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映画「ミッドウェイ」の感想

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今日も戦争映画の感想を書きます。年末に2019年公開の「ミッドウェイ」と、2020年公開の「1917 命をかけた伝令」という2本の戦争映画を、WOWOWで見たからです。今日はミッドウェイの感想を書きます。

 

 

映画「ミッドウェイ」は「インディペンデンス・デイ」などのCGを使ったアクションシーンはすごいが、シナリオはつまらない映画を作るドイツ人のローランド・エメリッヒ監督の作品と聞いた時に期待できないと思った。

 

 

この映画は監督がローランド・エメリッヒと聞いた時点で、「だめだ。CGを使ったアクションシーン、戦闘シーンは迫力があるだろうが、シナリオはつまらない駄作になるだろう」という予感がしたので、映画館には見に行かずに衛星放送で放送されるまで待つことにした。ローランド・エメリッヒ監督はドイツのシュツットガルト出身という生粋のドイツ人監督であるにもかかわらず、他のドイツ人監督とは違ってドイツではほとんど映画を作らずに、ハリウッドで仕掛けが大きくてアクションシーンは迫力があるけどシナリオはあまり面白くない映画ばかり作っている。この監督が今までに作った映画といえば、「インディペンデンス・デイ」「GODZILLA」(ゴジラ)「2012」などを制作して、アカデミー作品賞、監督賞などの名誉な賞にノミネートされたことは一度もなく、一方で最低作品賞、最低監督賞に送られるラジー賞には何度かノミネートされてるという監督である。つまり、「映画は楽しい娯楽」と考えてるような大衆受けする映画は作るが、映画評論家受けする映画は作らない性格の人のようだ。

 

僕もエメリッヒが生まれも育ちもドイツのシュツットガルト出身なのに、1996年に公開された「インディペンデンス・ディ」の監督と聞いた時に意外だなと思った。エメリッヒは複雑な人間ドラマが多いドイツ映画の中では変わった人であり、それまでの有名なドイツ映画監督だったヴィム・ベンダース、ヴォルフガング・ペーターゼンなどとは明らかに違うタイプの監督である。ウィキペディアを見ても彼は、それまでの少ない予算で制作された人間ドラマが多いドイツ映画をあまり好きではなくて、ハリウッド型のスペクタクル、アクション映画を好んでいて、ドイツではそういう映画が作れないのでハリウッドの映画会社と契約したと書いてある。実際、僕もドイツ人数人と友達だが、ドイツ人の間でもベンダースの「ベルリン天使の詩」「時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース」のような映画は人気がない。これは、今の日本でも黒澤明、小津安二郎などの日本映画が人気ないのと同じだろう。(苦笑)

 

 

映画「ミッドウェイ」はやはりアメリカ白人が喜ぶ戦争映画だった。日本人男優の豊川悦司、浅野忠信も日本海軍提督の役で出ていたが、基本的には真珠湾攻撃で騙し討ちを喰らったアメリカ海軍の軍人たちが、ミッドウェイ海戦で復讐を果たすという話だった。

 

 

それで、実際に映画「ミッドウェイ」を見た感想だが、やはり、アメリカ白人を喜ばせるために作られた戦争映画だった。当然ながら1942年6月に行われたミッドウェイ海戦の時には、アメリカの軍人は白人がほとんどだったので、アメリカ白人が大活躍する。ストーリーは真珠湾が攻撃されて太平洋戦争が始まる頃から始まり、「リメンバー・パールハーバー」の合言葉の元、アメリカ白人の海軍軍人たちが日本海軍と戦い続けて、ドゥーリットル隊による初の東京空襲、珊瑚海海戦で日本海軍に少しずつダメージを与えて、最後に日本海軍をミッドウェイにおびき出して日本海軍の主力である空母「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」の4隻を沈めてアメリカ白人にとってはハッピーエンドというラストになる。

 

浅野忠信が演ずる山口多聞少将の率いる空母「飛龍」が反撃をして、米空母「ヨークタウン」を大破させるというシーンもあるが、そこはあまり詳しく描かれてない。豊川悦司の演ずる山本五十六連合艦隊司令長官は真珠湾攻撃の後には、「外務省の失敗で宣戦布告前の騙し討ち攻撃になってしまった。アメリカという眠れる巨人を起こしてしまった」と嘆くが、ミッドウェイ海戦の後には「敵の罠にまんまとはまってしまったようだ」と言って嘆く。でも、日本の国力とアメリカの国力の差を考えれば、ミッドウェイ島、ハワイ諸島を完全に占領してそこを長期間維持するということはどう考えても無理なので、冷静に考えればミッドウェイ海戦のような大失敗は遅かれ早かれ起こったのだろう。

 

 

ハリウッド戦争映画というのはアメリカ軍が正義という映画を作らないと軍の協力を得られないので、そういう話が多い。それに、アメリカ白人が見ないと映画が興行的に成功しないので、アメリカ軍が最後に勝利した第二次大戦の話はよく映画化される。

 

 

真珠湾攻撃から1942年4月18日のドゥーリットル隊による初の東京空襲までのくだりは、同じく駄作ハリウッド映画である「パールハーバー」でも映画化されており、今回の「ミッドウェイ」ではそれがミッドウェイ海戦まで伸びたという感じだった。まあ、「俺たちはいつも正義なんだ」と信じているアメリカ白人にとっては、騙し討ちの真珠湾攻撃を受けて、それを東京初空襲とミッドウェイ海戦で仕返しするまでの歴史というのは、本当にお気に入りなんだろう。それに、第二次大戦はアメリカ白人が最後に完勝を収めた戦争でもある。だから、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争の方が時系列的には後であり、今でもアメリカ社会と深い関係があるのにこういう失敗した戦争の映画は、アメリカ白人の神経を逆なでするからあまり作られていないのである。だいたい、そんな映画を作ってもアメリカ本国でヒットするわけがない。(苦笑)

 

というわけで、この記事では映画「ミッドウェイ」の感想を書いたけど、この映画に点数をつけるなら100点満点で50点以下の40点くらい。やはり、ローランド・エメリッヒ監督らしく戦闘シーンはCGを多用してまあまあ迫力があったが、シナリオは予想した通りアメリカ白人軍人たちの大活躍というシナリオだった。エメリッヒ監督はドイツ人なのに、どうしてアメリカ白人を喜ばせる戦争映画を作ったのかというのが疑問に思える。(苦笑)