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ドイツのポップ音楽にはどういう歌があるのか?カラオケでも歌えるドイツのポップ音楽とは?

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僕はあまり音楽に詳しくはないですが、日本人の友達、仕事の同僚などから「ドイツのクラシック以外のポップ音楽について教えて欲しい」などと言われてるので、それについてブログに書こうと思います。

 

 

 

ドイツで有名な音楽といえばクラシック音楽だけど、それ以外にもドイツの老若男女に人気があるポップ音楽がある。実はいうとドイツ人、特に若者のドイツ人はクラシック音楽については話すことは少なくて、ポップ音楽について話すことの方が圧倒的に多い。これは、やはり、日本人の若者が日本の歌舞伎、落語などの伝統芸能には興味がなくて、流行しているポップ音楽について話すことが多いのと同じだろう。

 

まず、ドイツのポップ音楽でよく知られているのは[Dschinghis Khan](ジンギスカン)が歌う「ジンギスカン」である。「ジ、ジ、ジンギスカーン・・・」という歌である。この歌は、1979年に「ジンギスカン」というアルバムのレコードがリリースされてから長い間ヒットしたので、40歳以上の日本人なら知っている人は多いだろう。日本でも多くの歌手とバンドがカバーしていて、川崎麻也、米米クラブ、SMAPなどの有名なアーティストがコンサートでカバーして歌っていて、最近ではBerryz工房がこの曲のカバーをCDに収録している。また、高校野球の応援ソングとして演奏されることもある。

 

ジンギスカンの歌でそれ以外に有名なのは、「めざせモスクワ」という、1979年にリリースされたアルバム「ジンギスカン」に収録されていた曲である。日本ではネットユーザーの間で、「もすかう」という空耳音楽としてよく知られている。空耳「もすこう」の歌詞はネットで検索すればすぐにわかるし、YOUTUBEなどの動画サイトで「もすこう」で検索すれば面白い動画も見ることが出来るので、ここではここでは説明は割愛する。この歌は1980年にモスクワオリンピックが開かれるということで、西ドイツ(当時)のバンドだったジンギスカンが歌ったのだが、残念なことに西ドイツは日本と同じように、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議するために、アメリカの命令でモスクワオリンピックをボイコットすることになったので、この歌は意味がなくなってしまった。



次に紹介するのはNENA(ネーナ)の歌う [99 Luftballons] (ロックバルーンは99)という歌。この歌は1983年末にドイツでリリースされて、すぐに全世界でヒットしてアメリカで音楽チャートのトップを数週間維持して、日本でも1984年4月から数週間オリコン洋楽チャートで1位を維持した。洋楽といえば米英のポップ音楽が全世界で大ヒットするのが当たり前という中で、「ジンギスカン」と同じようにドイツのポップ音楽が全世界で大ヒットしたごく稀な例である。歌詞と動画については Youtubeなどで[99 Luftballons] 、「ロックバルーンは99」で検索すればわかるので割愛する。

 

最後に紹介するのは、西ドイツで1977年にデビューした「ロマネスク」という女性グループ。西ドイツの3人の女性グループで、[Hello, Mr. Monkey](ハロー・ミスター・モンキー)などの有名な曲はドイツよりも日本で大ヒットした。アラベスクのウィキペディアの説明には、こういうとても興味深いことが書いてある。

 

アラベスク (Arabesque) は、1977年にデビューし、1984年頃まで活動した西ドイツ(当時)の音楽プロジェクトである。

 

竹の子族などの支持もあり、80年代前期の日本における洋楽の人気の牽引車となり、日本発の人気は韓国・中国語圏などアジアにまで広がった。また、当時のソ連や中南米でも成功を収めたが、一方、本国西ドイツでは「哀愁のマリゴット」(チャート8位)しかヒットしなかった。

ja.wikipedia.org

 

「ジンギスカン」、「ネーナ」、「ロマネスク」というドイツを代表するアーティストで共通している非常に興味深い点は、彼らはとても日本市場での売り上げを意識しており、大ヒットしたアルバムの中では日本に関する歌を歌っていることである。「ジンギスカン」は[Samurai](サムライ)という歌を、ネーナは[Tokyo](トーキョー)という歌を歌っている。ロマネスクに至っては若者向けポップ、ロック音楽の本場であるアメリカ、イギリスなどではあまりヒットせず、日本でヒットしたことをキッカケとしてアジア市場で大ヒットした。洋楽の本場であるアメリカのマイケル・ジャクソン、マドンナなどは80年代から90年代に全世界で大ヒットした洋楽の歌手だが、日本に関する歌は歌ってない。

 

これにはやはり、1980年代というとまだ東西冷戦時代であり、日本と西ドイツは似たような歴史を戦後歩んだこと、ジンギスカン、ネーナ、ロマネスクのような東西冷戦の中で若者時代を過ごしたドイツ人にとっては、似たような歴史を歩んだ日本に対して特別な思いがあったこと、それにドイツの音楽プロデューサーが「米英ではドイツの音楽はあまりヒットしないだろうから、それ以外で音楽がヒットして金が儲かりそうな市場といったら日本だろう」と考えたのだろう。さらに、80年代というとニュルンベルク裁判で終身刑の判決を受けたナチスドイツ副総統のルドルフ・ヘスが、まだベルリンのシュパンダウ監獄で生きていて、他にもまだナチスドイツの大物戦犯が生きていたので、そのような時代背景があったのかもしれない。これは、僕が1997年にドイツの軍事博物館、ヒトラーの山荘があったベルヒテスガーデンなどに行った時に、年輩のドイツ人たちから大歓迎されたことを思い出させる。



「ジンギスカン」の「ジンギスカン」と「めざせモスクワ」、「ネーナ」の「ロックバルーンは99」の3曲は、大体のカラオケ店では洋楽分野の中に収録されているので歌うことが出来る。この歌を歌詞を見ないで歌えるようになれば、あなたのドイツ語力はかなり上達したといえる。ビートルズ、ローリング・ストーンズの歌などを、歌詞カードを見ないで歌える人は英語が流暢にしゃべれる人が多いのと全く同じだ。僕の友達のドイツ人のWはたまに日本人と一緒にカラオケに行く時に、日本の歌はほとんど知らないから、洋楽の中でドイツ語の歌であるジンギスカンとネーナの歌を歌うと笑って言っていた。しかし、日本も国際化しているといっても、流石にドイツ人と日本人の洋楽マニアしか知らないような、ドイツのポップ音楽を日本のカラオケ店で収録曲の中に入れるわけにはいけないので、この辺の対応についてはまだまだ問題が多そうである。

 

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写真はカラオケで歌う若い女性。残念ながら、まだ日本のカラオケで歌えるドイツのポップ音楽の歌は少ない。僕のドイツ人の友達もそのことを嘆いていた。