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ヨーロッパスーパーリーグ構想はなぜダメなのか?

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ヨーロッパ・スーパーリーグの基本合意は 撤回されたが、ヨーロッパではチャンピオンズリーグ常連のビッグクラブだけで新しいリーグを作ろうという構想は常にある。

 

ヨーロッパスーパーリーグが始まることで基本合意をしたと、レアル・マドリーのペレス会長が発表したが、今日(4月23日)までにイングランドのチームなどの脱退を受けて、この合意は白紙に戻された。だが、ヨーロッパでは常に毎年チャンピオンズリーグに参加しているような強いチームだけで、新しい特別なリーグを作ろうという構想がある。写真上はスーパーリーグ構想を強く支持している、レアル・マドリーのペレス会長。

 

そもそも、ヨーロッパのチャンピオンズリーグで同じチームばかりが上位に来るようになったのは1990年代後半からであり、この頃から「ヨーロッパは一つ」というEUの理念もあり、「チャンピオンズリーグ常連のビッグクラブだけで、ヨーロッパで新しいリーグを作ろう。ヨーロッパは一つで国境がないのが理想なのだから、各国リーグに分かれる必要はなく、ヨーロッパを一つの国と考えて、その中からビッグクラブだけで一つのリーグを作るべきだ」という考えが生まれた。

 

これには当然ながら1995年に発表された「ボスマン判決」も大きく影響しており、ボスマン判決の結果を受けてヨーロッパの各国リーグでは、EU圏内の選手なら何人でも出場選手登録をしてもよくなった。わかりやすい例を挙げると、イングランドのアーセナルは2006年にチャンピオンズリーグ決勝まで進んだ時は、主力選手のほとんどが外国人であり、スペインのバルセロナもオランダ人選手がスタメンに6人もいたことがあった。「銀河系軍団」と言われたスペインのレアル・マドリーにも、ジダン、ベッカム、オーウェン、ロベルト・カルロス、ロナウド(ブラジル)のような外国人のスター選手ばかりになった時があった。このような状況なので、「もはやヨーロッパのサッカーには国境はないようなものなので、各国リーグという国境を取り払ってビッグクラブだけで一つのリーグを作ってもいいではないか」という考えが生まれたのは当然のことである。

 

UEFAとFIFAを締め出して新しく「スーパーリーグ」をヨーロッパに作ろうとしたので、今回のスーパーリーグ合意は挫折をした。

しかし、この「スーパーリーグ構想」が実現されると大いに困るのが、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)とFIFA(世界サッカー連盟)である。スーパーリーグが実現になると、UEFAからビッグクラブが全部脱退して新しいリーグを作ることになり、FIFAもヨーロッパのビッグクラブとビッグクラブがある地域だけが儲かって、その他の地域のサッカーが衰退するので、何が何でもスーパーリーグは止めさせないといけないのである。

 

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UEFAとあまり話し合いをせずにアメリカ資本を導入して、NBA、NFLのようなアメリカ式のリーグをヨーロッパに作ろうとしたので、アメリカ式が嫌いなヨーロッパのサッカーファンは猛反対をした。

UEFA、FIFAがまずスーパーリーグの合意に反対する声明を出して、またヨーロッパの各国首脳もスーパーリーグに反対して、さらにイングランドではビッグクラブのサポーターまでもが反対したので、今回はスーパーリーグ合意は挫折した。写真上はヨーロッパのビッグクラブの一つのバイエルン・ミュンヘンの本拠地のアリアンツ・アレーナで、バイエルンにも当然ながらスーパーリーグへの参加の打診があったが、バイエルンは「自国のブンデスリーガが大事だから」と言って、スーパーリーグには参加しないという声明を早くから出した。同様に同じブンデスリーガのRB・ライプツイッヒとボルシア・ドルトムントも、参加しない声明を出した。

今回のスーパーリーグ構想が、ヨーロッパのサッカークラブとサッカーファンにとって何が受け入れられなかったのかというと、UEFAをスーパーリーグの経営から締めだして、アメリカ、中国、アラブのオイルマネーなどから資金を得てヨーロッパでスーパーリーグを作ろうとしたことである。特にヨーロッパが大嫌いなアメリカ資本のお金でアメリカ式のスーパーリーグをヨーロッパに作ろうとしたことであり、簡単に言えば、ヨーロッパにアメリカのNBA(バスケットボールリーグ)かNFL(アメリカンフットボールリーグ)のようなリーグを作ろうとしたことである。NBAとNFLには世界中からスター選手が集まってアメリカ全土で試合を行っているのだから、ヨーロッパでも同じことが出来るとアメリカの資本家は考えたようである。でも、ヨーロッパ人というのは基本的にアメリカ的な考えは嫌いなので、アメリカ資本のリーグにヨーロッパのビッグクラブが参加するというのが、ヨーロッパ人には受け入れられなかったのである。

 

ja.wikipedia.org

 

しかし、EU(ヨーロッパ連合)があり、「ヨーロッパは一つの共同体だ」という考えがヨーロッパ人にはあるので、ビッグクラブの一部の経営者の中には常にスーパーリーグ構想を支持する人がいる。この後もスーパーリーグの話が出ることはあるだろう。

 

上は「スーパーリーグ」のウィキペディアでの説明のリンクであるが、今回はスーパーリーグは実現しなかったが、この構想は常にヨーロッパのビッグクラブの経営陣にはある。これは20年ほど前からチャンピオンズリーグ優勝のタイトルの方が国内リーグ優勝というタイトルよりも重要になり、また、チャンピオンズリーグの本戦、さらにその上の決勝トーナメントまで進むと、莫大な金がビッグクラブに入るようになったからである。だから、「国内リーグよりもチャンピオンズリーグの方が重要なら、ビッグクラブだけが集まっていつもチャンピオンズリーグのように、ビッグクラブだけのリーグ戦をやればいいではないか。それにヨーロッパは一つの国という理念にも合っている」という構想が出るのは当然のことだろう。でも、問題なのはビッグクラブが抜けた後、中小クラブだけになった各国のリーグ戦が衰退するという心配がある。ビッグクラブと中小クラブが試合をすることで、中小クラブには放映権、広告、観客などの莫大な収入が入るのであり、ビッグクラブだけで新しいリーグを作って富を独占してしまうと、残された中小クラブは経営が成り立たなくなる恐れがある。また、ヨーロッパのビッグクラブだけで試合をするようになると、チャンピオンズリーグは廃止されて、さらにいつもサッカー・ワールドカップかユーロ(ヨーロッパ選手権)を開催しているようになるので、ワールドカップもユーロもあまり盛り上がらなくなってしまう恐れがある。

 

でも、EU(ヨーロッパ連合)と「ヨーロッパは一つの共同体」という概念がある限り、スーパーリーグ構想は常に存在するだろう。でも、日本人選手はスーパーリーグに参加できるようなハイレベルな選手が今はいないから、日本人にとってはあまり関係ないことだろう。(苦笑)