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映画産業はいつからダメになったのか?(2)

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これは僕が2009年に他のブログに書いたブログ記事です。だから、ちょっと修正してあります。

 

21世紀になってからの映画はCGアクションシーンは凄いが、シナリオがつまらない映画が増えた。また、「スターウォーズ」「ターミネーター」などのヒット作品の続編が増え過ぎた。

 

個人的に思うに、昔の名作映画に比べ最近の映画は本当にいい加減だと思う。特に脚本、ストーリーが。(2008年の)お正月映画でも「エイリアンVSプレデター」、「アイ・アム・レジェンド」なんかを映画館で上演していたが、こういった映画のように、ストーリーが単純でアクションシーンだけが見所の映画に千円以上も払おうとは思わない。上の写真はこういう作品とは逆で、1949年のカンヌ映画祭グランプリを受賞した「第三の男」。アクションシーンはほとんどないが、シナリオが実に優れている。


それに比べると30年ほど前の映画は、アクションシーン、CGの技術は大したことはなかったが、ストーリーがよく出来ていたと思う。昨日(2009年にこのブログを書いた日の前の日)にテレビでやっていた「カッコーの巣の上で」(75年度アカデミー作品賞、主演男優賞、主演女優賞受賞)は、精神病院の閉鎖病棟内での患者の虐待を描いており、この映画がキッカケとなって精神病患者の治療法、医師、看護師のモラルが問われることになったとも言われている。他に精神病患者の人生にスポットを当てた映画には、「普通の人々」(80年度アカデミー作品賞受賞)、「レインマン」(89年度アカデミー作品賞受賞)などがある。

僕が思うには、今のアクション、CG技術などがメインの映画よりも、この時代(1970年代と80年代)の映画の方がよっぽど面白かったと思う。映画館で見ても、
「いいお話だったな。色々と考えさせられた。お金を払って見る価値があった」
と満足することが出来た。

だが、最近は、ハリウッドではこういう映画はあまり作られていない。社会の歪みを告発するとか、人間性の尊厳を高らかに謳い上げるような、感動して涙が止まらない映画というのは最近見たことがない。僕が、去年(2007年のこと)、映画館に見に行った映画は「硫黄島からの手紙」だけだった。この映画は、監督、スタッフは全員アメリカ人なのに、アメリカ人はほとんど登場せず、日本軍将兵を演ずる日本の俳優が主人公というのが興味深かった。恐らく、ハリウッド映画史上でもこのような作品は初めてのことではないだろうか。それで、その後に映画館に見に行った映画も、2009年3月にドイツ人の友達と一緒に見に行った「ワルキューレ」くらいだ。


かつて僕がブログを書いていた某ブログサイトでは、ある映画のキャンペーンをやっていて、半年ほど前にも「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキャンペーンをやっていた。僕の考えでは、このようにキャンペーンをやっている映画というのは、そんなに面白くない話だから映画配給会社が必死に宣伝活動をしているのだと思う。僕は2004年春に「戦場のピアニスト」を、2006年冬に「硫黄島からの手紙」を映画館に見に行ったが、この2作品は特別なキャンペーンもやっていないのに口コミなどで、
「金を払ってでも見る価値があるらしいよ。感動する話なんだって」
ということが伝わって大ヒットになった。結局、素晴らしいストーリーの映画を作れば映画評論家、マスコミなどが絶賛してくれるので、自然に大ヒットするのだと思う。

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「スターウォーズ」「ターミネーター」「パイレーツ・オブ・カリビアン」などの大ヒットで、アクションシーンと映像美が凄い作品=良い映画みたいな風潮が出来てしまった。

 

写真上は1950年に日本で公開されたイタリア映画の「自転車泥棒」。スターがたくさん登場するハリウッドのアクション映画とは全く対照的な作品で、スター俳優は全く登場しないがシナリオがとても優れているので世界で大ヒットした作品。

 
数日前に、「映画マニア」を自称する30才ぐらいの同僚2人と映画の話をした。
僕「映画『スティング』見たことある?」
同僚A「『スティング』って、バンドのことですか?映画の『スティング』は知りませんね。いつ頃の映画ですか?」
僕「1973年の映画だけど」
同僚B「そんな古い映画は知らないですよ。30年以上も前の映画を見る人なんて、そんなにいないんじゃないですか?」
僕「・・・そうかな?」
そして、2人は、
「リドリー・スコットの『ブレードランナー』は、本当にすごい映画だ。『エイリアン』シリーズもすごいけど・・・」
という話で盛り上がっていたのだった。僕は頑固にも、
「80年代以降の比較的最近の映画しか見ないのに、”映画マニア”と自称するのは、ちょっとね・・・」
などとおもったのだった。(苦笑)

なぜ、このようにハリウッド映画がスケールとアクションシーンはすごいけど、中身はあまりないような映画が増えてしまったのかというと、僕よりも映画に詳しい人々がネット上ではこういうことを言っていた。「ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグのせいだろう。ルーカスが『スター・ウォーズ』シリーズで、スピルバーグが『インディ・ジョーンズ』とその他のSFものの映画で大当たりして成功したから、その後もジェームズ・キャメロンみたいに2人の真似をしたSF大作を作る監督が増えた。一方で感動する人間ドラマは、あまり流行らなくなっていった。とにかく、アクションシーンがすごい映画、SF大作映画を作ればヒットするというふうになってしまった」

 

この意見には特に若い人たちでCG満載のアクション映画が好きな人たちは同意しないだろうけど、僕のようにアラフィフのおじさんで映画にヒューマニズムなどのメッセージ性が強い作品をたくさん見た人たちは、アクションシーンを引いたら何も残らない映画は見ていても無意味な感じしかしない。70年代80年代の頃までは映画を見て色々と考えさせられることがあったけど、最近の映画は見ても何のメッセージも感じない作品が多い。

 

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ドイツ人家庭にホームステイした時に、西ドイツ時代に制作された「Uボート」「リリー・マルレーン」を始めとして昔の映画の知識を語ると、主人と奥さんは喜んでくれた。

 

それで、この僕の今のアクション映画批判がドイツと何の関係があるかというと、何度も書いたけど僕がシュツットガルト近郊に住むH家にホームステイをした時に、「西ドイツ映画の『Uボート』は50回以上見たし、それ以外のドイツ映画『リリー・マルレーン』『ベルリン天使の詩』『時の翼に乗って』『ネバー・エンディング・ストーリー』なども見た」という話をH家の人たちにすると、みんなけっこう喜んで「ドイツの映画をよく知ってるね」と言ってくれた。それでH家の中にはけっこう簡単に入り込むことが出来た。

 

特に1940年代生まれの主人と奥さんと、「史上最大の作戦」「パリは燃えているか?」「オデッサファイル」「大脱走」などの話をして、ドイツの俳優についてもよく知っていると言うと2人ともすごく喜んでいた。ホームステイをした当時は1999年の春だったから、主人と奥さんはたまに息子と息子の友達と一緒に最近のハリウッド映画を応接間で見ていたが、でも、やはり2人は自分達が若かった頃に見た60年代70年代の映画に詳しい僕に好感を抱いてくれた。やはり、最近ヒットしている映画だけでなくて、昔の映画にも詳しいと世代を越えて会話をすることができる。写真上は「Uボート」のワンシーン。「ドイツ語の勉強のために『Uボート』は50回くらい見た」と言ったら、H家の主人は第二次大戦で戦死したドイツ兵の息子なので大喜びしていた。奥さんもドイツ兵(数年前まで生きていた)の娘だから、同じように喜んでいた。