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洋画で汚い言葉はいつから使われるようになったのか?

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戦争映画「プライベートライアン」では汚い俗語の連発だが、1970年の戦争映画「パットン大戦車軍団」の頃から汚い言葉は映画で使わている。

 

 

あくまで僕の個人的な好みだが、「プライベート・ライアン」はノルマンディ海岸から上陸した8人のレンジャー部隊の兵隊が、所属の違うパラシュートで降下した空挺部隊の迷子の2等兵を探しに行くという、どこの軍隊もやならいような滅茶苦茶なシナリオなので大嫌いな戦争映画だが、唯一興味深いのは正しいアメリカ軍スラングが使われてることである。上は「プライベートライアン」のポスター。


この映画では[FUBAR](Fucked up beyond all recognition)(再生できないほどに滅茶苦茶になった状況)という意味のスラングがよく使われるが、[Fuck]は使われても[Mother Fucker][Mother Fucking](母親と性交する奴)(母親と性交するような気持ち悪い)という言葉は出てこない。恐らく、[Mother Fucker][Mother Fucking]という言葉は第二次世界大戦時には存在しなかったのだろう。


一方で1970年公開の「パットン大戦車軍団」を見ると、パットン将軍は[My Dear Son of a Bitch][Goddamnend!](親愛なるクソッタレ野郎)(畜生め!)という言葉を連発しているから、こういう言葉は第二次世界大戦中に高級将校も使っていたことがわかる。[Son of a Bitch]は直訳すると(淫売の息子)という意味だが、意訳されて(クソッタレ)になっている。

 

 

ところが、1966年の戦争映画「バルジ大作戦」では汚い言葉は使われてない。この間には、1968年に映画ドラマでの汚い言葉を規制する「ヘイズコード」の撤廃という出来事があった。

 

 

ところが、同じ第二次世界大戦を描いた戦争映画でも「パットン」よりも8年前に作られた「史上最大の作戦」、4年前に作られた「バルジ大作戦」などでは[Son of a Bitch]のような汚い言葉は見られない。それでは、1966年の「バルジ大作戦」から「パットン大戦車軍団」までの間に何があったのか、それは、「ヘイズ・コード」という「猥褻で乱暴な言葉、描写を映画内で使用することを禁止するルール」の廃止があったことが原因らしい。

 

ja.wikipedia.org


ヘイズ・コードのウィキペディアの説明。

ヘイズ・コード( Hays Code. the Breen Code や Production Codeとも呼ばれる)とは、かつてアメリカ合衆国の映画界で導入されていた自主規制条項である[1]。アメリカ映画製作配給業者協会(のちのMPAA)によって1934年から実施され、名目上は1968年まで存続した[1]。映画史上、この条項が実施される以前のハリウッド映画を「プレコード pre-code」期の映画と呼ぶことがある[2]。

以下の項目は、いかなる方法においてもアメリカ映画製作配給業者協会の会員が映画を制作する際に用いてはいけない要素である。

冒涜的な言葉("hell," "damn," "Gawd,"など)をいかなるつづりであっても題名・もしくはセリフに使うこと[注 1]

 

 

「ヘイズコード」とは映画が大衆の娯楽になった頃に、アメリカの聖職者たちが「映画では汚い言葉を使うべきではない」と主張して、アメリカ映画界もそれに同意して出来たルールである。

 

 

ヘイズ・コードというのはハリウッド映画産業が誕生した1930年頃に、主にアメリカのキリスト教の聖職者たちが「映画という大衆娯楽の中で、汚い言葉、生々しい暴力、性の描写は好ましくない」と主張したので作られた。1990年のイタリア映画「ニューシネマ・パラダイス」でもキスシーン、ベッドシーン、男女の裸の露出シーンなどがあると、カトリック教会の神父がそのシーンをカットするように指導するシーンがある。


ヘイズ・コードがなぜ廃止になったのかはやはり、時代の波と変遷だろう。1965年頃から泥沼化したベトナム戦争はアメリカ社会に多くの変化をもたらして、「イージー・ライダー」「俺たちに明日はない」「ゴッドファーザー」のようなニューシネマが作られて、アメリカ社会では悪人とされていた人たちが主人公になるような映画がたくさん制作されて、大ヒットするようになった。それで、汚い俗語が全く使われないでイケメン白人男と美女が勝って、ブサイク顔の悪人が負けてハッピーエンドというような、伝統的なハリウッドの勧善懲悪な映画は全くヒットしなくなった。そこで、現実のアメリカ社会を生々しく描くために、ヘイズコードは邪魔な存在になったようだ。

 

僕が覚えてる限りでは1978年にアカデミー作品賞を獲得した、ベトナム戦争に行って人生が狂った若者たちを描いた「ディア・ハンター」では、[Mother Fucker][Mother Fucking]という英語で最も言葉の連発が見られる。だから、1970年にニューシネマが大ヒットするようになってから、汚いスラング連発の映画がたくさん作られるようになったようだ。

 

 

他の国々、ヨーロッパ映画などはいつからスラングが映画でしゃべられるようになったのかはよくわからないが、ドイツ映画の場合は1979年にアカデミー外国語映画賞をドイツ映画として初めて受賞した「ブリキの太鼓」では、既にかなり汚いスラングが使われている。この頃のヨーロッパ映画もハリウッド映画の影響で、「ヨーロッパ・ニューシネマ」と呼ばれている。

 

写真下はヘイズコードがまだあった頃に作られた名作戦争映画「史上最大の作戦」。コーネリアス・ライアンの原作にほぼ忠実に作られたので、本当によくできた名作戦争映画だが、ちょっと残念なのは戦争映画なのに兵隊が汚い言葉をしゃべるシーンは全くないのである。

 

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僕が通っていた英会話教室の先生は、「字幕スーパーはいつも間違ってる」と言っていた。これは、字幕は限られたスペースにしか文字を出せないからである。




それで僕が英語教室に通っていた時に聞いた面白い話は、やはり、アメリカ人にとっても映画の中での汚いスラングの連発は驚きだったようで、1991年に僕が英会話教室に通っていた当時で40代だった中年男性のアメリカ人先生が、「おい、「〇〇〇〇〇」という映画見たか?[Bull Shit][Mother Fucker]の連発だったぜ。すごかったな」などと、まだアメリカ人先生が学生だった70年代に友達と話していたという。[Bull Shit]は直訳すると(牛の糞)という意味だが、意訳すると(くだらねえ。クソッタレ)という意味になる。

 

軍事マニアならわかると思うが、「フルメタル・ジャケット」という軍隊スラング連発のベトナム戦争映画がある。その映画をアメリカ人の英語の先生は、英語がわかる日本人と一緒に身に行ったそうだが、汚い英語の軍隊スラングの連発なので、先生と日本人の友達の2人だけが爆笑していて、周りの日本人の観客からジロジロと見られて困ったと言っていた。


さらに、アメリカ人先生は英語と日本語がわかる日本人の友達に、「今の英語は日本語の字幕で何と書いてあった?」と質問して、「〇〇〇〇〇と訳してあった」と友達が言うと「違う、違う。全然間違っている」と言って、納得できないことが何度もあったそうだ。先生は「日本語の字幕スーパーはいつも間違っている」と、残念そうな顔をして言っていた。でも、それは字幕スーパーは限られたスペースに出すのだから、意訳された日本語がおかしいことは多いだろう。本当にハリウッド映画のオリジナルの英語を知りたかったら、英語で書かれた脚本とスクリーンプレイを読まないといけない。