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「マイフェアレディ」の日本語版は面白いのだろうか?

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ミュージカル「マイフェアレディ」に出演されていた神田沙也加さんが自殺してお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈りします。自殺をされた理由とかはよくわかりませんが、やはり2大スターの1人娘ということで、プレッシャーなどもかなり強かったのでしょう。

 

 

ミュージカル「マイフェアレディ」はロンドン下町で花売りをするイライザが、大学教授で言語学が専門のヒギンズから「お前の下町訛りでは、どこに行ってもお里が知れてしまうぞ」とバカにされて、彼女が教授から正しい英語を教えてもらうという話である。

 

 

 

それで、神田沙也加さんはミュージカル「マイフェアレディ」の主人公であるイライザ・ドゥーリットル役を演じていたけれど、このミュージカルはロンドンの下町娘であるイライザが、貴族の出身で高学歴で言語学教授のヘンリー・ヒギンズ大学教授に正しい英語の発音を習おうと弟子入りを志願して、住み込みで正しい英語の発音を習うようになり、そこから2人は恋に落ちて結婚するというお話である。

 

ロンドンの下町で父が掃除夫の貧乏な家に生まれたイライザは、下町で花売りをしている若い娘だったが、ある日、大学教授のヘンリー・ヒギンスから「お前のような下品な英語の発音では、世界中のどこに行っても卑しい身分の出身だとバレてしまう」とバカにされてしまう。それに腹を立ててヒギンス教授の家に「正しい英語の発音を教えてくれ」と頼みに行って、そこからヘンリーはイライザに正しい英語の発音を教えて社交界に貴族の娘としてデビューさせようと、猛特訓を開始するのである。もちろん、貴族の娘というのは嘘であって、社交界デビューの時はヒギンズ家の娘として偽ってデビューさせるというゲームのようなものだったのだが、2人は本当に恋に落ちて結婚をするのである。

 

 

僕が「マイフェアレディ」を知ったのは中学2年生の時に映画を見た時。でも、正しい英語の発音とイライザのロンドン下町訛りの発音の違いが、日本語吹き替えではほとんど伝わらないので、何が面白いのかわからなかった。

 

 

 

僕が「マイフェアレディ」を初めて知ったのは、確か中学校2年の時に深夜の映画劇場で、オードリー・ヘップバーンとレックス・ハリスンが主演の映画が放送されていたのを見た時だったと思う。この時は日本語吹き替え版だったのだが、見ていてわけがわからなかった。

 

理由は、この映画はイライザが下品なロンドンの下町英語をしゃべるのを、ヒギンス教授が正しい英語に直していくのだが、それが日本語吹き替えではほとんど伝わらないのである。例えば、下のように英文をヘンリーがイライザに読ませるシーンが有名である。

 

[The rain in Spain stays mainly in the plain.](スペインでは主に平野部に雨が降る)。これは正しい英語の発音では、「ザ レイン イン スペイン ステイズ メインリー イン ザ プレイン」なのだが、イライザのロンドン下町英語では「ザ ライン イン スパイン スタイズ マインリー イン ザ プライン」と発音してしまう。そこで、ヒギンズ教授は激怒して、「違う、違う!お前のその下町訛りの発音はなんとかならないのか?俺の見本の発音どおりにお前はできないじゃないか?お前には耳がないのか!」と怒鳴る。

 

 

日本語吹き替えの「マイフェアレディ」では、イライザは東北か北関東訛りのズーズー弁を話す設定になっていて、東京山手の標準語を話すヒギンズ教授が彼女に標準語の発音を教えるという話になっていた。

 

 

この正しい英語の発音とイライザが話すロンドン下町訛りの英語の発音の違いというのを、日本語吹き替えで表現するのにものすごく苦労したのだろう。日本語吹き替えの映画「マイフェアレディ」では、ヒギンズ教授は東京山手言葉の標準語を話していて、イライザは北関東か東北のズーズー弁を話すという設定になっていた。イライザは「スペインでは主に平野部に雨が降る」という文章を、「スペインでは主に平野部に雨が降るだ~」というふうにズーズー弁で話していて、それを聞いたヘンリーは「違う、違う!お前のその訛りはなんとかならないのか?なんで標準語の発音ができないのだ?!」と怒るというふうに変えられていた。

 

他の文章の発音練習でもヘンリーが標準語で、「ヘリフードとハートフードとハンプシャーでは、ハリケーンは滅多に吹きません」と標準語で見本を発音するのを、イライザはズーズー弁で「ヘリフードとハートフードとハンプシャーでは、ハリケーンは滅多に吹かねえだ~」と発音してしまう。ヘンリーは激怒して、「『吹かねえだ~』じゃなくて、『吹きません』だ。お前のその下品な訛りはいつになったら直るんだ!」と怒鳴る。このように、北関東か東北のズーズー弁をしゃべりイライザの訛りを、東京山手の標準語を話すヒギンズ教授が矯正するという設定に変えられていた。

 

 

だから、中学2年生で「マイフェアレディ」を見た時は、「東京山手の標準語が正しくて東北弁が間違ってるという、東北弁をバカにした映画なのか?何で名作映画なのかわからない」と不思議に思った。

 

 

だから、当時、中学校2年生で仙台に住んでいて、毎日、学校で友達と東北の仙台のいわゆる「ズーズー弁」で会話をしていた僕にとっては、この「マイフェアレディ」の吹き替えを見た時は、「なんだこの映画は?東北人をバカにしてる映画なのか?仙台弁を始めとする東北のズーズー弁でしゃべったら、日本中でバカにされるのか?そんなに東京山手の標準語は上品で立派な発音なのか?それに、仙台人だって公の場所で標準語でしゃべってくれと頼まれれば、標準語でしゃべることくらいできるぞ。この映画は意味がわからない」と思って、東北人をバカにしてる変な映画だというふうに誤解した。一緒に見ていた母はこの映画を封切りで見た後に何度か見たことがあるようで、「この映画は英語版で見ないとわからないから、日本語吹き替えだと意味がわからない」と言って笑っていた。

 

僕が「マイフェアレディ」が1964年のアカデミー賞主要部門受賞にふさわしい素晴らしい映画だとわかったのは、英語の勉強がある程度進んだ大学2年生の20歳を過ぎた後だった。それまでは、英語の正しい発音とイライザが話すロンドン下町訛りの違いがわからなかったので、この映画の良さが理解できなかった。まあ、それは仕方がなかだろう。

 

 

今日は映画「マイフェアレディ」は、日本語吹き替えにすると全く面白さが伝わらないという記事を書きました。でも、最近はイギリスでも英語の方言を見直す動きがあり、例えば、有名な元サッカー選手のベッカムは労働者階級のサッカーファンの仲間ということを強調するために、インタビューなどでもロンドン下町訛りの英語をしゃべっています。それ以外のイングランド代表の選手の中にも下町訛りで話す選手がいます。でも、それはイングランド代表選手の英語を通訳しないといけない通訳業の人たちにとっては、大変な災難のようです。(苦笑)