つのグループになっていてあまり交流しないんです。ドイツの家族にも同じようなグループ化があると知ってなんだか落ち着きました」と僕が言うと、H家の主人と奥さんは「世界中のどこの家族でも、みんなが自分の生きたいように生きると、どうしてもバラバラになるんだろうね」と言って、苦笑いをしていた。

それで、ここまで書いたことを読めばわかるように、僕はどうもH家の中で長男Jのグループに入れられたようだった。たしかに、長男Jと彼の恋人Cはドイツ人の若者の中ではあまりイケメン、カワイイとは言えないような顔立ちで家で遊ぶことが多いオタクのグループだったが、長女Wと夫Sは顔立ちがカワイイとイケメンであり、音楽バンドまで組んでいるという活動的なグループだったから、オタクぽい自分とは合わないと思った。だから、その後も長男は友達をたくさん紹介されて僕は彼らと交流をしたが、長女と夫が家に来るとあまり話すことはなかった。主人と奥さんは、「別に話が合わないなら、そんなに無理をして合わさなくてもいいよ。Gさん(僕のこと)はドイツの現代史と映画に詳しいという専門分野があるから、それを伸ばさせいいのだから。別に他人に合わせて自分の世界を変えなくてもいい」と言って、アドバイスをしてくれた。

結局、ホームステイが終わるまで、長男とその友達とは深い交流が続いたが、長女と夫とはあまり会話をしなかった。それでも、H夫妻は「君は家では初めてのホームステイ客だったが、大成功だったよ。日本人でこんなにナチスドイツ、ドイツの現代史に詳しい人がいるのには本当に驚いたよ。ウチでもドイツの現代史教育を見直す切っ掛けになった」と言って喜んでくれた。だから、H家で長男のグループに入れられてしまって、長女のグループとはあまり交流がなかったというのは、大した問題ではなかったのだろう。まあ、こういう趣味、主義主張の違いで家族が対立するというのはよくあることだろう。

2005年に僕が付き合ったドイツ人女性は、「私は母が子供の頃から大嫌い」と言っていた。

 


他のドイツ家族の例を挙げると、僕は2005年夏にハノーファーに住む30代のドイツ人女性(U・30代)と彼女のアパートに同棲をしていたのだが、彼女は母親が大嫌いだと言っていた。
「私の母は”できちゃった婚”で結婚をしたの。母がまだ高校3年生だった頃に私を妊娠したから、仕方なく母は初めの夫と結婚をしたの。でも、初めの夫、つまり私の父とは結婚生活が長く続かなくて母は数年で離婚したから、私は子供時代のほとんどの時間を母の両親であるおじいんさんとおばあさんと過ごしたの。彼らが私の育ての親だわ。その後、2人目の夫と結婚して妹が生まれたけど、数年前に母はまた離婚をして今はあなたと同い年くらいの若い男と同棲している。母は世界一のバカ女だから、一人の男とは長く続かないみたい」
ということを、Uは随分と怒った口調で言っていた。それで彼女は「私は母を見て結婚生活に幻滅しているから、一生結婚しないかもしれない。自分の趣味と仕事に満足しているから」ということも言っていた。これが、僕とUの同棲生活が2週間で終わった原因だったかもしれない。とにかく、彼女は浮気者の母を見て結婚生活に興味を失ったというのだから。

「ドイツには家族省という省庁もあるけど、お役所仕事をしてるだけで機能してない。多くのドイツ人は自分勝手に生きてる」と、ドイツ人弁護士の友達は言っていた。

 


その後、2006年3月に日本人とドイツ人のネット交流サイトで知り合ったドイツ人友達のSと会った時に、彼は次のようなドイツでの家族崩壊の話をした。彼は既に何度も僕のブログに登場しているが、彼は民法商法が専門の弁護士だったのでドイツの家庭事情にも詳しかったのだった。
「ドイツには既に”家族”なんていうものは存在しないよ。家族の中でも子供たちが中学生、高校生になると趣味の違い、政治主張の違い、学問の文系と理系の違いなとでバラバラの人生を歩み始める。子供たちが20歳になる頃には、イースターとクリスマス休暇の時に家族が形式的に集まるくらいで、ロクに会話もしない家族が多い」
と言って、ドイツの家族事情について教えてくれた。

僕はドイツ政府内には家族省という、家族問題を専門に扱う省庁があるのを知っていたので、
「連邦政府の家族省があるだろ?家族省があっても家族問題は解決できないのか?」
と僕が質問をすると、彼は首を振って、
「家族省なんてお役所仕事をしているだけだよ。幼児虐待、家庭内暴力、親の離婚とか極端なケースで手が一杯で、家族を一つにまとめるなんていうことまで手が回らない。趣味、政治主義の違いなどで家族がバラバラになるのは、個人の生き方の自由だからどうしようにもならない」
と言っていた。「日本もドイツと全く同じようなもので、俺の家にも家族がバラバラという問題がある」と僕が言うとSは、「日本も同じなのか。でも、先進国はどこもそうだろうね。自分の人生でやりたいことを始めると、いくら家族といっても趣味、思想、生き方の違う人たちとは疎遠になるからね。それは仕方がないことだ」と言って、やり切れないという顔をしていた。

 

ドイツ人弁護士の友達夫婦は、「将来は愛情に満ちた仲の良い家庭を築きたい」と言っていた。


その後、SのフィアンセのMとも会って友達になった。SとMが2007年9月に日本にいた時に結婚をして、その直後にも話をしたがMは家族問題について、
「私が子供を産んだら家族崩壊しないように、夫のSと子供たちとよくよく話をしようと思う。でも、子供たちに両親の価値観を押し付けることはできないから、子供たちが成人したら彼らのやりたいことをやらせようと思う。それで、子供たちが生きたいように生きて、親から離れていったらそれはそれで仕方がないわね」
と言っていた。やはり12歳くらい、つまり日本でいうと中学校入学時期で思春期になると、どこの国の親たちも子育てにはすごく苦労をするようである。これは全世界ではなくて、古今東西どこの国でも変わらないのだろう。

 

 

写真上は3世代同居をする優しい白人家族のイメージ。しかし、海外の家族にホームステイをするなどして交流をする時に、その家族が必ずしもみんなが仲の良い家族とは限らない。むしろ、多くの家族は多くの問題を抱えながら生活している。下のイラストは家族内の関係が上手くいってないイメージだが、ドイツでも日本と同じように家族問題は難しいテーマになっている。

 

 

最後に、僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。この記事のようにドイツ人家庭にホームステイした時の体験談と、ドイツと日本でドイツ人と交流した時の体験談以外にも、ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対しても興味深いブログ記事を書いているので、時間があったら他の記事も読んでみてください。感想のコメントを書いてもらうと嬉しいです。ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いていますし、これからもそういう記事を書いていきます。