- 「日本のいちばん長い日」は旧作の1967年版の方が断然に傑作映画だ。この映画に出演している男優たちは実際に太平洋戦争を体験しているので、本物の軍人と政治家に見える。2015年版は本木雅弘が天皇陛下を演じている以外はあまり良い点がない。
- 1967年版の映画では、陸軍将校が他の軍人の首を切り落とすという目を背けたくなるトラウマシーンもあって迫力がある。三船敏郎が演ずる阿南陸軍大臣が割腹自決を遂げるシーンでも、三船が名演技をしている。
「日本のいちばん長い日」は旧作の1967年版の方が断然に傑作映画だ。この映画に出演している男優たちは実際に太平洋戦争を体験しているので、本物の軍人と政治家に見える。2015年版は本木雅弘が天皇陛下を演じている以外はあまり良い点がない。
「日本のいちばん長い日」という太平洋戦争の終戦を巡って日本政府と軍部が苦悩する映画があるが、この映画は2015年に制作された新しい映画よりも、1967年に制作されたモノクロの古い映画の方が断然に出来がいい。2015年版の評価できる点は、本木雅弘が昭和天皇を演じていて天皇の苦悩も描かれている点だけだと思う。1967年版には八代目松本幸四郎(松たか子のおじいさん)が昭和天皇役で出演しているのだが、まだ昭和天皇が存命しており、しかも、まだ終戦後22年しか経ってないという事情から、松本幸四郎は声はしても顔が映らないようにとか、特別の配慮がなされている。
旧版の「日本のいちばん長い日」の出演者は当然ながら全員が太平洋戦争と終戦を体験しており、阿南陸軍大臣役の三船敏郎は陸軍航空隊の教官パイロットだった。三船のように大平洋戦争に実際に軍人として従軍した俳優が多いので、旧版の方が俳優が戦争経験者なので迫力が違うのである。俳優と書いたが、この映画は女優が映るシーンはワンカットしかなくて、鈴木貫太郎首相の私邸の女中役である新珠三千代が、右翼団体が私邸に押しかけて放火する時に「やめてください!」と叫ぶシーンだけである。
こちらが、旧版の「日本のいちばん長い日」のウィキペディアの説明だが、三船敏郎、山村聰、笠智衆、黒沢年男、小林桂樹、加山雄三といった豪華な男優陣のキャストであり、しかもナレーションは仲代達矢である。黒澤明監督の映画「七人の侍」に出演した七人の侍のうち木村功以外が揃っており、さらに小津安二郎監督の名作「東京物語」に出演した笠智衆と山村聰も出演している。これほど日本男優陣が総出演している映画は他にはないと思う。この映画を監督したのは岡本喜八監督であるが、監督は自分よりも実績のある男優に指示を出さないといけなかったから、すごくやりにくかったと思う。(苦笑)
1967年版の映画では、陸軍将校が他の軍人の首を切り落とすという目を背けたくなるトラウマシーンもあって迫力がある。三船敏郎が演ずる阿南陸軍大臣が割腹自決を遂げるシーンでも、三船が名演技をしている。
日本のいちばん長い日の映画予告編。
この映画を僕が生まれて初めて見たのは小学校6年生の時だが、この映画ですごくトラウマになったシーンがある。島田正吾が演ずる森近衛師団長に、終戦に反対する陸軍軍人たちのクーデターに参加してほしいと陸軍将校は説得するのだが、森師団長は「明治神宮に行ってよく考えようと思う」と答える。そこに黒沢年男が演ずるクーデター首謀者の畑中中佐と、中谷一郎が演ずる航空学校教官の黒田大尉がやって来て、森師団長がまだクーデターに同意していないことに激怒して、畑中中佐と黒田大尉の2人で森師団長を殺害してしまう。森師団長を殺害する際に、守ろうとした白石中佐の首を黒田大尉が軍刀で切り落としてしまう。体から大量の鮮血が噴き出して首が床にドスンと落ちるシーンは、12歳だった僕にとってはかなりのトラウマになった。その後、黒田大尉は首を切り落とした時に手の神経が硬直して軍刀に引っ付いてしまって、なかなか軍刀が手から離れない。それを机に何度も打ち付けて軍刀はやっと手から離れた。実際に人を刀で斬ると興奮して神経が言うことをきかなくなるようだ。細かいことまで本当によく再現されていた。
このように、恐らく軍隊をテーマとした太平洋戦争関連の日本映画では、この映画が最高のキャストで最高の出来の傑作だと思うので、特に若い人たちに見てもらいたい傑作映画である。