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秀逸なシーンが多かった戦争映画「二百三高地」(2)

二百三高地 の映画情報 - Yahoo!映画

今日もまた僕が日本映画の中で最も多く見た映画と思われる戦争映画「二百三高地」について、僕が知ってることを書きます。この映画は主役は第三軍司令官を演じる乃木希典と、第三軍指揮下の金沢第9師団、第7歩兵連隊中隊長の小賀中尉です。この映画では満州参謀総長児玉大将を演じた丹波哲朗が、日本アカデミー賞助演男優賞を受賞してます。

 

 

この映画のクライマックスである二百三高地と旅順要塞陥落のシーンは、中国の満州の12月という気温零度以下の時期なのだが、有名俳優の拘束が出来ないなどのスケジュールの都合から、ロケ地は伊豆大島三原山で真夏の8月に行われた。

 

 

この映画は乃木第三軍が二百三高地と旅順要塞というロシア軍が中国東北部満州に作った堅固な要塞を苦労して攻め落とす話だけど、旅順の戦いの戦闘シーンはまだCGなどのコンピューターのハイテク技術がなかった時代だから、伊豆大島三原山で真夏の8月に約1ヵ月の日程で行われた。CGがなかった時代だから、旅順要塞の堡塁のセットを三原山に組んで、突撃する日本兵が機関銃で次々と撃ち殺されるシーンが撮影された。第三軍の第1回総攻撃は1904年8月末に行われたから、その時の攻撃の撮影は問題なく行われたけど、クライマックスの二百三高地と旅順要塞が陥落するシーンは12月と1月という真冬だから、気温35度の真夏の三原山で撮影したのは地獄だったという。

 

 

ロケ地の三原山は気温が35度だが、映画の設定では外の気温は零度以下ということになってるので、出演者は冬の軍服、外套などの冬季用の服を着て演技をせねばならず、顔に汗が出てきたりなどすると、カメラを止めて服を全部脱いで外に用意してあった氷の入った小さなプールで水浴びをしながら撮影をしたという。

 

 

ロケ地の三原山は気温35度だけど、映画の戦いが行われてる旅順の気温は真冬の零度という設定だから、日本軍将校と兵隊は真冬の防寒具を着て撮影を行わなければいけなかった。だから、10分間ほど撮影をして夏の日差しを浴びて顔から汗が流れるようになると、真冬に汗はおかしいから一度撮影を止めて役者はほぼ裸になって水浴びをするということを繰り返しながら、少しずつ撮影が行われたという。このように、真冬ではなくて真夏の三原山で撮影が行われた背景には、人気俳優、特に仲代達矢丹波哲朗の2人のスケジュールの調整から、真夏の三原山で撮影せざるを得なかった。特に丹波は「Gメン80」などの他のドラマ、映画もかけもちでこの映画に出演しており、拘束できたスケジュールは10日ほどだった。たった10日間で丹波哲朗が出演するシーンは全部取らないといけないので、これは本当に大変だったという。だから、丹波哲朗の演ずる児玉大将が仲代の演ずる乃木大将と2人で話し合うという重要なシーンなどは、最初にスタジオ内で撮影をしたという。

 

しかし、映画のクライマックスでもある丹波が演ずる児玉大将が第三軍の参謀たちを叱責するシーン、参謀たちに乃木に代わって命令を出すシーンは丹波もロケ地の三原山まで行って撮影をした。流石に、そのクライマックスシーンの撮影がスタジオ撮影で出来が悪いと映画全体の品質が下がるからである。

 

 

丹波哲朗が演ずる児玉大将が第三軍の参謀たちに約2分間しゃべり続けて命令を伝えるシーンがあるが、このシーンで丹波は多忙だったのでセリフをほとんど覚えていなかった。それで、丹波がしゃべるシーンではカメラの後ろに2人のスタッフが大きなカンニングペーパーを持って立っていて、そのカンニングペーパーをたまに見ながら丹波はこのシーンを演じた。

 

 

しかし、丹波は日程がとても過密だったので、第三軍の参謀たちに命令を伝えるシーンでは2分間ほど丹波が演ずる児玉大将がしゃべり続けるのだが、丹波はセリフをほとんど覚えていない。というか、覚える時間がなかった。だから、丹波がしゃべるシーンでは、カメラの後ろに大きなカンニングペーパーを持ったスタッフが2人いて、丹波はカメラの後ろにあるカンニングペーパーをたまに見ながら見事に演技を行った。こういう長セリフの撮影の仕方もあるのである。しかし、これは丹波哲朗仲代達矢レベルの俳優だから許されたことだし、出来たことであろう。まだキャリアが10年以内の若い俳優にはこんなことは許されないし、だいたい、出来るわけがない。「二百三高地」の前に「007は2度死ぬ」で日本政府代表として、ショーン・コネリーとも共演をして国際デビューもしている丹波哲朗だから出来たことだろう。

 

「一方で今の映画は」などと言うと顰蹙をかいそうだが、映画「スターウォーズ」の頃から俳優がCG、ロボットなどと共演することが多くなり、また、ロケで撮影をして俳優がセリフをちょっと言い間違えたりなどの小さなミスをしても、最近のハイテクでは後から修正することが出来るようになってるらしいので、「二百三高地」の頃のような鬼気迫る雰囲気が伝わってこない。

 

一つの例として、「スターウォーズ」でオビ・ワン・ケノービィ役を演じたイギリス人のアレック・ギネスだが、「『スターウオーズ』に出てた人だ」などと子供から言われるのを非常に嫌っており、本人は「『戦場にかける橋』『アラビアのロレンス』に出ててた人だ」と言われると喜んだという。やはり、ベテランで英政府から「サー」の称号と勲章まで貰っていた誇り高い俳優が、「宇宙人の役を演じた人だ」とか言われるのを嫌ったのだろう。(苦笑)