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追悼 ヴォルフガング・ペーターゼン監督

 

 

 

 

ドイツ映画の巨匠ヴォルフガング・ペーターゼン監督が8月12日に亡くなったので、遅くなったけど追悼記事を書きます。ペーターゼン監督は「Uボート」「ネバーエンディングストーリー」などの傑作を作った名監督でした。

 

 

ヴォルフガング・ペーターゼン監督が8月12日に亡くなってからかなり日が経ちましたが、やはりドイツ映画の巨匠で僕が大好きな映画監督なので追悼の記事を書こうと思います。

 

 

 

この監督の映画といえばまず思い浮かぶのは「Uボート」だろう。今までに世界で封切られたドイツ映画で最もヒットした映画は「Uボート」であり、ペーターゼンを世界的に有名にしたのはこの映画だった。上の写真2枚はミュンヘンババリアフィルムシュタットを2012年9月に訪問した時に撮影した、映画「Uボート」の模型と館内のセット。この当時はまだCG技術がなかったので、嵐の海を表現する時は上の艦橋のセットに立っている水兵役の俳優たちに、数人のスタッフが大きなバケツで大量の水をかけて嵐を再現した。それでも、1981年当時の撮影技術としてはかなり高度であり、アカデミー賞の撮影、視覚・音響効果などの賞にノミネートされた。

 

それでネタバレになるが、この映画はラストで大西洋で散々苦労の航海をしたUボートの乗組員たちが、ようやく母港に帰港してハッピーエンドかと思ったらイギリス空軍の空襲があって館長を含む乗組員の多くが母港で戦死してしまい、Uボートも沈んでしまう。このどんでん返しのシナリオだから「Uボート」は大ヒットをした。でも、僕はこの映画を初めて映画館で見た時にイギリス空軍の空襲がラストにあった時に、「やっぱし」と思って苦笑いをした。理由は映画内で館長が「空を見上げるといつも敵の飛行機しか飛んでない。ドイツの飛行機はどこにいるんだ、ゲーリングさんよ!」などと言って嘆くシーンがあったからである。しかも、僕のように第二次大戦に詳しい人だと、映画でUボートが作戦活動をしている1942年初めの時期は英空軍が大西洋沿岸の制空権を握っていた事実を知ってるので、ラストで英空軍の空襲があるのも頷けるのである。

 

 

ペーターゼン監督が「Uボート」「ネバーエンディングストーリー」を撮影したミュンヘンババリアフィルムシュタットを訪れて、映画の撮影に使われたセットを見学したことがある。監督がドイツで撮影した2作品は高い評価を受けた。

 

 

 

上の写真は同じくミュンヘンババリアフィルムシュタットで撮影した映画「ネバーエンディングストーリー」のセットである。「ネバーエンディングストーリー」もヴォルフガング・ペーターゼン監督の作品で、映画と主題歌がかなりヒットした。ネタバレになるが、主人公のバスチアン少年が「ネバーエンディングストーリー」という本を読んでいくと、最後に自分がその本の中にいつの間にか入っていて、主人公とヒロインと出会うという話である。子供が主人公で子供向けの話ではあるが、なかなかの傑作で日本でも人気があった。

 

 

バイアスのかかった見方かもしれないが、ペーターゼン監督がハリウッドに移って撮影した作品はドイツ時代に比べるとあまり良くない。「エアフォースワン」「ポセイドン」は娯楽作品としてはヒットしたが、シナリオはあまり面白くない。

 

 

その後、ペーターゼンはこの2作の大成功でアメリカに移住してハリウッドで映画と撮ったけど、「アウトブレイク」はアメリカのある地域でアフリカからの動物を媒体とした新種の強力な伝染病が蔓延するという話で、今のコロナ蔓延した世界を先取りしたような話でけっこう面白かった。

 

でも、「エアフォースワン」と「ポセイドン」(「ポセイドンアドベンチャー」のリメイク)は僕にとってはあまり面白くはなかった。「エアフォースワン」はアメリカ大統領が乗った飛行機(この飛行機をエアフォースワンという)がテロリストにハイジャックされるが、大統領が大活躍をしてテロリストと戦うという話である。いかにもアメリカ白人たちが大喜びする話で、アメリカでは大ヒットしたようだ。「ポセイドン」はリメイクだが、映像技術は前作の「ポセイドンアドベンチャー」を越えていて迫力があるが、シナリオは前作よりもつまらなくなっている。

 

映画雑誌などを読むと、「ヴォルフガング・ペーターゼン監督はドイツ時代の作品は名作だったが、ハリウッドに進出した後はやはり俗受け、特にアメリカ人受けを狙ったのかドイツ時代とは違って商業的な作品が多くなった」などと書いてある。それでもペーターゼン監督の映画「Uボート」は、ナチスドイツ海軍という第二次大戦で枢軸国側の悪役の戦いを描いたのに、ドイツ映画史上最高の大ヒット作品となったので、立派な金字塔を打ち立てたと思う。しかし、やはりその後は「Uボート」を越える作品を作ることはできなかったようだ。