- ホームステイ家族の主人は「ドイツの親は子供の交際については全く干渉しない。君とエファが愛し合ってるなら、年の差など気にせずに結婚すればいい。エファの両親をよく知ってるけど、君を歓迎するだろう」と言った。
- 「日本の民法の規定で、16歳の少女と結婚するのはかなり難しい」と僕が言うと、主人はすごく驚いていた。
- 結局、エファとは付き合わなかったけど、日本に帰る数日前にエファに会うと、彼女は軽蔑と非難を込めた視線で僕を見ていた。
前の記事の続きです。写真上はホームステイ家族のH家が住んでいたシュツットガルト近郊にあるファイヒンゲン・アン・デア・エンツ(エンツ河畔のファイヒンゲンという意味)市の中心街。写真を見ればわかるように人口10万人ほどの小さな街です。
ホームステイ家族の主人は「ドイツの親は子供の交際については全く干渉しない。君とエファが愛し合ってるなら、年の差など気にせずに結婚すればいい。エファの両親をよく知ってるけど、君を歓迎するだろう」と言った。
次の日の朝に、ホームステイ先のH家の主人に、昨日、エファから結婚を前提にして付き合ってもらいたいと告白された話をすると主人は、
「そうなのか。それで、君はエファのことをどう思うんだ?気に入ったのか?」
と僕に聞いた。
「そうですね、かわいくて優しい子だと思います」
「そうか。だったら、結婚を前提に付き合えばいい」
「いや、でも、本当に愛し合ったらエファの両親に怒られますよね?『30才なのに16才の娘とベッドインするとは、頭がおかしいのではないか!?』などと怒鳴られるのでしょ?」
「何を言ってるんだ、君は!?エファの両親はよく知っているけど、心が広い人たちだからそんなことは絶対に言わないよ。エファが君と付き合って満足なら、両親も君たちの交際の邪魔なんかしないよ。私が知る限りでは、ドイツの親で子供の恋愛に干渉する人なんか、どこにもいないよ。子供たちのやりたいようにやらせているよ。私が若い頃も、子供の恋愛の邪魔をする親なんていなかったね」
「だったら、エファの家に行って、『はじめまして、こんにちは。あなたの娘さんと愛し合いに来ました。娘さんに誘惑されたのです』と言ってもいいのですか?」
「エファがそれで喜ぶのなら、いいんだよ。親は何も言わないよ。私も妻も子供たちの恋愛には干渉するどころか、応援しているよ」
「日本の民法の規定で、16歳の少女と結婚するのはかなり難しい」と僕が言うと、主人はすごく驚いていた。
その後、日本には民法の制限により、16才のエファと結婚するのはかなり難しいと教えると主人は、
[Ach, so!](あっ、そうなのか!)
と大声で言って驚いたのだった。ちょっと、ドイツ語について説明すると、ドイツ語でも「あっ、そうか!」というのは、「アッ、ゾー!」と言う。
この主人との会話によって、森鴎外の体験談を基にした小説「舞姫」の謎がよくわかったのだった。ヨーロッパの親は子供の恋愛には、一切、干渉しないから、女学生だったエリスは父親に旅費を工面してもらって日本に来ることが出来たのだった。
さらに、ちょっとドイツ軍マニアらしいことも言った。ホームステイ先の家族も僕がドイツ軍に詳しいことはよく知っていたから。
「エファのことをドイツ軍マニアらしく表現をすると、[Blitzkrieg-Kommandantin](女電撃戦司令官)ですね。第二次大戦時のドイツ軍のように、電撃戦のような速攻でアッという間に僕をパニックに陥れましたから。[Tochter des Guderians][Tochter des Rommels](グデーリアンの娘)(ロンメルの娘)というのが、彼女にふさわしいあだ名ですね」
「エファの一方的な攻撃を見ていて、
『これがドイツの娘が最も得意とする電撃作戦的恋愛か。第二次大戦時のドイツ軍は電撃戦によって敵軍を次々と撃破しましたが、現代のドイツ娘も電撃戦によって次々と欲しい男を奪ってしまうのだな』
ということを、僕は実感しましたよ」
僕がこのようなことを言うと、主人は大笑いしたのだった。
結局、エファとは付き合わなかったけど、日本に帰る数日前にエファに会うと、彼女は軽蔑と非難を込めた視線で僕を見ていた。
それで、エファと何かあったのかというと、結局、何もなかった。彼女は僕が家に遊びに来るのを待っていたらしいが、こちらは16才と本気で愛し合う気にはなれなかったので、遊びには行かなかった。
僕が日本に帰る10日ほど前にH家の長男のヤンの誕生パーティがあり、そこにエファも来ていたが、彼女は長い間僕の顔をありったけの軽蔑と非難を込めたような、何とも言えない表情で見ていたのだった。
ホームステイが終わって帰る時にH家の主人にシュツットガルト空港まで車で送ってもらったが、その車内で、
「結局、エファとは何もありませんでしたがそれで良かったのですよ、お互いのために」
と僕が言うと主人はゲラゲラ笑った。そして、
「まあ、君の言うとおり、16才と30才で結婚を前提に交際しても上手くいかなかったかだろうね。価値観、考え方がかなり違うからね。君にふさわしいドイツ女性は25才以上の人だろう」
と言った。
写真上は国際結婚のイメージ。日本人の国際結婚というと日本人女性と外国人男性の例が多いようだが、日本人男性とドイツ人女性との夫婦はけっこう多い。有名な人だと、プロレスラーの蝶野の妻はドイツ人女性である。
これが、ドイツでの強烈な恋愛のような体験談です。実際に交際していないから恋愛とは言えないかもしれませんが。ちょっと真面目な忠告をすると、これから、ヨーロッパに長期滞在する予定の独身男性は、現地の年頃の女性には充分に注意する必要があります。下手をすると森鴎外の「舞姫」のような事実があなたを襲うかもしれません。もちろん、日本の女性も、現地の男性との交際は慎重に行なう必要があります。