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映画「遠すぎた橋」の舞台となった街を訪れた(2)

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このパート2では、アルンヘムの隣町のオースターべーク町 にある[Airborne Museum](空挺部隊博物館)を訪れた時のことについて書きます。この博物館は英第1空挺師団の司令部があったハルテンスタインホテルの建物が、そのまま博物館として使用されてます。

 

よく覚えているのは、2007年8月にアルンヘム駅前からオースターベークにある空挺博物館まで行った時にバスで行ったのだが、アルンヘムの街並み、住宅街を完全に通り抜けて、田舎道を走ってオースターベークの中心街を抜けた辺りに、ようやくかつては英第1空挺師団の司令部だった「空挺博物館」が建っていたので、「アルンヘム橋からこんなに離れた場所に師団司令部があったのでは、英第1空挺師団がいくら頑張っても一部の部隊しか橋に到達できなかったのは当たり前だ。映画でポーランド空挺旅団のソサボフスキー少将が初めから疑問を唱えていたような、本当に滅茶苦茶な作戦だ」と思った。また、この時には中年男性のバスの運転手がとても親切で、空挺博物館のバス停に着いた時に僕の方を振り返って、「ここが博物館だよ」と英語で教えてくれたのだった。

 

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「空挺博物館」の外に建つイギリス軍のM4A4中戦車と6ポンド砲。英第1空挺師団にはM4中戦車は装備されてなかったが、6ポンド砲は空輸されて装備されていた。

 

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上の写真は「空挺博物館」内に再現されている英第1空挺師団の幹部たちの会議室の様子で、下はフロスト中佐が部下を呼び集めるために使った狩猟用の笛。映画「遠すぎた橋」を見たことのある人なら、アンソニー・ホプキンスが演ずる中佐が狩猟用の笛を吹くシーンを覚えているだろう。

 

 

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「空挺博物館」内の連合軍側の人形の展示。上はアルンヘムを一時的に解放した英第1空挺師団とそれを歓迎する一般市民たちの様子を人形で再現したもの。下の写真は英第1空挺師団と共にアルンヘム付近に降下したポーランド空挺旅団。ポーランド本国は1939年9月に降伏していたが、ポーランドからイギリスへと逃亡に成功したポーランド人兵士たちが、義勇軍を作ってこの作戦に参加していた。しかし、この作戦ではアルンヘム付近に降下するのが遅れたために、ほとんど活躍できなかった。

 

1枚目の写真に10歳くらいの少女の人形があるが、実は言うと有名な女優のオードリー・ヘプバーンが、この作戦が行われた当時アルンヘムに住んでおり、彼女は年齢は14歳でオランダのレジスタンス組織に所属していた。そのオードリーを意識した少女の人形かもしれない。オードリーは英第1空挺師団によって一時的にアルンヘムが解放された時に、兵士からもらった煙草を一服吸い、その時の快感が忘れられずにチェインスモーカーになったという。

 

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「空挺博物館」内のドイツ軍側の展示。ヨーロッパ各地の軍事博物館では「ヒトラーの私兵」扱いの武装親衛隊の展示は厳しいく制限されているが、アルンヘムの戦いでは武装親衛隊の機甲部隊がドイツ軍の中心だったため、この博物館では武装親衛隊兵士の人形も展示されてる。この博物館の説明は英語、オランダ語、ドイツ語の3か国語で書かれてあり、ドイツから近いということもあってドイツ人の訪問客も多いらしい。実際、僕の友達のドイツ人で東北大学准教授を6年間していたSも、アルンヘムの橋とこの博物館を訪れたことがあると言っていた。

 

 

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「空挺博物館」の前にあった標識。僕が行った時は2007年8月初旬だったので、来たる2007年9月17日の「マーケットガーデン作戦」開始から63周年を祝って何らかの行事が催されることがオランダ語で書いてある。さらに、この標識にはオランダ国旗と「解放軍」だった連合軍に所属していたイギリス、アメリカ、ポーランドの国旗は飾ってあったが、やはり敵だったドイツの国旗はなかった。アルンヘムはドイツ国境に面した街なのにドイツがこのような扱いなのは、ドイツと同盟していた日本人としては何か複雑な思いになった。