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ドイツでは鉄道模型が老若男女に大人気!

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ドイツ人はクラシック音楽、ゲーテ文学よりも鉄道模型の話が好き

 

ドイツ人と会話、交流をする際にどんな話題が人気があるのか?他のブログでも書いたように、実はいうとクラシック音楽、ゲーテなどの古典の文学の話題は実はいうとあまり人気がない。でも、日本の旅行会社は恐らく教育的な観点からなのか、日本人に行って欲しい観光地としてクラシック音楽、ゲーテ文学などを中心にドイツ観光情報を載せているけど。(苦笑)

一方で日本人にとっては意外なことに、ドイツ人の老若男女にとても人気があるのは鉄道模型である。日本の場合は家が小さいので鉄道模型というとNゲージ(線路の幅が9ミリ)が一番人気があるが、ドイツの場合は家が大きいのでHOゲージ(線路の幅が1.6センチ)の鉄道模型が一番人気がある。メルクリンなどのドイツの老舗で大手の鉄道模型会社は日本でもとても有名である。

2009年の6月から仙台の東北大学で研究者として活動しているWというドイツ人の友達も、大のHOゲージの鉄道模型マニアである。彼の本業はアメリカのテキサス州の私立大学の教授であり、毎年6月から8月までは東北大学で研究活動をしているのだった。確か、2009年の10月に彼が鉄道模型に関する話を始めた。
「T(私)、君は鉄道模型には興味があるか? 俺はこの前、鉄道模型を売っている店を見つけたのだが、俺の弟が日本の新幹線のHOゲージの鉄道模型が欲しいと言っているんだ。よかったら、一緒に来て、店員に質問するのを手伝ってくれないか」
と言ったのだった。鉄道模型を知っているも何も、僕も高校生までは大の鉄道模型マニアであり、彼が見つけたという模型店は僕の家の近くなので、ここの店主のおじさんはよく知っていたのだった。だから、2人で自転車で模型屋に行くことにした。

模型屋に行く途中でWは、
「ドイツではHOゲージの方が人気があるんだ。日本は家が小さいからNゲージの方が主流のようだけど。ドイツでは鉄道模型というと、HOゲージのことを指すことが多いんだよ。HOゲージの、大きなレイアウトを持っている人もいるんだ」
と言った。僕が若い頃に鉄道模型を買っていた時は、Nゲージが当然だったので、HOゲージのレイアウトが作れるドイツの家庭事情が、本当にうらやましく思えたのだった。


模型屋に着くと、早速、店主のおじさんに、
「HOゲージの新幹線のセットはありますか?」
と聞いた。おじさんは、
「日本では住宅事情からNが主流なので、HOは少ししか置いてないね。メーカーのカタログもないよ。HOはものすごく高価だから、買う人も少ないからね。つまり、ヨーロッパに比べると、日本ではHOの市場が小さいんだよ」
と答えたのだった。Wは、
「やっぱりそうなのか」
と言ってガッカリしていた。

Wも少しは日本語がわかるのだが、詳しいやりとりは出来ないので僕にドイツ語で、
「でも、新幹線のような人気のある車両が、メーカーから発売されていないのはちょっと不思議と思う。どうしてなのか、その理由を聞いてみてくれないか?」
と言ったので、それをおじさんに聞いてみた。
「やはり、それは、需要がないからですね。HOはモーター車一両が5万円ほどするので、Nのように大量生産していないんですよ。2年ほど前にメーカーから新発売されたけど、今は、どこの模型店に在庫があるかわからないですね。メーカーに直接注文して取り寄せるのが確実ですね」
とおじさんは言って、メーカーの電話番号とサイトのアドレスを教えてくれた。

さらに、
「仙台市内には他にも鉄道模型を扱っているお店がありますから、そちらに行ってみてはどうでしょうか?」
と言って、他の模型店も紹介してくれた。その模型店は僕が通った中学校のすぐそばにあり、中学生時代によく通った店だった。それでその店にも行ってみることにした。


そこの別の模型店のおじさんとは、中学生時代はよく話をして仲良くしていた。だから、店に入っておじさんの顔を見ると本当に懐かしく思えた。先に行った模型店のおじさんを見た時もちょっと懐かしく思えたが、家の近所なので、何回か顔を見たことはあった。だが、ここのおじさんには10年以上会ったことがなかった。だから、おじさんに、
「あの、僕は高校生の頃まではよく来ていて、ここでよく鉄道模型とプラモを買ったのですが、覚えていますか?」
と質問した。
「そうですか、それはありがとうございます。いや、申し訳ないですが、覚えていません」
というのがおじさんの答だった。ちょっとがっかりした。

それで、ここの店でも同じような質問をしたが、やはり、答は先の模型店と同じようなもので、HOゲージの新幹線は置いてなかった。そもそも、鉄道模型のHOゲージをやっている日本人なんて、ほとんど聞いたことがない。ここの店のショーウィンドウに並べてあるHOの車両セットの値段を見たが、あるJRの在来線の6両編成セットが、20万円ほどもするという、とてつもなく高い値段だった。ドイツ人のWも、
[Verrueckt](いかれてる)
と言っていた。
「今の不況時(当時は民主党政権が発足した頃)に、誰がこんなものを買うのだろうか?」
と本当に疑問に思ったのだった。(苦笑)

 

高価な鉄道模型は、ドイツ人にとって家庭のステイタスシンボル

 

その後、当時は東北大学法学部の准教授をしていたSともHOゲージについて話したが、「子供たちがある程度大きくなったら、HOゲージの車両を買ってレイアウトを作って、家族みんなで遊びたい」と言っていた。妻のMもその話を聞いて、「そうね、鉄道模型が欲しいわね」と言ってニコニコ微笑んでいた。

1999年にシュツットガルト近郊のH家でホームステイをした時にも、かなり大きなゲージの鉄道模型(恐らくOゲージ?)の鉄道模型でH家の家族と一緒に遊んだことがある。金髪で青い瞳をした21歳の長女のWが、鉄道模型のパワーパックを操作して鉄道模型で遊ぶ光景は日本人には異様に思えたけど、ドイツではごく当たり前の光景のようだ。長男のJの恋人のCと鉄道模型の話をした時も、「私のおじさんの家にもNゲージの大きなレイアウトがあって、私もそれでよく遊ぶの。鉄道模型はとても面白いわ」と彼女は言っていた。

どうやら、ドイツにおいては鉄道模型のNゲージ、HOゲージのレイアウトが家にあるということは、家族の経済的な成功を示すステータスシンボルのようなものらしい。趣味にそれだけの大金を投入できるということを意味するから。


ドイツにおける鉄道模型の普及は女性解放が進んでいる証拠

 

「日本では女性は鉄道模型に興味がないですよ。僕は中学校の時に鉄道模型クラブにいて、学校の文化祭でNゲージのレイアウトを作って列車を走らせましたけど、女生徒は誰も見に来ませんでしたから。見に来たのは男子生徒だけです」
と僕が言ったら奥さんは笑いながら、
「それは日本では女性が解放されてない証拠ですね。あなたの話を聞いた限りでは、『女の子は音楽、映画、お人形遊びとか女の子らしい遊びをしなさい』というのが日本の社会にはあって、男の遊びを女性はするべきではないという風潮が日本にはあるんだと思います。ドイツの女性は解放されているから、男の遊びもどんどんとやりますよ。あなたも知っていると思うけど、ドイツのサッカー、テニス、スキーなどの女子スポーツチームは世界でもトップクラスの強さですからね」
と言っていた。

確かに、ドイツの女子スポーツチームはものすごく強くて、2011年に女子サッカーワールドカップがドイツで開かれた時に、「なでしこジャパン」が丸山桂里奈のゴールで1-0でドイツに勝った時には、「優勝候補のドイツがホームで負けるという、あり得ない悲劇が起こった」と報道されて、ドイツでも大騒ぎになった。あと、ドイツの女性は既に20年前から、日本でいうと「男の職場」というような職場で仕事をしている。電車、路面電車、大型バス、タクシーの運転手、長距離特急電車の車掌、空港、大都市の駅を警備する警官などの仕事を美しくてスタイルの良い若い女性が行っている。今では日本でもこのような職場で若い女性が働いているが、20年ほど前にドイツに行った時には、若い女性が男の職場で働いているのを見てびっくりしたものだった。