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戦争映画に出てくる戦車について

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実際にドイツの戦車博物館に行って残っている本物のティガー、パンター戦車の現状を知ると、本物のティガー、パンター戦車を戦争映画に登場させるのは無理な理由がわかった。

 

軍事マニア、映画マニアの人たちの中には、

「第二次世界大戦を描いた戦争映画にはドイツ軍の戦車が出てきて、連合軍の戦車と戦車戦をするシーンがあるけど、アメリカ軍のM4シャーマン戦車とソ連軍のT34-85戦車は本物がたくさん出てくるのに、どうして、ドイツ軍のティガー、パンター戦車などの本物は出てこないのだろうか?本物のドイツ軍のティガーⅠ型戦車と、アメリカ軍のM4シャーマン戦車が戦うシーンを戦争映画で見てみたい」

などと思っている人が多いだろう。実は言うと僕も20歳頃までは戦争映画を見るとそういうことを考えていた。写真上はムンスター戦車博物館に展示されている本物のティガーⅠ型重戦車。

 

でも、そういう考えは1997年9月にドイツのムンスター戦車博物館を訪ねて、元ドイツ軍の戦車兵だったおじいさんと話をした時に、「本物のティガー、パンターを戦争映画に登場させるのは無理なんだ」ということがわかった。

 

ムンスター戦車博物館のガイドブックに書いてあったことと、元ドイツ軍戦車兵のおじいさんが言ったことからわかったのは、ティガーⅠ型は全世界でも動く状態のものは3台くらいしかなく、ケーニクスティガーは常に動くものはゼロに近い。パンターでも動く状態のものは10台以下であり、こんなに数が少ないのではとても戦争映画に登場させて難しい動きを再現するのは無理である。また、ムンスター戦車博物館で戦車のメカニズムに詳しい元ドイツ軍戦車兵のおじいさんは、

「ティガーⅠ型もパンターも走行可能なのだが、エンジン、ギアなどがオリジナルではないんだ。オリジナルのものはもうこの世に存在しないから。代わりにレオパルド戦車とかの他の戦車のエンジンで代用してるんだ。だから、走行は可能だけど、1年に1回オクトバーフェストの時に観客を招いて数分間走行するのが限界で、長時間の間、複雑な走行をするのは無理なんだ」

という事実を教えてくれた。

 

戦車博物館に展示されている本物のティガー、パンター戦車は走行可能だが、エンジン、ギアなどの部品がオリジナルのものではないので、大戦の時のような迅速で複雑な動きをするのは無理なのである。

 

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上の動画は、2017年9月のムンスター戦車博物館の[Stahl auf der Heide](“草原の上の鋼鉄“という意味。ムンスター戦車博物館がリューネブルガー草原にあるから、そういう名前の博物館のお祭りになっている)の時のパンター中戦車の走行の様子。動画を見ればわかるように、20キロくらいで走行するのが限度であり、現役の時のような複雑で迅速な走行をするのは不可能である。これ以上、難しい動きを博物館の戦車に要求しても、部品不足などの原因でエンストを起こして故障するのは目に見えている。

 

ブラッド・ピットが出演していた映画「フューリー」では、イギリスのボービントン戦車博物館に展示されてるティガーⅠ型重戦車が登場して、ピットが隊長を務めるM4シャーマンの米軍戦車部隊と戦車戦を演じていたが、やはり細かいアクションシーンではCGの戦車を使って代用しており、本物のティガーは基本的な動きしかしてない。それに、本物のティガー、パンターを使って映画撮影をすることは修理不能になった場合に、貸し出しをした博物館側にとっては取り返しのつかない損失になるので、はっきり言うと無理なのである。

 

 

結局、ドイツ軍のケーニクスティガー重戦車を大量に登場させるには、映画「バルジ大作戦」みたいに現役の戦車にケーニクスティガーの代役を務めてもらうしかない。現役の戦車なら大量に調達できるし、故障しても修理できるからである。

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写真上は「バルジ大作戦」の時に、ナチスドイツ軍自慢のケーニクスティガー重戦車として登場した米軍のM47パットン戦車の大群だが、このM47はスペイン陸軍が所有していた戦車を借りたという。映画の撮影もスペインで行われている。ティガーⅠ型、ケーニクスティガーを大量に戦争映画に登場させるとするなら、このように現役の戦車を大量に使用するしか方法がない。現役の戦車なら複雑で迅速な動きをするのも可能であり、仮に撮影中に故障したとしても修理部品はたくさんあるので、修理が可能だからである。他の映画に目を向けると「遠すぎた橋」では西ドイツ軍のレオパルド戦車が、ドイツ軍のパンター戦車として登場している。旧ソ連の戦争映画の場合はT34-85戦車がドイツ軍戦車として登場するのは、全く同じような理由からである。