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プーチンにまんまと騙された世界

 

 

 

 

アイアン・スカイ」という映画があり、この映画は月の裏側に住むナチスドイツ第四帝国が地球を侵略するというSF映画である。だが、この映画は勝手に国連軍の中心となって戦って戦勝国気取りのアメリカ軍と政府を批判した映画であり、この映画ではロシア政府は危険な国とは描かれていない。

 

 

 

上のスチール写真は「アイアンスカイ」というフィンランド制作の映画のもので、2012年に公開されて、続編の「アイアンスカイ・第三帝国の逆襲」も2019年に公開された。この映画は月の裏側からナチスドイツ・第三帝国の生き残りが密かに帝国を作っており、彼らが地球に侵略してきてナチスドイツ・第四帝国を作そうとするというストーリーである。だが、この映画で厳しく批判されているのは第四帝国と先頭に立って戦う地球で一番強いアメリカ軍とアメリカ大統領である。ネタバレになるが戦争がアメリカを始めとする国連軍の勝利に終わった時に、「月には豊富な天然ガスがある」ということを知ったアメリカ女性大統領は、「天然ガスはみんなアメリカが頂く。なぜなら、第二次大戦と同じようにアメリカ軍が主力となって勝ったのだから」と国連で上から目線で発言をしたので、最後にアメリカ以外の国連加盟国は「またアメリカの正義のための戦争なのか?いい加減にしろ!」と怒鳴って、各国が入り乱れての乱闘となる。そして、激怒したアメリ国務長官が「宇宙にいる他国の宇宙船を攻撃しろ!」と命令したので、宇宙でも各国の宇宙船が入り乱れての終わりのない戦争になる。そして、地球上でも核ミサイルが飛び交って人類は滅んでしまうのである。

 

 

この映画はフィンランド制作で2012年に第一作が2019年に第二作が制作されたが、2作とも「アメリカの正義の戦争」を批判しており、この映画が封切られた時点ではロシアのプーチンは危険人物と見なされていない。ロシアの隣国のフィンランドですらプーチンの危険性を見抜けなかった。

 

 

この映画は2012年に第一作が、そして、2019年に第二作が封切られているが、両方の作品で厳しく批判されているのは、特にジョージ・W・ブッシュとトランプのアメリカ共和党政権時代に叫ばれた「アメリカのための正義」と「アメリカ・ファースト」というアメリカ政府の政策である。写真上がこの映画の主要な登場人物の女性アメリカ大統領。映画封切り時は共和党の女性大統領候補だった極右思想のサラ・ペイリンのそっくりさんである。つまり、ロシアはこの映画では完全に脇役であり、ロシア政府と軍は全く危険と思われて問題視されていなかった。この映画はフィンランド制作にもかかわらず、ストーリーで問題視されていたのはアメリカ政府と軍であり、今のウクライナ戦争でフィンランドは隣国のロシア軍の侵略に怯えていてNATO加入を表明しているが、この映画の2作目が制作された2019年の時点では、フィンランドはロシアのことをそれほど脅威とは感じていなかったのである。

 

この映画「アイアンスカイ」の制作者以外にも、日本でロシア情勢を詳しく研究している方々も、また同じようにプーチンのロシア軍がウクライナを攻撃することを予想できなかった。今テレビによく出演していてウクライナ戦争についてコメントをしているロシアの専門家たちも、「プーチンとロシア政府の態度に騙された。ロシアがウクライナに対して全面戦争を行うことを予想できなかった。最近はロシアと中国が急速に接近をしており、危険だとは思っていたがまさかウクライナに全面戦争を仕掛けるとは予想できなかった」とマスコミに記事を書いている。

 

 

日本と外国のロシア問題専門家もプーチンの率いるロシア軍がウクライナを攻撃することを予想できなかった。ウクライナ戦争以前はアメリカ対中国の対立の方が危険視されていて、世界はプーチンに騙されてしまった。

 

 

また、他の国際政治の専門家たちも、「ウクライナ戦争が始まる前は、重要なのはトランプ大統領後のアメリカのバイデン民主党政権がどう動くかであり、その動きが国際政治のカギだと思っていて、特にアメリカ対中国の対立ばかりに注目していた。ロシアがウクライナから2014年に強制的に併合したクリミアとウクライナ東部も問題だとは思っていたが、まさかロシアがウクライナと全面戦争を始めるとは予想できなかった。プーチン大統領とメドベージェフ首相の下でロシアはゆっくりではあるが、経済成長を遂げており、西ヨーロッパとアメリカとの関係も中国に比べると良好と思えたので、まさかウクライナを攻撃すると予想はできなかった」ということを述べている。

 

これは、ロシア語の重要文書が理解できるロシア問題専門家と国際政治専門家に限った話ではなくて、世界中の人たちみんながそうであろう。確かにアメリカ軍の情報部とCIAの一部の専門家はウクライナ戦争が始まる前に、「ロシア軍がウクライナ国境に集結しており、非常に危険である。ロシア政府は軍はウクライナ国境で演習をするだけだと発表しているが、ロシア軍がウクライナを攻撃する可能性がある」と警告をしていたが、アメリカ政府の情報は大げさなことが多いので、信用する人はマスコミ界にはあまりいなかった。つまり、平和に経済成長を遂げていたロシアとプーチンのロシア政府にまんまと世界中は騙されてしまったのだった。でも、プーチンウクライナ攻撃を命令する2月24日以前は、ロシアよりもむしろ人権問題が多い中国の北京で行われていた北京オリンピックの方に世界中のマスコミは注目しており、ロシア軍がウクライナを攻撃すると予想できた人はほとんどいなかった。