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スタンリー・キューブリック監督の「突撃」は必ず泣ける映画

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スタンリー・キューブリックが監督をした映画「突撃」は、第一次大戦のフランス軍の歩兵連隊の戦いを描いた映画だが、かなり残酷な話にもかかわらずラストシーンでは涙する人がとても多い。

 

スタンリー・キューブリックが監督した映画、「突撃」を見たことがあるだろうか?僕はもうこの映画をはもう5回ぐらい見たが、何度見ても泣ける戦争映画である。上映時間は90分足らずという短い話だが、本当によく出来ている。オリジナルタイトルは[Paths of Glory](栄光の通り道)。オリジナルタイトルの雰囲気はどこにも残っておらず、邦題を名付けた人は本当にセンスがないと思う。(苦笑)

この映画は1957年の封切り時には、フランスで上映禁止になったという。理由は、
「栄光に輝くフランス軍に対する侮辱」
だったそうだ。上の写真はこの映画でフランス陸軍の歩兵連隊長である陸軍大佐を演ずるカーク・ダグラス。


ネタバレになるけどストーリーを紹介。

第一次大戦時のフランス軍。カーク・ダグラス演ずる大佐が隊長の歩兵連隊は、名誉欲にかられた師団長の命令で、堅固なドイツ軍陣地への無謀な攻撃を仕掛け、多くの兵が戦死する。だが師団長は、
「私の作戦ミスではない!兵隊どもが臆病だから攻撃が失敗したのだ!見せしめとして各大隊から1人ずつ、合計3人の兵隊を処刑する」
と言い出す。形式だけの裁判が開かれるが、ダグラスは3人を救おうと必死の努力をする。だが、結局、銃殺刑は執行されてしまう。

若い人のために一応書いておくが、カーク・ダグラスはマイケル・ダグラスのお父さん。


この映画のラストシーンは本当に悲しくて、何度見ても目頭が熱くなる。YOUTUBEにその悲しいラストシーンがあがっているが、この映画を見た多くの欧米人も涙を流したようだ。

無謀な攻撃で多くの戦友が戦死するわ、3人の仲間が鬼上官によって処刑されるわで、疲れ果てたフランス兵達はある酒場に集まって酒を飲んでいた。酒場の主人がちょっとしたお楽しみを用意する。“お楽しみ”とは捕虜になったドイツ娘だった。

 

動画のリンクを貼っておきます。僕のこのブログ記事の説明を読んだ後だと、字幕がなくても「なんで泣けるほど悲しいシーンなのか」がわかると思います。
 

youtu.be



動画の翻訳

酒場の主人「紳士諸君、ちょっとしたお楽しみを紹介します。敵のドイツ娘です。」
兵隊達(大ブーイング)
主人が泣いているドイツ娘を連れてくる。
兵(下品に大騒ぎ。口笛を吹く、手を叩く)
主「紳士達にあいさつしろ」
娘「グーテン タック」(ドイツ語で「こんにちわ」の意味)
兵(大騒ぎ)「何を言っているんだ!?文明人はそんな言葉しゃべらんぞ!」
主「彼女には何の才能もありません。あるとしたら、体の美しさぐらいかな。でも、いい声をしてるので、唄を歌えるそうです」
兵「早くしろ!早く歌え!」
娘(歌い始める)
兵「聞こえんぞ!もっと大声で!」
しかし、娘が歌っている唄がわかった時、兵はみんな沈黙する。
彼女が歌ったのは、[Der treue Husar]「忠実なる竜騎兵」という、日本では知られてないが、欧米では各国語に翻訳されて歌われていて、みんなが知っている唄だった

唄の内容は次のとおり。


勇敢な竜騎兵は故郷を離れた外国で敵軍と戦っていた。ところが、彼の恋人の女性が死の病に臥しているという知らせが届く。彼は軍人としての名誉などの全てを捨てて、恋人の枕元に駆けつける。彼は必死に愛情を込めて献身的な看病をするが、恋人は看病の甲斐なく亡くなってしまう。

 

こちらが「忠実なる竜騎兵」の歌詞のウィキペディアの説明だが、残念ながら英語版。日本ではほとんど知られてない歌なので日本語版の説明はない。

 

en.wikipedia.org

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上の写真がこの映画の英語版のポスター。

 

監督のキューブリックはこの映画のシナリオを平凡なハッピーエンドに変えようとしていたが、主役のカーク・ダグラスに説得されて初めのプランである残酷なシナリオに変えたという。

 

この映画「突撃」にはちょっとした秘話がある。監督のキューブリックは映画の台本を、ダグラスと師団長が和解して一緒に酒を飲みに行くという、実に退屈で平凡なハッピーエンドに変えたことがあった。変えられた本を見て激怒したダグラスは、
「悲しい話だから出演することにしたんだ。元の台本に戻せ!」
とキューブリックに詰め寄った。しかし、キューブリックは平然として、
「ハッピーエンドの方が客が喜ぶし、興行的に成功する可能性が高いから」
と言ったという。ひょっとしたら、キューブリックが変わった映画を作るようになったのは、この「突撃」での成功で、
「変わったエンディングの映画の方が客がたくさん入る」
と実感したからかもしれない。(苦笑)とにかく、のちに、「博士の異常な愛情」、「2001年・宇宙の旅」、「時計じかけのオレンジ」などをプロデュースして、“天才、奇才”と謳われたキューブリックにも、凡庸なことを考えた時があったようだ。(苦笑)


さらに少し付け加えると、ラストでドイツ娘役を演じたドイツ人女優クリスティアーヌ・ハーランは、後に監督のスタンリー・キューブリックの妻となった。今でもイギリスに住んでおり健在である。

 

このブログ記事はあまりドイツとは関係ないかもしれないけど、ドイツ人女優とドイツでよく知られている民謡が映画「突撃」では大活躍しているので、ドイツ関係のブログということで書いてみた。