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映画産業はいつからダメになったのか?(1)

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ハリウッド映画会社が、「映画だダメになっている理由 ランキングTOP10」という動画をYOUTUBEにあげているという現状。

 

ここで紹介するのは「映画がダメになっている理由 ランキングTop10」というYOUTUBEにあがっている動画。この映画はなんとハリウッド映画会社の一つが制作している。ハリウッド映画会社も最近の映画、特にハリウッド映画の凋落と危機を実感しているようだ。上の写真は数少ない最近10年間で僕が映画館にお金を払って見に行った映画の一つである、「アイアン・スカイ」。でも、ハリウッド映画ではなくて、フィンランド・ドイツ・オーストアリアの合作映画である。最近はハリウッド映画よりも、むしろこの映画のようなハリウッド以外の制作の映画が人気が出てきている。

初めに紹介するけど、こちらが「映画がダメになっている理由 ランキングTop10」その動画。

youtu.be

 

こちらの動画では次のような事柄が映画衰退の理由としてランクインしている。

第10位 失敗続きの監督や俳優を起用し続けている

第9位 何もかもがCG

第5位 あらゆる版権モノの映画化

第4位 制作会社の干渉

第3位 予告動画が内容を見せ過ぎ

第2位 制作会社が安定志向になっている

第1位 リメイクと続編ばかり

 

恐らく今の映画に満足している人たち、特に若い人たちは、「そんな今の映画のネガティブな面ばかり見ないで、今、封切られて流行している映画を楽しんでみればいいじゃないですか?『昔はよかった』ということを書いて何になるんですか?」とクレームをつけるかもしれない。でも、僕のように1980年代から映画を見ているアラフィフおじさんから見ると、今の映画産業は衰退しているとしかいいようがない。

 

20年ほど前は朝に映画館に入ると最後の上映まで映画館にいて見ることが出来たが、今はシネコンが多いので封切り映画を一回しか見ることが出来ない。

 

他の僕と近い世代の人ならわかると思うが、今から20年ほど前は映画館に朝に一度入ると今のシネコンのような席の強制的な入れ替えはなしで、午後10時頃の最終の回まで見ることが出来た。だから同じ映画を朝から夜まで何回も見れたのである。2本立て上映の映画館が多かったから、朝から夜まで映画館にいると2本立ての映画を3回くらい見ることが出来た。僕は国語の読解力はよかったが1本の映画を1度見てもよくわからないことが多かったから、だいたい2回ぐらいは見た。2回目を見て「そうか、このシーンはこういう意味だったのか」と初めて気づくこともよくあった。だから、映画館のほとんどがシネコン制度になって、全部指定席になって1回しか見れなくなってからはあまり映画館に封切りで映画を見に行くことはなくなった。別に封切りで映画館に見に行かなくても、4か月ほど後にはブルーレイのDVDが出ることはわかっているから、それを買うかレンタルすれば家のレコーダー兼プレイヤーで何度も見ることが出来る。映画についてはネットにホームページがあるから、それで大体の内容はわかることが出来る。

 

80年代まではロバート・レッドフォードのようなすごく人気のある俳優がいて、その俳優が出ているだけで映画を見に行ったけど、今はそういう俳優がいない。アクションシーンはCGに頼りすぎでつまらない。

 

上の動画に挙げられた「映画がダメになっている理由」の中から、僕は特に第9位の「何もかもがCG」という理由に注目している。だいたい、僕は既に1990年代半ばからCGとSFXなどの特殊技術に頼り出した頃から、「こういう特殊技術に映画が頼り始めて、俳優、監督、脚本家の育成をしないと、映画は絶対にダメになる」と予想していた。そして、今ではまさしく僕の予想が当たってしまった。ハリウッド映画はタイトルは違うが映画の話の内容はあまり変わらないような大仕掛けのアクション映画、パニック映画、ホラー映画ばかりを作るようになって、どんどんとつまらなくなっていった。「インディペンデンスデイ」「アルマゲドン」「2012」「ディープインパクト」といったB級アクション・パニック映画なんて、タイトルは違うが話の内容はほとんど同じじゃないか。こんな映画などは金を払って見るには値しない。

90年代後半に「タイタニック」「プライベート・ライアン」のようなくだらない映画が宣伝などの効果もあって、「名作」に祀り上げられてアカデミー賞主要部門を独占したけど、僕は「こんなシナリオがデタラメな映画がアカデミー作品賞、監督賞をとるようでは、ハリウッド映画は終わりだな」と思ってガッカリした。たしかに、この2作はCG、特殊技術などの効果はすごいけど、シナリオが全くくだらないのでとても感情移入など出来ない。これを名作と言う人たちの気持ちがわからない。


映画がダメになった大きな原因はやはり大物俳優、大物監督が減ったことだと思う。映画の黄金時代の50年代から80年代までは、男優ならクラーク・ゲーブル、ジョン・ウエイン、ロバート・レッドフォード、女優ならマリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン、ソフィア・ローレンなどの大物俳優がいて、監督ならデビッド・リーン、フランシス・コッポラ、ジョン・フォードなどの大物監督がいて、作品の宣伝がなくても俳優と監督の名前を聞いただけで、みんな映画を見に行った。少なくとも結婚する前に映画ファンだった僕の母は、出演している俳優と監督の名前で見に行く映画を決めたという。僕が初めて見た映画は戦争映画大作の「史上最大の作戦」だったが、僕が子供の時にこの映画を見るように母に勧められたのも、「有名な俳優がたくさん出ている戦争映画だから、軍事マニアのあなたは気に入ると思う」と言われたからだった。ただし、僕はちょっとへそ曲がりだったから、「史上最大の作戦」のアメリカ軍のジョン・ウエイン、ロバート・ミッチャムなどよりも、日本と同盟していたドイツ軍側の男優が好きになったけど。(笑)

 

ハリウッド映画がダメになった理由は、インディアンを悪役とした西部劇を作れなくなったこと、ドイツ軍を悪役にした戦争映画がヒットしなくなったことなどがあげられる。


ハリウッド映画がダメになり凋落した他の原因は、アメリカ先住民のインディアンの人権が上昇したので、インディアンを悪役にした西部劇が作れなくなったことがあげられる。1991年に公開されたケビン・コスナー監督主演の「ダンス・ウィズ・ウルブス」などを見ればわかるが、今のアメリカでは往年のジョン・フォード監督でジョン・ウエイン主演の「駅馬車」のような、乱暴なインディアンの襲撃から騎兵隊が白人を守るという映画は作れなくなっている。そんな映画を作るとインディアン団体と民主党系のアメリカ人から猛抗議を受けるのは目に見えている。もっとも本当のアメリカの歴史というのは、白人たちが19世紀半ばから勝手に武力でインディアン、メキシコ人たちの領土を奪ってアメリカ合衆国という国を作ったのだから、そのような批判が出るのは当たり前のことだ。今ではハリウッド映画の西部劇というとインディアンを悪役にした映画ではなくて、無法者の白人ガンマンと正義感の強い白人ガンマンが決闘する映画だけになっている。

他の原因としては、アメリカ軍を正義の味方として描いて、枢軸国のナチスドイツ軍と日本軍を悪役として描いた第二次世界大戦映画の衰退もあげられる。2001年の同時多発テロ以後、「アメリカの正義の戦争」にアメリカ以外の全世界は疲れてしらけ切っており、「第二次世界大戦ではアメリカ軍は正義だった」などという映画をいくら作っても、「75年前は正義でも、今のアメリカ軍はアフガニスタン、イラクなどで泥沼の戦争をテロリストたちとしていて、アメリカの同盟国もそれに付き合わされているじゃないか?アメリカが大昔に正義だったといっても今のアメリカは全く違う」という感じで、今では第二次世界大戦のアメリカ軍を正義の味方とした戦争映画を作ってもあまりヒットしない。しかも、最後にはアメリカ軍が勝つというワンパターンのシナリオだから、既に飽きられている。むしろ、「ヒトラー最期の12日間」、「永遠のゼロ」といったドイツと日本の視点から描かれた映画の方が全世界でヒットしている。

 

映画がダメになっているのは世界共通の現象であり、ドイツを始めとするヨーロッパ各国でも映画ファンは減って、アニメ、漫画、ビデオゲームなどの方が人気がある。


映画、特にハリウッド映画がダメになっている理由を思いつくままに挙げてみましたが、みなさんも思い当たる点があったでしょうか?これ以外にも、もちろん、インターネット、ビデオゲームなどの他の娯楽の普及という理由もあげられます。とても残念ですが、映画が1980年代までのように大ヒットする時代はもう二度と来ないと思います。

 

このブログ記事のどこがドイツと関係あるのかというと、ドイツでも全く日本と同じで今ではドイツの娯楽もインターネット、ビデオゲーム、アニメ、漫画>>映画となっているのです。映画があまりヒットしないというのは、残念ながら日本だけでなくて世界共通の出来事です。

 

 

写真下は1997年に「タイタニック」がアカデミー賞で11部門をして並ばれるまで、アカデミー賞史上最多の11部門を受賞していた「ベン・ハー」のポスター。僕が思うには「ベンハー」と「「タイタニック」では絶対に「ベン・ハー」の方が名作だと思う。「ベン・ハー」は1957年の制作なので、CGなどのコンピューター技術は全く作っておらず、ユーゴスラビアに本当にローマ時代の戦車競技の会場の大セットを組んで、この映画の撮影が終わるとセットは壊された。だから、「『ベン・ハー』のような超大作は2度とは作られない」と言われている。映画会社としても、巨額を投じて大セットを組むのはリスクが大きすぎるのである。

 

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