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国威発揚の国際大会になったパラリンピック

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今日も前のブログ記事と同じように、過去に書いた記事のまとめ記事を書こうかと思いましたが、今、東京で行われているパラリンピックのメダル獲得数、パラリンピックの歴史を調べていてとても気になったことがあったので、それについて記事を書こうと思います。上は東京パラリンピックのロゴ。

 

東京パラリンピックでは、中国とロシアという福祉後進国のはずの2国が多くのメダルを独占していて、福祉先進国のはずのヨーロッパ諸国はなぜかメダル獲得数が少ない。

 


https://www.nikkansports.com/m/olympic/tokyo2020/paralympic/medal/

上のパラリンピックのメダル獲得数をよく見てもらいたい。9月1日の時点で、中国という障害者のための福祉がゼロに近い共産主義の国が、64個の金メダルを独占している。同じくロシアのように国が貧しくて障害者への福祉が進んでないはずの国も、26個のメダルを獲得している。一方で開催国の日本はたったの5個である。ドイツ、フランスという税金が高い福祉先進国、北ヨーロッパ諸国も日本と同じようにメダル獲得数が少ない。

 

共産主義国で福祉後進国の中国は、1996年のアトランタパラリンピックでは金メダル獲得数が16個だったが、北京パラリンピックを4年後に控えた2004年のアテネパラリンピックでは、金メダル獲得数が63個に急に増えていた。

 

 

そして、過去のパラリンピックでのメダル獲得数を調べてみても、とても興味深い事実がわかった。

 

ja.wikipedia.org

 

上のウィキペディアは1996年のアトランタパラリンピックの説明だが、この大会では金メダル獲得数の1位はアメリカの46個で、福祉先進国のドイツが40個で3位であり、同じく福祉先進国の北欧のスウェーデンは12個で13位である。日本は14個で10位である。一方で共産主義国で福祉制度が遅れている中国は16個で9位である。日本よりもたったの2個多いだけだ。各国の福祉に対する予算と取り組みを考えれば、これはまあまあ妥当なメダル獲得数だろう。

 

ja.wikipedia.org

 

ところが、たったの8年後のアテネパラリンピックの金メダル獲得数を見ると金メダルと総メダル獲得数にとんでもない変化が見える。1位に突然に中国が浮上してきて、金メダル獲得数は63個で、総メダル獲得数は141個に急激に増加している。一方で福祉先進国のはずのドイツは金メダル獲得数が19個で、急に8位にまで後退している。同じく福祉先進国の北欧のスウェーデンは金メダル獲得数が8個で21位にまで後退している。日本は金メダル獲得数が17個で10位である。

 

たったの8年間で、なぜこのように中国のパラリンピックでの金メダル獲得数が急に増えたのか?僕が思うには中国のような国は今でも愛国心の強化、国威発揚という政策を政府が行っているので、パラリンピックでメダルを取れそうな運動能力が高い身体障害者に多くの予算を投資して、優秀な身体障害者のスポーツ練習をサポートしているのだろう。絶対にこういう政策は中国で行われてるに決まってる。

 

そして、アテネパラリンピックの次の中国の北京で行われたパラリンピックでは、中国はホスト国の面目躍如となる89個の金メダルと、211個の総メダル数を獲得している。一方で日本の金メダル数は5個、総メダル数は27個にまで激減しており、北欧の福祉先進国のスウェーデンの金メダル数も5個、総メダル数も12個にまで同じように激減している。2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは、なんと日本の金メダル獲得数は遂に0個になっている。

 

 

共産党独裁政治の中国では国威発揚のために、運動能力の優れた身体障害者を都会のトレーニングセンターに集めて、「メダルを取るために」軍隊式の厳しいトレーニングを行っていると、障害者スポーツのサイトで説明されている。

 

それで、中国はパラリンピックでなんでこんなに強いのかを調べてみると、障害者のスポーツを特集したサイトにやはり、中国の身体障害者スポーツを特集したサイトがあった。そのサイトは「中国 パラリンピック」で検索すれば見つかる。そのサイトには、中国では多くの大都市に身体障害者用の大きなトレーニングセンターがあり、そこに多くの身体障害者の人たちが住んで、有能なコーチから指導を受けているという説明がされている。そして、「メダルを取るために」厳しい軍隊式トレーニングが行われていて、金メダルを獲得した選手には日本円にすると数千万円の報奨金が国から支給されるという。中国の場合は共産党の独裁体制なので、この場合は国というのは中国共産党政府ということになる。共産党独裁政府だから民主主義国家の日本のような議会政治は行われていないので、中国の場合は身体障害者スポーツのための予算は青天井になるのだろう。

 

その一方で、特別な才能がない身体障害者のへのサポートはほとんど行われていないとしか考えられない。中国は人口が多いのだから心身障害者の数もおおいはずで、一部の運動能力が高い障害者への極端なひいきをやっていないと、こんなに多くのメダルは獲得できるはずがない。一方で、日本と本当の福祉先進国であるヨーロッパなどでは全ての身体障害者へのサポートを平等に行っているので、なかなかメダル獲得数が伸びていない。

 

一方で運動能力があるとか、特別な才能がない心身障害者への中国政府の取り扱いは全く不十分であり、都会で乞食生活を送っている障害者までいるという。

 

 

その証拠に、「東方新報」という中国事情に詳しく報じられているニュースサイトに次のような記事が掲載されていた。

 

中国の障害者は8500万人 求められる社会のバリアフリー化

 

ただ、実際には(中国の心身障害者は)通学拒否や就職差別を受けるなど、障害者の権利や生活が保障されることは難しい現実がある。障害者の大半は家族に扶養されているが、障害者のいる家庭の平均年収は全国平均の半分程度で、「誰かが障害者になると家族全員が貧困になる」実態がある。このため生活苦から路上で物乞いをする障害者も少なくない。障害者の物乞いが多い都市部では、路上でマイクを持って歌を熱唱してアピールしたり、手作りの台車に乗って地下鉄の車内を巡回したりしてお金を求める障害者も見られた。


中国のような障害者への福祉後進国が多くのメダルを独占しているという背景には、やはりこのような運動能力が優秀な身体障害者への優遇制度があった。中国という福祉後進国が多くのメダルを獲得しているというのは、絶対に何らかの不正か不平等な政策をやっているはずなのである。

 

パラリンピックの本来の目的は、中国とロシアのようにメダルの獲得数を競って国威発揚を行うことではなくて、パラリンピックを行うことで障害者の社会参加を促進することのはずである。

 

さらに、ロンドンパラリンピックの頃から、ロシアも中国と同じように運動能力の優れた身体障害者を優遇してメダル獲得数を伸ばしており、ロンドンでは36個の金メダルを獲得していて、総メダル数は102個を獲得している。東京パラリンピックでも9月1日の時点で金メダル数は26個で、総メダル数は77個で全体の3位である。ロシアが福祉先進国というニュースは聞いたことがないので、ロシアもやはり中国と同じような状況なのだろう。国連の機関など国際的な障害者福祉と医療を管理している団体は、パラリンピックでメダルを多く獲得している国の調査を厳しくするべきである。パラリンピックの本来の目的は身体障害者のメダル獲得数を競って国威発揚をすることではなくて、障害者の国際スポーツ大会を行って、障害者に対する偏見をなくしてバリアフリーを進めることが目的のはずである。