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映画「戦争のはらわた」のオープニングを解説

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戦争映画「戦争のはらわた」のオープニングの映像と、BGMとして流れる「小さなハンス」(日本では『ちょうちょう』として知られている)について解説。

 

色々とドイツに関するブログ記事、特にナチスドイツ軍に関する日記をたくさん書いているけど、今回はドイツ軍マニアにすごいく人気がある戦争映画の「戦争のはらわた」に関する日記を書こうと思う。ドイツ軍の東部戦線での悲劇を描いた戦争映画「戦争のはらわた」に関する記事を書く。


でも、この映画のオリジナルタイトルは[Cross of Iron]である。「戦争のはらわた」とかいうホラー映画みたいなタイトルはやめてもらいたかった。この映画が大好きな映画評論家も苦笑していた。なんでも映画公開時に「オリジナルタイトルを直訳して『鉄十字勲章』にしても、日本人には何のことかわからない」という意見が多かったので、この映画が封切られた1970年代後半はホラー映画ブームだったので、「ホラー映画ファンも見に来るかもしれない」という期待を込めて「戦争のはらわた」という邦題にしたらしい。(苦笑)

 

写真上は「戦争のはらわた」のドイツ版のポスター。ドイツ語では[Steiner Das Eiserne Kreuz](シュタイナー・鉄十字勲章)という。ドイツ人たちはこの映画を「シュタイナー」と呼んでいた。

 

この映画のOPシーンはナチス・ドイツが戦争を始めて開戦以来ずっと勝ち続けるが、だんだんと泥沼にはまり1943年2月にスターリングラード戦で大敗北を喫する所までが、記録フィルムで描かれている。ラストではスターリングラードで降伏して戦死、或いはソ連軍の捕虜となった哀れなドイツ軍将校と兵隊と、ヒトラーの山荘で美女と談笑するナチス高官の映像が代わる代わる映される。

 

 

ドイツ人みんなが知っている童謡「小さなハンス」は、ハンス(ドイツ語で”男の子”の意味)を心配する母親の気持ちを歌っている。

 

そのバックに流れる[Haenschen klein]「小さなハンス」の唄だが、日本では「ちょうちょ」として知られている。ドイツ人の友達数人に日本語で「ちょうちょ」を歌うと、
「何と歌っているかさっぱりわからないけど、メロディは確かに『小さなハンス』だ」
と言って、みんなが笑っていた。

1番

 

Haenschen klein ging allein in die weite Welt hinein
Stock und Hut steht ihm gut, ist gar wohlgemuet.
Aber Mutter weinet sehr, hat ja nun kein Haenschen mehr:
"Wuensch' dir Glueck !",sagt ihr Blick "kehr nun bald
zurueck !"

小さいハンスちゃんは一人で広い世界に出かけた。
杖と帽子もお似合いで、とってもいい気持ち。
でも、お母さんは大泣きだ。ハンスちゃんはもういない。
「幸せにね。早くお帰りよ。」

 

2番


Sieben Jahr trueb und klar Haenschen in der Fremde war,
da besinnt sich das Kind eilet Heim geschwind.
Doch nun ist's kein Haenschen mehr, nein, ein glosser Hans ist er,
braungebrannt Stirn und Hand.
Wirt er wohl erkannt?

ハンスちゃんが外国に行き、晴れたり曇ったりして7年が過ぎ、
思い出したよ、ふるさとを。急いで帰ったのは良いけれど、
大きなハンスになっていた。茶色く日焼けた顔や手で
ちゃんとハンスと分かるかな?

 

「戦争のはらわた」のオープニングでは2番を2回歌っている。

 

3番


Eins,zwei,drei,geh'n vorbei wissen nicht wer das wohl sei,
Schwester spricht: "Welch Gesicht",kennt den Bruder nicht !
Doch da kommt sein Muetterlein, schaut ihm kaum in's Aug'hinein,
spricht sie schon:"Hans,mein Sohn, Gruess dich Gott, mein Sohn !"

おいっち、に、さん、ハンスが通り過ぎたけど
みんな誰だか分からない。妹さえ「あんた誰」、兄さんの
顔が分からない。でも母さんは見つけるや、すぐに言ったよ
「ハンス、私の息子、お帰り!」と。

 

こちらが、「戦争のはらわた」のオープニングの動画。Youtubeから引用。

 

youtu.be

 

この映画のオープニングを16歳の時に始めて見たが、「最高によく出来たオープニングだ」と思った。そして、ドイツ語の歌詞の意味を知ってますます完璧なオープニングだと思った。「ハンス」というのはドイツ語では「男の子」という意味もあり、名前がわからない男子に「おい、ハンス」と呼びかけることもある。

 

それで、多くの「ハンス」が家族を離れて遠くの土地(戦場)に勇敢に出征したが、「小さなハンス」の歌詞とは全く逆に多くのハンスは戦場で戦死したり、ソ連軍の捕虜になってシベリア収容所送りになったりして生きて帰れなかった。このオープニングの映像にはそういう意味が込められていると思う。

 

まだ「戦争のはらわた」を見たことがない人には、是非、この名作映画を見てもらいたいと思う。