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「トップガン・マーベリック」のような戦争映画は嫌い

 

 

 

 

僕は戦争映画が好きだが、「トップガン マーベリック」のようなアメリカ軍は正義という映画は好きではなくて、「プラトーン」「7月4日に生まれて」のようなアメリカ軍の失敗を描いた映画の方が好きだ。

 

 

今は映画館で「トップガン マーベリック」が上映されていて大ヒットしてるようだが、僕は戦争映画マニアだがトム・クルーズ主演のこの映画のような、「アメリカ軍は正義の味方だ」というような戦争映画は好きになれない。一方で僕が好む戦争映画は「プラトーン」「地獄の黙示録」「フルメタルジャケット」のような、アメリカ軍の失敗と欠点を描いた戦争映画である。同じトム・クルーズ主演のハリウッド戦争映画なら、「7月4日に生まれて」の方がよっぽど名作だったと思う。「7月4日に生まれて」の演技でトムは主演男優賞にノミネートされているが、1986年に封切られた「トップガン マーベリック」の前作の「トップガン」の演技では、トムは何の男優賞にもノミネートされていない。

 

 

僕が20代前半にたくさん映画を見た頃には田山力哉という映画評論家が書いた本を参考にしていたが、田山氏は著書の中で「プラトーン」を高く評価して、一方で「トップガン」は強いアメリカの象徴として批判していた。

 

 

僕が20代前半に洋画を見る時には、「世界映画名作全史」「アメリカン・ニューシネマ名作全史」という本を参考にしながら見ていた。それで、後者を著述した有名な映画評論家の田山力哉は、1987年のアカデミー作品賞監督賞などを受賞したベトナム戦争を描いた「プラトーン」を本の中で解説した時に、「ベトナム戦争の泥沼の中からすごい戦争映画が誕生した。この映画前のハリウッド映画というと、レーガン大統領が掲げる『強いアメリカの復活』『弱者切り捨て』という政策の中で、『トップガン』『ライトスタッフ』『ロッキー』のような強いアメリカ男を描いた映画が多かった。しかし、この『プラトーン』では監督のオリバー・ストーンの実際のベトナム戦争での体験を描いており、アメリカの若い兵隊たちがベトナムの泥沼で喘ぎ苦しむ様子、ベトナム人を虐殺するシーンなどはとても正視できない悲惨さだった」。つまり、1986年に封切られた「トップガン」というアメリカ軍の正義を描いた戦争映画の対局にある戦争映画が、「プラトーン」ということになる。僕自身はこの頃は高校生だったが、「トップガン」はストーリーを聞いた時点で見に行く気になれなかったが、「プラトーン」はアカデミー作品賞を受賞しているというニュースも聞いたので、すぐに見に行こうと思った。写真下は「プラトーン」のワンシーン。トム・ベレンジャーの演ずるアメリカ軍の軍曹が、ベトナム市民を拷問してるシーン。

 

 

僕は「トップガン」「トップガン マーベリック」のような「アメリカ軍は正義」というストーリーを描いた戦争映画よりも、「プラトーン」のような「アメリカ軍の問題」をストーリーとして描いた映画の方が好きであり、多くの有名な映画評論家も「トップガン」よりも「プラトーン」の方を高く評価している。田山力哉は著書の「アメリカン・ニューシネマ名作全史2」の中では「トップガン」も紹介していた。しかし、「トップガン」の評価はすごい辛口であり、「トム・クルーズのようなカッコよすぎるパイロットがアメリカ海軍航空隊にいるのか疑問だし、ラストでトムが搭乗した戦闘機が国籍不明(恐らくイランなどのイスラム圏の反米国)の敵ジェット戦闘機を撃墜したシーンで、映画の試写会に集まったアメリカ人の観客は総立ちで拍手をしたという話にも嫌気が差した。私はむしろケリー・マクギリスなどが演じていた、アメリカ軍に勤務する美くしい女性将校たちが気に入った」というようなことを書いている。

 

 

アメリカの良い点は言論の自由があることであり、「トップガン マーベリック」のようなアメリカ軍万歳という映画が大ヒットする一方で、「プラトーン」のようなアメリカ軍の失敗を描いた映画もヒットすることである。だからウクライナアメリNATO側に入ろうとしている。

 

 

僕は基本的には戦争映画は、「史上最大の作戦」「遠すぎた橋」「トラトラトラ!」のような史実をほぼ忠実に描いた話が大好きなので、「トップガン」「トップガン マーベリック」のようなアメリカ軍を異常なほどに美化して描いたストーリーは好きにはなれない。だいたい、アメリカのハリウッドで戦争映画を作る際には「トップガン マーベリック」のようなアメリカ軍を美化したストーリーならアメリカ軍の全面的支援が得られるから経費もそんなにかからないが、「プラトーン」「7月4日に生まれて」のような反アメリカ軍的な映画を作る時は全く軍が支援してくれないので、すごい経費がかかるので製作するリスクも大きくなる。それでも、アメリカには言論の自由があるので反アメリカ軍的な映画を作っても、アメリカ人たちは名作映画なら評価して映画館に見に行くし、アメリカ人の映画評論家も高く評価をしてアカデミー作品賞監督賞などを授与する。

 

まあ、ここがアメリカ人の良い点である。中国ロシアなどには言論の自由がないので、今のロシアでウクライナ戦争を批判するショート映画などをロシア人映画監督が作ると、すぐにロシア公安によって身柄を拘束されてしまう。中国でもチベット弾圧の映画を中国人映画監督が作ると、中国の公安に捕まってしまう。だから、「トップガン マーベリック」のようなアメリカの愛国主義者が喜ぶ映画をたまに作るのはよいが、あまりこんな映画ばかり作っていると、アメリカもそのうちにロシア中国と変わらなくなってしまう。(苦笑)ウクライナのゼレンスキー大統領がいかなる損害を払ってでもNATOに加盟をしてアメリカ側に入りたいのは、アメリカには言論の自由があるからである。そして何が何でもロシア側から離れたいのは、プーチン大統領の率いるロシアには言論の自由がないからである。