Deutschland-Lab

Deutschland-Lab

歴史や文化、スポーツなどドイツに関する情報まとめサイト

ドイツの学校には日本のようないじめは少ない。しかし、他の問題がある(2)

f:id:novaluewriter:20200703122141j:plain

 

ドイツのミュンヘンの博物館で日本で働いたことのあるニュージーランド人夫婦に偶然に会って 、彼らと日本のいじめ問題について話し合った。

 

1997年9月にドイツを一人旅した時に、ドイツ、ミュンヘンのドイツ博物館内の航空機展示コーナーに行った。僕は、第二次大戦でドイツ軍が使用した本物の戦闘機が見れて満足していた。

その横に、各国の戦闘機の小さな模型が展示してあり、その前に大柄の30才ぐらいの白人の男が立って模型を見ていた。僕は当時はまだドイツ語があまりしゃべれなかったので、
「英語、しゃべれますか?」
と質問すると、なんだかふざけた答えが返ってきた。その男はニヤリと笑って、
「君は日本人だな?オレはニュージーランド人だけど、日本の大阪に数年間住んでたことがあるんだ。」
と僕に言ったのだった。

僕「大阪で何をしてたんだ?」
男「妻が日本の中学校で英語の先生をしていて、オレも日本の企業で働いていたんだよ」
「妻が英語の先生というのは、公立中学でALTをしてたのか?」
「そう、そのとおり」
ここで妻が現れた。小柄で身重の人だった。ここから3人で話をして、その夫婦は大阪の堺に住んでいて、よく甲子園にプロ野球を観に行っていたことがわかった。日本のプロ野球の話でけっこう盛り上がった。


しかし、日本の公立中学校というと色々と問題もあるので、次のような会話もした。

僕「でも、日本の中学校というと、クラスでいじめ問題とかなかったか?よく、いじめで自殺した子供のニュースとか聞いただろ?」
夫(深刻な表情をして)「そう、そう。それは本当に大変な問題だ。本当に日本の子供はストレス一杯で可哀想だと思ったよ」
妻「私の学校でも一人、死んでしまった生徒がいたの」
僕(首吊りのジェスチャーをして)「いじめで自殺したの?」
妻「違うわ。他の学校の不良生徒とケンカをした時に、ナイフで刺されてしまったの
僕「ニュージーランドでは、そういう、学校でのいじめ、校内暴力とかの問題はないのか?」
夫、妻(同時に首を振って)「ない、ない。そんな問題は全くない」

僕「今、日本のマスコミは、“先生の質が悪く、指導力不足だから、いじめ、校内暴力が止まらないのだ。学校の荒廃は現場の先生のせいだ”などと新聞、雑誌などに書いているけど、本当に現場の先生は努力不足だと思った?」
夫、妻(2人揃って、首を横に振って)「ノー、ノー!!」「学校の先生たちが無能ということは絶対にない。悪いのは、教育組織の一番上の人たちと、年寄りの大学教授などだと思う。高校、大学受験が一発勝負で、一年に一回しか受験の機会がないのがおかしいと思う。日本人みんなで、教育組織全体をよく見直すべきだと思う」

 

ニュージーランド人夫婦は「日本は受験戦争といじめ問題が深刻だから、日本では子育てはしたくない」と言っていた。


当時は、“さかきばら事件”があって日本人全員がショックを受けていた頃だったので、僕はその事件についても話をした。

夫(深刻な表情をして)「まあ、日本の狂気じみた受験中心の学校生活の中では、ストレスも溜まるから、そういう事件も起こるかもね。本当に残念だけど。日本の受験競争は、本当におかしいと思うよ。確かに勉強はしないとダメだけど、学校が終わった後でも塾、予備校に通っているのが当然なんて変だね。塾、予備校なんて、結局、ビジネスだろ?日本の社会って、本当に、全てがビジネス向けに出来ているんだと思ったよ。日本の子供は本当に可哀想な生活をしているよ」
僕「でも、ニュージーランドが天国というワケでもないだろう?失業問題では日本の方が少しはマシかもしれないし」
夫「たしかに、日本は激しい競争の中で経済成長をしたかもしれないけど、我々には理解できないね。あそこまで競争するなんて。ところが、大学まで卒業したのに英語はしゃべれない人がたくさんいたりするし。」(苦笑)


ここで僕は、僕の両親も親父が有名大学卒の銀行員だったので、経済的な安定を求めて、お見合い結婚に近い結婚をしたという話をした。

夫(苦笑いをして)「そうだね。日本人の恋愛は、どこの大学卒業とかどこの学校卒業というのが大きな決め手になることがあると、中学校の親たちが話していたね。しかし、ニュージーランドでは2人の仲の良さ、性格の相性なんかがもっと重要で、日本のように、エリート会社員の男を探してきてお見合いするなんて考えられないし、それに、それで結婚しても人生がつまらないよ。」
僕「じゃあ、将来、日本にもう一度住んで、日本で子育てをしたいと思う?」
夫、妻(声を揃えて)「ノーー!!」

最後に夫はこう言った。
「別に日本が嫌いというわけではないよ。京都、奈良とかは本当に素晴らしかったし、日本人は礼儀正しくて親切だしね。だけど、あんなにいじめ、受験地獄の学校で自分の子供を育てるなんて、まっぴら御免だね。日本の学校制度をニュージーランドで始めたら、親が子供を学校に行かせなくなって、誰も学校に行かなくなるよ。今のニュージーランドの方が断然いいよ」


僕の知り合いでもニュージーランドの大学に留学していた人がいるが、その人が言うには、
「ニュージーランドの学生は選択肢が多いんだよ。英語がしゃべれるから、競争が好きな学生は米、英などの難関大学に挑戦して、そうでない人は、地元の大学でのんびりと勉強している。英語さえしゃべれれば、日本の学生ももっと選択肢が増えるんだろうけど。たしかに、日本のような厳しい受験競争なんてないね」
ということだった。

ドイツ、ヨーロッパの学校では恋愛が盛んであり、親と大人たちは全く干渉しないので、高校生で子供を産んでしまうカップルまでいる。これがかなり深刻な問題のようだ。

 

 

さらに、日本とドイツで決定的に違うのは、10代のドイツ人の若者が異性と積極的に交際しているということ。ドイツの10代の男女というのは、グループ交際をしていることが多い。週末などに道を歩いていると、男3人、女3人とかいうグループで、楽しそうに会話をしている光景をよく見かけた。これは、ドイツだけでなく、恋愛が盛んなヨーロッパでは当たり前のことのようだ。12才~15才ぐらいのドイツ人少女がいかにも外人旅行者という外見をしている僕に、道、電車の時刻を尋ねたこともあったし、16~18才ぐらいの女子校生が僕に微笑みながら声をかけてきたこともあった。やはり、日本人の旅行者が珍しかったので話をしたかったのだろう。(笑)

それで、ヨーロッパの親というのは、子供の異性との交際については、全く干渉しない。それどころか、子供の恋愛を応援することが多い。日本とは違い子供の恋愛に干渉するような親は、「理解の無い最悪の親」という目で見られるらしい。もちろん、日本のような「お見合い結婚」というのは全くあり得ない。さらに、ちょっと付け加えると、森鴎外の「舞姫」に登場するエリスのモデルとなったドイツ女性は、なんと、21歳のエリーゼ・ヴィーゲルトという女学生だったという。当時、森鴎外は25才の東京帝大(今の東大大学院)医学部生で、どう見ても釣り合わない恋愛だが、エリーゼ嬢は父にお願いして、日本までの往復の旅費を出してもらったという。100年以上も前からこんなに恋愛が自由だったのにびっくりする。


これほど恋愛が盛んだから、ドイツの中学校、高校で大問題なのは、いじめよりもむしろ未婚の母、同居していた恋人に突然に捨てられるということで、これが原因で自殺する10代20代の若い女性がかなり多いようだ。恋愛をしていて性行為をして10代で子供を産んだけど、育てられないから公共の施設に預けるという「赤ちゃんポスト」などの数は、ドイツの方が日本よりも圧倒的に多い。

もちろん、こちらの問題の方もかなり大変だが、10代が恋愛で悩む方がいじめ、暴力で悩むよりも、よっぽど人間的な感じがすると僕は思う。いじめは日本では1980年代頃から社会問題になったが、恋愛の人間関係で悩むというのは、2千年ほど前の古代ローマ帝国、古代中国などでもあった問題である。

 

イラストの上は学校でのいじめのイメージ。多数の生徒が1人の気の弱い生徒をいじめるケースが多い。イラストの下は育児放棄のイメージ。ドイツの学校の場合は恋愛がとても盛んなので、いじめよりも15歳から19歳という未成年で子供を作ってしまうという方が大問題のようだ。未成年で恋愛をしていて体は大人でも経済力はないので、子供が産まれると男性の方がびっくりして逃げてしまい、女性だけが子供と残されて生活に困るというケースが多い。その時は女性の両親が面倒を見るとか、施設に預けるということになるようだ。

 

ヨーロッパの家族に関するニュースでとてもびっくりしたのは、40歳以前で孫がいるという人がいるということ。ヨーロッパの子供はとても早熟で親も子供の異性との交際に干渉しないので、親子2代に渡って未成年で子供を産むと、そうなるケースもあるという。

 

 

最後に、僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。この記事のようにドイツにいた時に多くの人と交流した時の体験談以外にも、ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対して色々と興味深いブログ記事を書いているので、時間があったら他の記事も読んでみてください。感想のコメントを書いてもらうと嬉しいです。ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いてますし、これからもそういう記事を書いていきます。

 

 

 

f:id:novaluewriter:20200703123341j:plain