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「引きこもり」はなぜ日本で多いのだろうか?(2)

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今日のブログ記事でも前回に続いてこのテーマについて書きます。日本社会の暗いテーマではありますが、やはり日本独特の負のテーマとして避けられないと思いますので。

 

 

大学入試の失敗、就職活動の失敗というのが日本では「引きこもり」を生む大きな原因となっている。大学は卒業時に難しい試験があり、就職活動も新卒一括採用ではなくて随時採用で実習後に採用するという欧米の制度では、「引きこもり」にはなりにくい。

 

 

 

日本で特に「引きこもり」が多い原因としては、高校と大学の入学試験、その後の新卒一括採用という日本独特の学校と就職制度が、大きな原因となってることは前のブログに書いた。大学で自分の希望した大学の学部で勉強できずに、不本意にも二流か三流企業に就職をして、それでやる気をなくして数年間で会社に行く気をなくして20代後半で引きこもってしまう。これが、よくある引きこもりのパターンであろう。あるいは、学校と職場でいじめにあって働く気力をなくして、仕方なく引きこもるというパターンもある。それから、40代と50代という中年の引きこもりというのは、30代までは会社員として仕事をしていたが、職場が倒産するか急にリストラをされて失業をした。その後転職をしてみたけど上手くいかなかったので引きこもりになったということだろう。

 

日本とドイツを始めとする欧米で違うのは、高校大学などは入学試験が難しいのではなくて卒業試験が難しくて、日本のような「次の1~5の中から正解を選べ」というようなマークシート式の試験を受けるのではなくて、自分で図書館、博物館、ネットなどで勉強をして論文をたくさん書かないといけないことである。日本の入学試験用の学習参考書のような、卒業論文を書くためのマニュアルというのはドイツの書店ではあまりたくさん売られてない。日本とは違って入学が簡単だから、自分の望む学部で勉強することはできる。その後、希望した学部の勉強が自分に合わないと思ったら、違う学部に移ればいいのである。

 

また、会社への就職活動も同じで、自分の就職したい会社で数か月は給料は安いけれども「実習期間」ということで働くことはできる。これはドイツのどんな高学歴の人でも同じで、一度は実習期間を経てからでないと正社員として採用されることはない。それで1年間ほどの実習期間が終えると、「本当にこの職種で働きたいか?」ということを人事の人とよく話し合って、その後に正社員となるかどうか決めるのである。だから、日本の就活の面接試験ように、「御社のホームページを拝見して、〇〇というポリシーにとても惹かれました」というような、会社をヨイショする「建て前」を試験管に言って会社に採用されるという制度はないのである。就職したい人間の本音というのは、「もう20代後半なので結婚もしたいから、ちゃんとした会社の正社員となって家族を養う給料を稼ぎたい」ということだろう。

 

 

外国人がわかりにくい日本の習慣に「本音と建て前」があり、成人した社会人は公の場所では本音ではなくて建て前論を言うべきだという習慣が、日本でニートと引きこもりを増やしてる原因だとウィキペディアに書いてある。

 

 

 

この「本音と建て前」というのも日本人独特の習慣であると、ウィキベテアでは説明をされている。

 

en.m.wikipedia.org

 

英語の説明では、日本の職場などの公共の場所では成人した大人は個人の本当の感情を隠して、公共の場所にふさわしい「建て前」を言うのが当然とされており、公共の場所で個人の感情をべらべらと言ってしまうのは社会人らしくないので、社会経験の少ない引きこもり、ニートの人間を増やす原因となっていると書かれている。

 

これは、海外旅行をしたことのある人なら、海外の空港の係員、ホテルの受付、お店の店員などが、日本ではあり得ないほどに馴れ馴れしくて失礼だと感じたことがあるだろう。この理由は、外国には日本語のような敬語がないので、向こうの人はいつも知り合いみたいに本音で接客をしてくるからである。日本人のように丁寧な敬語を使って建て前で接客をする人の方が、世界的に見るとむしろ珍しいようだ。

 

 

さらに日本では労働組合の活動が弱いので、就職活動をしている人たちは組合の助けを得られずに、ハローワークに通って孤独に就活をしないといかないのが、就活を諦めて引きこもりを増やしてる原因らしい。

 

 

 

あとは、日本で特に引きこもりが多い理由はドイツを始めとする海外なら、労働組合が無職の方々のカウンセリングをして就職活動を手助けをしてくれるが、日本の場合は労働組合員=共産党員などと見做されて労働組合がとても弱いので、無職の方々は自分でハローワークに通って、就職活動をハロワの職員の指導だけでやらないといけないという事実がある。無職の20代以上の方々を労働組合の職員が指導をして実習、さらに就職まで指導してくれる海外とは随分な違いがある。また、ハローワークというのも日本独特な制度のようで、こちらも英語のウィキペディアで説明されてる。

 

en.m.wikipedia.org

 

とにかく、労働組合が弱いというのは、年長者の会社の管理職がやりたい放題にやって、ブラック企業、パワハラ、過労死などを起こす原因にもなるので、もっと労働組合を強くして被雇用者、労働者の権利を守って、ニートと引きこもりを減らす活動をする必要があるだろう。

 

 

 

欧米人は恋愛活動が盛んで子供の恋愛に親は干渉しないので、無職の男女で結婚生活を始めて、そこから無職を抜け出すチャンスがある。でも日本は子供の恋愛に親が干渉するから無職では結婚が難しいので、これも引きこもりになる原因になってる。

 

 

 

 

それ以外に日本で「引きこもり」が多い理由は、海外の特に若い男女というのは日本人よりも愛情が強いので、無職の20代30代のニート同士で仕事をしてなくても同棲を始めて、2人で失業保険を受けながら生活をするカップルがけっこう多いのである。日本だと、「無職のニート同士の結婚は好ましくない。少なくともどちらかが就職をしてから結婚するべきだ」などと言って、家族が干渉をして反対するだろう。「どうせ、無職のニートでは結婚できない」という考えが、「引きこもり」を増やしている。

 

僕は1999年春にドイツのシュツットガルト近郊に住むH家でホームステイをしてドイツ語を勉強したが、その家の長男のJは3年間ほど失業した状態だったが、2005年5月に数年前から恋人だったCと結婚した。これは、僕が2006年6月に再びH家に遊びに行った時にわかった。結婚した時もJもCも働いてなくて2人とも失業者だった。でも、ドイツは日本よりも家賃が安いので、彼らはシュツットガルト近郊の田舎町にある一軒家で結婚生活を始めた。

 

この無職同士の結婚に2人の親は反対しなかったのかというと、結婚は2人が一緒にいて幸せならそれを重視するべきであり、日本のように「無職の30代の男などに娘はやれない」などと言って反対する親は、ドイツでは悪い親ということになる。この結婚は2人が満足ならそれでいいという考えはドイツを始めとするヨーロッパでは昔から存在して、森鴎外の恋人のエリーゼ・ヴィーゲルトという21歳のドイツ人娘は、まだ1888年という大昔に鴎外を追って東京まで来たが、この時に彼女の旅費を出したのは父である。21歳の若い娘が「私は日本人と結婚して日本で生活したいから、お父さん旅費を出してくれない?」と頼んだら、父が不動産を売って日本までの旅費を工面したというのは、今の日本人にも理解されないだろう。(苦笑)。

 

また、さらに、ヒトラーが極右政党であるナチス党の党首だった時にエファ・ブラウンと交際を始めたのも、エファの将来を考えるとかなり危険なことだったはずだが、奇妙なことにエファの両親は2人の交際に全く干渉してない。これもやはり、たとえ親でも子供の恋愛には全く干渉しないという自由がドイツではあるからである。

 

 

 

ニート、引きこもりについて色々と書いてきたが前のブログ記事でも書いたように、誰でも参加できる地域密着のスポーツ、文化クラブを作る、ヨーロッパならキリスト教の教会の神父さんが無職、ニートの人々の悩みごとを聞いてるように、日本でもお寺の住職さんが悩む若者の悩みを聞くとか、とにかく、無職のニート、引きこもりの人々が集まれる居場所を日本全国に作らないと、これからもニート、引きこもりの人たちはどんどんと増えるだろう。