題名のとおりドイツの学校事情について、僕が知る限りのことを書きます。ちょっと長文ですが、興味のある人は最後まで読んでみてください。日本の学校には、校内暴力、学級崩壊、いじめなどの諸問題がありますが、ドイツの学校ではそのような諸問題がそんなに深刻ではないと言われてています。その理由は、学校制度が日本とはかなり違うからです。
ドイツのほとんどの学校は入学試験はなくて卒業試験が難しいので、日本の学校生活とはかなり違う勉強方法をする。入学したのは底辺の高校でも、卒業する時はトップクラスの高校ということがある。また、20歳を越えてから高校を卒業する生徒もいる。
ドイツの学校制度というのは、僕が知る限りでは、グルンドシューレ(小学校)、ギムナジウム(普通科の中学と高校。ドイツでは中学、高校一貫教育)に大きく分けられる。ギムナジウム以外にも、レアルシューレ(実業学校)、ハウプトシューレ(成績の悪い生徒が通う学校)がある。ハウプトシューレに通うことになると、大学進学はまず不可能になる。
だが、ドイツは入学は簡単で卒業試験が難しいから、ハウプトシューレに通っていても、成績がいいとギムナジウムに編入されたり、その逆ということもある。また、実業学校のレアルシューレに一度入学しても、
「やはり、大学進学を目指すギムナジウムの方が自分には向いていると思う」
などと学校に申請すると、ギムナジウムに編入されることもある。日本だと入学試験が難しいので、高校以上ではその高校が自分に向いていないと思っても、簡単に他の高校に転校することなど出来ないが、卒業試験が難しいドイツではこのような利点がある。
だから、日本の金八先生のように、学校に来ない不良生徒の家を担任の先生が家庭訪問して、
「3年B組の生徒みんなで頑張ろう!人生を捨てるな!みんなと一緒に卒業しよう!」
などと言って、涙ながらに生徒に訴える先生はあまりもいないようだ。なぜなら、学校に来るのも来ないのもその生徒の“自由”であり、そして、同級生と一緒に卒業するか、自分だけ落第して留年するかというのも、その生徒の“自由”という考えらしい。日本のような村社会と違い、ドイツでは高校は18才で卒業しないと世間体が悪いということはないから、22才くらいでやっと高校卒業試験に合格する人もかなりいる。だから、20才でまだ高校卒業試験に合格してなくても全く焦ったりしてない。
ヨーロッパの先生だったら、無断欠席が続いている不良生徒がいても、
「A君はもう15才だろう?学校に来るか来ないかは本人の自由だよ。先生はそこまで責任は持てない。単位が足りなくて留年しても、それはA君が勝手に決めたことだから。まあ、ギムナジウムを中退したとしても、他の進路もあるから、自分でよくよく考えるんだね」
などと突き放す先生が多いらしい。親の方も、
「自分のペースで勉強すればいいだろ。それに、勉強して大学とか上の学校に行かなくても、就職して生活できる道はいくらでもある」
という感じで応対して、子供を追い詰めることはしない。
不良生徒は学校に来なくなる生徒が多いので、高校で何年も留年することになる。それで、不良生徒が学校に来なくなっても先生も親も何も注意しないらしい。15歳を過ぎたら生徒がどう生きるかは自由放任しているようだ。
僕が思うに、結局、日本の学校というのは、落ちこぼれ生徒を作らないためにあるのだと思う。勉強がいやになった不良生徒が落ちこぼれるか落ちこぼれないのかは、その生徒の自由意志なのだというのがヨーロッパ的な発想らしい。もちろん、日本では、学業からドロップアウトした少年たちに学校以外の行き場所がない、入学試験が難しいので自分に合っていない学校、大学の学部に入ってしまっても簡単に転校、学部変更が出来ないという制度にも大問題はある。
しかし、学校に来ては先生と他の生徒に暴力を振るったり、授業の妨害をしたり、弱い者いじめをするような生徒などは学校に来ても迷惑なだけだから、
「そんなことをするのなら学校に来なくてもいい。他の生徒たちからも、“勉強に集中出来ない”と苦情が出ているから。それとも、不良生徒だけが通う学校(少年院みたいな学校)があるから、そこに転校してくれないか」
などという通達を、公立学校の方から生徒とその親に出してもいいのではないか?僕が知る限りではドイツではそのようにしているという。
ドイツを始めとしてほとんどのヨーロッパの学校には大学入学試験がないので、ドイツの本屋のどこにも大学入試用の学習参考書は売られてない。もちろん、学習塾、予備校も全くない。
あと、ドイツ、ポーランドなどの大きな本屋を何軒か見たが、日本でよく売られているような中学生、高校生向けの大学入学試験のためのマニュアルとなる学習参考書、「〇〇大学の過去の入試問題集」、「有名進学塾の先生たちが一押しの参考書」などという大学入試のための参考書は見たことがない。それに、大学受験用の予備校、学習塾というのも見たことがない。まあ、向こうの大学は入学ではなくて卒業がとても難しかしくて、在学中に学生がどれだけ論文を書いたか、どれだけ企業で実習をしたかで卒業できるかが決まるから、日本の大学生とはかなり学生生活が違う。だから、日本のような大学入学試験が目的の予備校を作って、学習参考書を出版してもほとんど意味がないのだろう。
PS:このドイツの学校教育に関する記事は、僕が知っている限りのことを書いただけです。実際にヨーロッパに長年住んだことがあり、ヨーロッパの公立学校に通ったことがある人は、全く違う経験をされているかもしれません。もしそういう人がいたら、遠慮せずに意見を書いてください。(苦笑)
写真上はドイツの大学町で有名なハイデルベルクに建つお城で、写真下はクラスでの授業のイメージ。ドイツの学校の授業は日本とはかなり変わっていて、先生と生徒がよく授業のテーマについて討論をする。日本のように一方的に先生がしゃべって授業を進めて、最後に黒板にまとめを書いて終わりではない。 ドイツでは日本のように一方的に授業を進めて終わる先生は「悪い先生」になり、生徒と親たちから不満が出るという。
最後に、僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。ドイツに滞在した時とドイツ人と交流した時の体験談以外にも、ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対して色々と興味深いブログ記事を書いているので、時間があったら他の記事も読んでみてください。ブログ記事の感想のコメントを書いてもらうと嬉しいです。ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いてますし、これからもそういう記事を書いていきます。