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サッカーのヨーロッパリーグ戦ではなぜ一部のビッグクラブだけが強いのか?再アップ記事

これは、ドイツのブンデスリーガで最強のビッグクラブのバイエルンミュンヘンアリアンツ・アレーナ。ドイツブンデスリーガでは2013年から、バイエルンミュンヘンが10年連続で優勝という状況になっている。

 

 

今のヨーロッパの各国リーグ戦では一部のビッグクラブしか優勝争いが出来ないという原因は、1995年に欧州司法裁判所が出したボスマン判決にある。この判決の後はEU圏内の選手は、EU内のどこの国のクラブに所属するのも自由ということになった。

 

 

今は5月なので、ヨーロッパでは各国のリーグ戦が終盤に入っている。セリエAではナポリが33年ぶりの優勝を果たして、これはマラドーナ、日本の柏でもプレイをしたカレッカなどがいた時以来の快挙である。

 

それで、一方で話はチャンピオンズリーグ(CL)の方に移るが、CLはここ20年くらいはグループリーグを突破して決勝トーナメント(決勝T)に勝ちあがってくるビッグクラブがだいたい同じ20クラブチームに固定されていて、ドイツのバイエルン、スペインのバルセロナレアル・マドリー、イタリアのACミランインテルミランユベントスイングランドマンU、マンC、チェルシーリバプール、フランスのパリ・サンジェルマンなどはいつもCLの決勝Tに確実に勝ち上がってくる。

 

はっきりいうと、Jリーグが始まった頃から世界のサッカーも見ている僕が思うには、この状況は全く面白くない。恐らく明石家さんまのような、70年代からチャンピオンズリーグの前身であるチャンピオンズカップを見ている人たちのような濃いサッカーファンにとっては、もっと面白くないだろう。実は言うとチャンピオンズカップ時代には日本人の奥寺がケルンにいた時に、1978年4月に行われたチャンピオンズカップ準決勝に奥寺は出場しているのである。その前の準々決勝では奥寺はゴールまで決めている。この頃は各国の優勝チームしか出れなかったから、ドイツからはバイエルンは出場していない。その前年の1977年~78年シーズンは、何とバイエルンの順位は12位である。

 

それでは、1970年代80年代はビッグクラブというのは少数しかなかったのに、1990年代後半からはビッグクラブがなぜ急に増えたのかというと、そこには、1995年12月にEU司法裁判所で判決が出たボスマン判決というものがある。

 

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こちらの記事にボスマン判決の説明を詳しく書いてあるが、簡単に言うと次のようなことである。

 

ベルギー人のサッカー選手ボスマンはベルギーのチームとの契約が満了したので、次はフランスのチームと契約をしようとした。しかし、ベルギーのチームは移籍金が欲しかったのでボスマンの所有権を主張して、ボスマンの移籍を妨害した。また、ボスマンがベルギー人なので外国人枠という障害も持ち出した。そこでボスマンは欧州司法裁判所に「私はベルギー人だが、フランス語が完璧に話せるのに外国人枠扱いはおかしいではないか?私はフランス人選手と同じようにフランスのチームに移籍できるはずだ」と主張した。

 

欧州司法裁判所が1995年12月に出した判決は、ボスマンの全面的勝利だった。

 

こちらがウィキペディアに書いてあるその後の影響。

 

影響

ボスマン判決以降、クラブにとっては従来の移籍金によるビジネスを行うことは難しくなった。現在では、5年や6年という長期間の契約を結んで、残った契約を買い取ってもらう方法で実質的な移籍金を得ている。逆に選手側では、移籍のハードルを低くするために長期の契約を結ばない者もいる。

一方で、EU域内の選手保有が制限されなくなったことを受けて、EU内のビッグネームの選手をかき集めることも可能になり、選手の流動化、リーグのマネーゲーム化、国際化が急激に加速することになった。ただし、こうした強化策が可能なのはごく一部のクラブに限られている。

 

ここまで読めば、「だから、一部の資金力があるビッグクラブだけが強くなっているのか。その他の中堅クラブチームは、ビッグクラブには試合をする前から勝てないという雰囲気になってしまったのか」ということがわかると思う。極端にいうと、今はフランス代表がヨーロッパでは一番強いが、フランス代表のレギュラー選手11人をバイエルンミュンヘンに集めて、「ヨーロッパ最強のチーム」と名乗ってもOKということになる。ただし、バイエルンのサポーターは認めないと思うけど。(苦笑)

 

また、合わせて2021年3月頃にアメリカの大手企業数社が、「ヨーロッパのビッグクラブだけを集めてスーパーリーグを始めたい」と提案して、レアル・マドリーなどは同意をしたが、あくまでも地域密着にこだわるブンデスリーガバイエルンなどは猛反対をした。スーパーリーグ構想とはアメリカの野球メジャーリーグプロバスケットボールリーグなどは国籍枠がなくて、世界から優秀な選手だけを集めてチームを作っているので、アメリカの企業はヨーロッパでも同じようなサッカークラブのリーグ戦を始めるべきと提案したのである。だが、これはUEFAヨーロッパサッカー連盟)の猛反対で廃案になった。こちらが、それに関する記事。

 

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