Deutschland-Lab

Deutschland-Lab

歴史や文化、スポーツなどドイツに関する情報まとめサイト

日本語に翻訳できない外国映画のセリフ

https://static.mercdn.net/item/detail/orig/photos/m50079088638_1.jpg?1614651537

 

 

 

外国映画のセリフの中には、セリフの性格からして日本語に直訳すると視聴者に意味が伝わりにくいものがたくさんある。映画「空軍大戦略」の中から、やむを得ずに意訳になったセリフを紹介する。

 

 

外国映画のセリフの中には、どうしても日本語には翻訳できないものがあります。僕が知っているセリフでは、1940年8月~9月にイギリス上空で行われたドイツ空軍対イギリス空軍との空中戦(バトル・オブ・ブリテン)を描いた「空軍大戦略」の中で、とても面白い話があります。写真上は映画「空軍大戦略」のDVDのパッケージです。

 

この映画の中でゲーリングが、

「もし、敵の飛行機が1機でもベルリン上空に現れたら、ワシのことを“腰抜け”と呼んでもいい」

とドイツ国民に公言している。しかし、ここの日本語字幕はものすごい意訳になっていて、本来の意味がほとんど失われている。

 

だから、このセリフの背景について説明をする。ゲーリングがドイツ語で言っていた言葉を直訳すると、

[Ich will Meier heißen, wenn auch nur ein Flugzeug über Berlin erscheint.]

(もし、敵の飛行機が1機でもベルリン上空に現れたら、ワシの名は“マイヤー”だ)

という意味になる。ゲーリングのファーストネームはHermannであり、“支配者、旦那様”という意味があり、卓越した普通ではない人を意味していた。虚栄心の強いゲーリングは、この名前をとても気に入っていた。これに対しMeierはドイツで2番目に多い名前で、日本でいうと、鈴木、高橋のようなありふれた名前。

 

だからゲーリングは、

「敵機がベルリン上空を飛ぶことがあれば、自分の名前をカッコ良い”ヘルマン・ゲーリング”ではなくて、平凡な名前の“ヘルマン・マイヤー”だと認める」

ということを、ドイツ国民に公言していた。ところが、ゲーリングをあざ笑うかのようにイギリス空軍は「バトル・オブ・ブリテン」の最中にベルリンを空襲して、ゲーリングの面目は丸つぶれになった。その後、戦局が悪化してドイツ国内が毎晩空襲されるようになると、ドイツでは空襲警報は“マイヤーのトランペット”と呼ばれた。この”ヘルマン・マイヤー”という下りがスペースの少ない字幕では説明できなかったので、字幕だと「ワシのことを”腰ぬけ”と呼んでもいい」というふうに意訳されていた。

 

字幕がデタラメというより、訳しようがなかったと言えるだろう。(苦笑)下は映画「空軍大戦略」の中の動画だが、38秒のところからドイツ空軍の将校が、「『ベルリンに敵機が現れることがあったら、ワシのことを”マイヤー”と呼んでいい』と言ってたな」と言うセリフがある。残念ながらオリジナルの動画だから、日本語字幕はついてない。

 

その下はゲーリングの写真。ナチスドイツの大物戦犯として悪役というイメージがすごく強いが、ドイツ空軍を統率した能力はまあまあ優れたものがあり、第二次大戦初期のドイツ軍の電撃戦成功の大きな原因は彼の空軍のお陰だと言える。

 

youtu.be

 

f:id:novaluewriter:20210528142717p:plain

 

それ以外にも映画「空軍大戦略」の中には、第二次世界大戦に興味がある人を満足させる事実がたくさんある。だから、この映画は「空軍を描いた映画では最高の映画」と言われている。

 

それ以外にも「バトル・オブ・ブリテン」を描いた映画「空軍大戦略」には興味深い事実がいくつかある。

 

アドルフ・ガーランド中将は軍事アドバイザーとして、「空軍大戦略」の製作に携わった。映画の中にファルケ少佐が出てくるが、ガーランドをモデルとしている。フェーン少佐のモデルはメルダース大佐。そして、ファルケの弟として紹介される空軍少尉が、のちに、「撃墜王アフリカの星」として有名になる、ハンス・ヨアヒム・マルセイユ大尉をモデルとしていると2chの戦争映画のスレに書いてあった。

 

ところが、ラストでドイツ空軍が戦いに負けてゲーリングが激怒してドイツに列車で帰って行くシーンで、ファルケ少佐(ガーランド)がケッセルリンク元帥と並んでナチス式の敬礼でゲーリングを見送るというシーンを撮ることになったけど、

「私をガチガチのナチスというふうに描いてもらいたくない!」

と言ってガーランドは激怒したという。そこで、既に亡くなっていたケッセルリンクはナチス式敬礼をするが、ファルケは普通の軍隊式敬礼をして見送るというふうに変えられたという。この情報はかなりこの映画とドイツ空軍に詳しい人が書いていたので、信用できる事実だと思う。

 

この映画で奇妙なのは、ドイツ軍側イギリス軍側ともに将軍は実名で登場しているのに、佐官以下の人はみんな架空の人物である。もちろん、モデルとなった人物はいたようだけど。

 

 

以上、今日は日本語には翻訳するのが難しいので、かなりの意訳になっていて本来の意味がほとんど失われてる映画のセリフについて記事にしてみました。今日あげたようなかなりの意訳になっている外国映画のセリフはかなりあります。英語がある程度わかる人なら、この事実はわかると思います。