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森喜朗に対する海外からの批判について(1)

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森氏の「女性が入る会議は長く時間がかかる」という発言は確かに問題だったが、この失言は森氏が謝罪をして、それをIOCと橋本五輪相も受け入れて一旦は収まった。しかし、欧米のメディアのすさまじいバッシングで森氏は辞任に追い込まれた。

 

 

森喜朗氏がすさまじい批判を浴びて、日本オリンピック委員会を辞めた。後任は川渕三郎氏にいったんは決まったように思えたが、その後、川渕氏は「家族から止められた」ということで、就任することを拒否した。今では特に海外メディアからの圧力が強くて、「女性蔑視発言で森は辞任したのだから、後任は女性がふさわしい。特に、日本は先進国の中では女性の社会進出が遅れてる国だから、絶対に女性が会長になるべきだ」などと、特に海外の主要メディアは論じている。写真上は辞任を表明した時の森氏。

 

さらに、欧米先進国のメディアの中には、「これを機会に日本の男尊女卑の風潮をきちんと見直すべきだ。日本は先進国でも女性の社会進出が遅れていて、未だに会社の重役は男性が多くて、有名大学の卒業生でキャリアになる人も男性が多い。一方、痴漢、盗撮などの女性への性犯罪が多くて『日本は女性の地獄』である。日本の男性はもっと女性を大事にしなければいけない」などと、論じている記事まである。

 

 

僕がネットと現実社会で知っている女性たちに「男女差別を感じるか?」と質問すると、多くの女性は「別に感じない。それに、完全な男女平等な社会はあり得ないと思う」という答えが多かった。

 

 

そこで、僕の周りとネットで繋がりのある日本人女性に、「『日本は女性の地獄』、『日本では男尊女卑が強くて、女性が不当に差別されている』などと海外のメディアでは報道されてるが、本当にそう思うか?」と質問してみたら、「別に差別されてるとは思わない。欧米では男女は完全に平等であるべきとか言われてるようだけど、私は男性と同じような仕事はできない。男性と全く同じ仕事をしろと会社から言われても、私にはできない。女性が差別されてるなら、その差別を逆に利用してなるべく楽な仕事、作業をやって男性より安い給料でも十分。女性には出産、子育て、家事という女性がしなければいけない仕事もあるのだから」と答える女性が多かった。

 

 

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そもそも、家族にしても職場にしても日本と欧米では色んな点で違う。いくら日本も先進国だと言っても、欧米と全く同じ社会になるのは完全に不可能である。

 

 

「日本は女性の地獄」「日本は男尊女卑の社会」などと欧米の特に白人からは言われてるが、本当にそうなのだろうか?こういう欧米人の背景には日本と欧米の文化の違いがあるだろう。写真上は僕の友達のドイツ人弁護士夫婦のS(夫)、M(妻)、B(息子)だが、彼らは2011年に東日本大震災が起こるまで仙台で生活していた。その後、Sだけが東北大学准教授としての仕事が残っていたので、2012年春まで単身赴任で仕事をした。

 

SとMは日本人から見るととてもアツアツの夫婦であり、2人は歩きながら長い間キスをしたり、サッカースタジアムにいる時に妻が夫に抱きついて寝ていたり、喫茶店で妻が夫に甘えてることがよくあった。でも、日本のわかい夫婦がこんなことをしたら、当然ながら回りが引いてしまうだろう。でも、白人の間では夫婦、恋人はこれくらいいちゃつくのが当たり前である。

 

僕が1999年春にシュツットガルト近郊に住むドイツ人家庭のH家にホームステイした時も、既に夫婦ともに年齢は50歳を越えていたが、2人は結婚した時の写真をたくさん見せてくれた。若い恋人時代に夫婦がいちゃついてる写真、ダンスをしている写真、結婚式の時の写真などを見せてくれて、いかに2人が仲の良い夫婦であるかをアピールした。これは、他の中年ドイツ人夫婦でも全く同じである。2人が恋人だった若い頃の写真を見せてくれて、いかに夫婦が愛し合ってるかをアピールしてきた。

 

一方、僕はドイツ人家庭にホームステイをした時に、「日本人はシャイなので両親が手を繋いで歩いたり、ハグをしてるのは見たことがないし、僕も生まれた時から両親にハグをされたのは幼児だった頃までで、小学生になってからは両親と手を繋いだり、ハグをしたことはありません」と教えた。H家の夫婦は黙ってしまって、「ひょっとして、君の家族はみんな仲が悪いのか?何か問題が多い家族なのか?」などと、心配した表情で質問してきた。「日本人はシャイなので、どこの家族もだいたいそんな感じです」と答えると、夫婦は「日本人は随分と変わってる」と首を傾げて言ったのだった。(苦笑)

 

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欧米先進国の女性は公式の場所で肌の露出が多いイブニングドレスを正装として着用するという習慣があるが、日本の女性が公式の場所でそんな服装をしたら周りがドン引きするだけである。

 

 

上の写真は見ればわかるように、イブニングドレスを着て胸をあらにしたドイツのアンゲラ・メルケル首相である。これは、確か10年以上前にノルウェーの首都オスロでのオペラ鑑賞という、公式の場所\に現れた時の服装だったと思う。「1国の女性首相が胸をあらわにするのはちょっと問題なのでは?」という記者団からの質問に、メルケル氏は「私は女性なので、公式の場所だから礼儀正しくイブニングドレスを着たのだけど、何か問題があるかしら?」などと言って、逆にメルケルは聞き返したという。メルケルだけではなくて、アメリカのヒラリー・クリントン氏もオバマ政権の国務長官時代に、同じように胸の谷間を露出するイブニングドレスを着たことがある。

 

しかし、当然ながら日本の大物女性政治家である東京都知事の小池百合子、自民党の稲田朋美などがこんな胸をあらわにしたドレスを着たら、支持者が離れるのは目に見えてるだろう。つまり、日本と欧米では女性の服装を始めとして、キス、ハグが家族内ではないなど文化が違うし、メンタリティも違うのである。日本人が欧米人と同じように振る舞うことが無理なように、欧米人にとっては違和感を感じる政治家の発言があっても仕方がないだろう。

 

ドイツに1年ほど滞在した僕が感じたのは、白人は女性がとても大切にされており、さらに、白人は自分が正しいと思った意見を滅多に変えないのである。「とりあえず謝罪するべき」という日本の考えとは全く逆なのである。

 

 

今回の森前会長の失言では、いったんは森氏が謝罪をして、IOCと橋本聖子五輪担当大臣もそれを受け入れて収まったように見えたが、海外のメディア、特に欧米先進国の中でもアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどの女性の社会進出が進んでる国々からの、ヒステリック的なバッシングが止まずに、森氏は退任に追い込まれた。しかし、さすがに森氏が弱り切った顔で、「私のような戦前生まれの年寄りのことを老害呼ばわりまでされたのには、残念に思えます」と発言したのはかわいそうだった。この森氏の様子にはさすがに多くの日本女性も同情をしたようで、「森さん、ありがとう」というツィートもかなりあった。特に女性がツィートをしたようだ。

 

僕も今回の騒動で感じたのは、一度は森氏が発言を撤回して謝罪して落ち着いたように見えたのに、欧米の女性政治家と女性ジャーナリストがそれを再び蒸し返して、森氏を辞任までに追い込んだのは、日本人のメンタリティと文化への無理解があったように思えるのだ。一度も日本に長期滞在をしたことのない欧米の女性たちが、「私達と違うからおかしい」と厳しく追及をしたのは、浦賀にペリー提督の黒船が来航して日本に開国を求めたような強引さと価値観の押し付けとまで思える。別に日本が無理をして欧米先進国に合わせて、同じような社会を目指す必要はないと思う。