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ドイツブンデスリーガではなぜバイエルンしか優勝できないのか?

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ブンデスリーガではバイエルンが、セリエAではユベントスが連続して優勝しているように、ビッグクラブがタイトルを独占しているのはなぜなのか?

 

今のヨーロッパのプロサッカーリーグはスポーツニュースを見ればわかるように、ほとんどのリーグが金持ちチームしか優勝できない状態になっている。ドイツのブンデスリーガの場合は8年連続でバイエルン・ミュンヘンが優勝している。では、なぜそのような一握りの金持ちチームしか優勝できないのかについて、ドイツ人の友達から聞いた話とネットで調べた知識をまとめて書いてみようと思う。

 

「ボスマン判決」と「ファイナンシャル・フェア・プレイ」がヨーロッパサッカーにもたらしている影響について。


まずは、1995年12月に欧州司法裁判所で出された「ボスマン判決」の影響について。ベルギー人サッカー選手のジャン・マルク・ボスマンは1990年6月にベルギー2部リーグのRFCリエージュとの契約が満了したので、次のシーズンはフランス2部リーグのUSLダンケルクに移籍しようとしたが、移籍金が欲しかったリエージュ側はボスマンの保有権を主張して移籍を妨害した。ダンケルク側は移籍金を払わずに、ボスマンはどことも契約できなかったので、ボスマンはリエージュとベルギーサッカー協会を相手どって裁判を起こした。裁判はボスマンの勝ちで移籍が認められた。

ここまでならよくある移籍にまつわる揉め事なのだが、ボスマンはさらに選手の移籍の自由を求めて、次のような訴訟をUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)に対して起こした。

クラブとの契約が完全に終了した選手の所有権を、クラブは主張できない(つまり契約が終了した時点で移籍が自由化される)事の確認。
EU域内であれば、EU加盟国籍所有者の就労は制限されないとしたEUの労働規約を、プロサッカー選手にも適用するべきである。

この訴訟は様々なプレッシャーを受けながらも、結局ボスマン側の勝訴に終わり、上述の2点の要求は完全に認められた。これによりボスマンは、サッカー選手としてのキャリアに華々しさはないものの、1990年代後半以降のヨーロッパのサッカーシーンにおいて最も有名なサッカー選手の一人となった。

影響

ボスマン判決以降、クラブにとっては従来の移籍金によるビジネスを行うことは難しくなった。現在では、5年や6年という長期間の契約を結んで、残った契約を買い取ってもらう方法で実質的な移籍金を得ている。逆に選手側では、移籍のハードルを低くするために長期の契約を結ばない者もいる。

一方で、EU域内の選手保有が制限されなくなったことを受けて、EU内のビッグネームの選手をかき集めることも可能になり、選手の流動化、リーグのマネーゲーム化、国際化が急激に加速することになった。ただし、こうした強化策が可能なのはごく一部のクラブに限られている。

こちらがウィキペディアのボスマン判決の説明

ja.wikipedia.org

 


この「ボスマン判決」の影響で、例えばバルセロナなどは1999年頃はオランダ代表選手がスタメンに6人ほどいて、EU以外の外人枠の南米人が3人いたから、スペイン人選手はスタメンにたったの1人しかいないという奇妙なチームになった。アーセナルも2000年頃からロンドンのチームなのにイングランド人はスタメンにGKのシーマンしかおらず、アンリ、ヴィルトールというフランス人選手と、ベルカンプというオランダ人選手がチームの主力になった。他の金持ちチームも自国の若い選手は起用しないで、大金(スター選手の契約の違約金)を払って外国のスター選手ばかりを買い集めるようになった。多くのビッグクラブは借金をしてまでもスター選手を買ってチームを補強したので、それに対抗するために中堅クラブはもっと借金をしてビッグクラブと戦わざるを得なくなった。そして、多くのクラブチームが多額の借金をするようになり、健全な黒字経営のクラブチームはほとんどなくなってしまった。ただ、ドイツのブンデスリーガだけは厳しく黒字経営が義務付けられていたので、健全な黒字経営クラブだけが1部リーグに残っていた。


それで、この状態が続くのはよくないというので、UEFAの会長だったミッシェル・プラチニが提唱したのが、「ファイナンシャル・フェア・プレイ」(FFP)という規則である。

概要

2007年にUEFA会長に就任したミシェル・プラティニによって提唱され、2009年の理事会で導入が決定された。この規則によって、UEFAに加盟するクラブは、移籍金や人件費などの支出が、移籍金や入場料、テレビ放映権料、大会賞金、スポンサー収入などのクラブがサッカーによって得た収入を上回ることを禁じられた。金融機関からの借入金によってやオーナーの資産によって赤字を補填することもできない。ただし、サッカークラブの本質である育成に関する費用や、スタジアムや練習場などに施設を整備する費用は支出にふくまれないとされている。審査は過去3年間の合計で行われる。2014-15シーズンまでは4500万ユーロ、2017-18シーズンまでは3000万ユーロの赤字までは許容され、2018-19シーズン以降は赤字が許容されない。規則に違反した場合は、罰金やUEFAチャンピオンズリーグやUEFAヨーロッパリーグの選手の登録人数の制限、CLやELの出場権剥奪などの制裁が科される。[1][2]

「ファイナンシャル・フェア・プレイ」のウィキペディアの説明

ja.wikipedia.org

 


簡単に言えばサッカークラブの赤字経営の禁止であり、赤字経営が慢性化しているようなクラブは仮にリーグ優勝をしても、優勝のタイトルをはく奪されて、さらに、来季のチャンピオンズリーグへの参加権もはく奪されることがある。

 

チェルシー、RBライプツィヒのように大手企業がスポンサーにつかない限り、ビッグクラブに対抗することは絶対に出来ないのが現状。


この「ボスマン判決」と「ファイナンシャル・フェア・プレイ」(FFP)という今のUEFAの規則がある以上、特にドイツのブンデスリーガではバイエルン以外のチームがリーグ優勝をする可能性はかなり難しくなっている。今シーズン2位のドルトムントは明らかに資金がバイエルンよりも少ないので、バイエルン以上の補強をするのは不可能。むしろ、ドルトムントよりも可能性があるのは、オーストリアのレッドブルという巨大な飲料メーカーがスポンサーについているRBライプチッヒである。ここはブンデスリーガのチームの中では、恐らく唯一バイエルンに対抗できる資金力があるので、バイエルン以上に大金をばらまいて優秀な選手を獲得できる可能性がある。

 

 

日本の大手企業がヨーロッパのクラブチームのスポンサーになって、クラブチームを強化するという手もある。



また、日本の企業もけっこう資金力があるので、例えば、福岡ソフトバンクホークスを常勝チームに押し上げたソフトバンク社が、ブンデスリーガのチームのスポンサーになって、そのチームをバイエルンに対抗できるような強いチームにすることも出来る。ソフトバンク以外にも、他の日本企業でかなり資金力がある企業、例えば、トヨタ、ソニーなどがブンデスリーガのチームのスポンサーになってもいいと思う。企業の方はブンデスリーガのスポンサーになれば宣伝になるから、お互いにとってウィンウィンの関係になれると思う。ただし、そのような場合は「ジャパンマネーが、突然に地元のチームに投資するのは歓迎できない」というような、現地の伝統的な熱狂的ななサポーターたちからの反対が予想される。(苦笑)

 

 

写真上はバイエルン・ミュンヘンの本拠地のアリアンツ・アレーナにあるクラブの公式ショップ。今のヨーロッパサッカーの状態では、バイエルンがブンデスリーガのタイトルを独占する時代が続きそうである。写真下はRBライプツィヒのスタジアム。スポンサーのレッドブル飲料の豊富な資金力のおかげで、最近、急に力をつけてきたクラブであり、ドルトムンドよりもこのチームの方がバイエルンに対抗できる力があるかもしれない。

 

 

最後に僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対して色々と興味深いブログ記事を書いているので、できれば他の記事も読んでみてください。ブログ記事の感想をコメントととして書いてもらえると嬉しいです。それ以外にもドイツに滞在していた時の体験談、ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いてますし、これからもそういう記事を書いていくつもりです。

 

 

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