今日の日記のテーマはタイトルの通りだけど、ドイツでは「鬼滅の刃」「宇宙戦艦ヤマト」「ガンダム」「宇多田ヒカル」ブームのようなものは聞いたことがない。写真はドイツの大学都市で、観光地として有名なハイデルベルク。
他民族国家で移民が多いドイツでは、日本での鬼滅の刃ブームのような現象は起こりにくい。個性と個人主義が強いという理由もある。
日本では3年~5年に1度くらいの頻度で「〇〇ブーム」が起こるけど、僕が知る限りではドイツなどのヨーロッパ諸国で映画、ドラマ、アニメ作品、音楽アーティストなどがブームになることは滅多にない。日本で「〇〇ブーム」が起こりやすいというのはやはり「村社会」「単一民族」なので、「みんなが『鬼滅の刃』を見に行ってるから、見に行かないと仲間外れになる」という心理があるからだろう。一方で移民が多くて多民族国家のヨーロッパでは「他人は他人、自分は自分」という個人の個性が強いので、「みんなが流行の話をしているから、自分も流行に乗らないと」という心理はほとんど起こらないのである。
それに、ドイツというのは日本のような今は東京、その前は京都を首都として中央集権国家として国を作ったのではなくて、元々、プロイセン、バイエルン、ヴェストファーレンなどの別々の国が1870年に武力で統一されて成立した連邦制度の国である。だから、元プロイセン帝国の首都のベルリンで流行ったことが、元バイエルン王国の首都のミュンヘンでも流行ることはあり得ない。ドイツ人の全員が団結して同じことをするのは、サッカーワールドカップの時、オリンピックの時などでドイツ代表選手を応援する時ぐらいのようだ。(苦笑)。
個性と個人主義が強いドイツでは、近所の子供が塾に通っているから、うちの子供も塾に通わせるというような親もいない。「うちと他の家族は違う」という考えが当たり前である。
だから、ドイツでは小学生の年少から「お受験ブーム」といって子供を塾に通わせることもしない。「小学校の同じ学年の生徒の多くが塾に行っているので、うちの子も塾に通わせる」という心理はドイツ人の親にはない。テレビに映っているアナウンサー、芸能人を見て「この人東大卒なんだよね、すごいね」などという話をすることもない。ドイツでは有名大学は毎年順位が変わるし、理系はA大学が強いけど、文系はB大学が強いという大学のランク付けだから、日本のように毎年東大が一番なので、「東大王」というクイズ番組も絶対にあり得ない。「テレビに映っている人が有名大学卒業だろうが高学歴だろうが、他人とうちは違う」という個性の強さと個人主義が確立しているから、「周りの家族が有名中学合格を目指して塾に通わせてるから、うちも塾に行かせないと」という心理は、個性と個人がとても強いドイツでは起こらないのである。ドイツ人と付き合っていて思ったのは、学力よりもコミュニケーション力をつけて、人との付き合い方、特に他民族との付き合い方を親が子供に教えることである。
ただ一方で大学院卒業で博士号を持っている人を[Herr Doctor](女性の場合は[Frau Doctorin])「博士さん」と呼んで職場では敬意を払うことはある。ナチスドイツ軍の場合もゲッベルス、シュパイデル将軍などが大学院卒だったので「博士」と呼ばれており、特別扱いされたのは有名である。シュパイデルの場合は明らかに反ヒトラー派の将軍だったが、「博士号を持っている将軍を逮捕すると、国防軍全体が混乱する恐れがある」という恐れから逮捕されなかった。シュパイデルは軍事学の知識が深かったので、戦後も西ドイツ軍の幹部に再就任して来日もしている。
ドイツではサッカードイツ代表、その他のスポーツ選手がワールドレベルで強いので、日本のようにアニメ、映画などのフィクションの世界での英雄を必要としていない。
それで、ドイツで「鬼滅の刃」ブームのような短期間のブームが起こりにくいのは、スポーツがとても強いという理由もある。ドイツはオリンピックでは夏の大会では常に30個ほどの金メダル、冬の大会でも10個ほどの金メダルを獲得するのが当たり前で、世界一のスポーツの祭典といわれているサッカーW杯では、ご存じのように既に4回も優勝している。日本人はまだテニスの最大の大会であるウィンブルドンでは個人では一度も優勝したことがないが、ドイツは男子はベッカー、ミヒャエル・シュティヒが、女子はグラフなどが優勝している。特に、1980年代から90年代初めのドイツのテニス選手は圧倒的に強かった。
僕の意見としては、日本で「〇〇ブーム」が起こるというのはスポーツ界などの現実の世界で英雄が少ないから、アニメ、映画、ドラマなどのフィクションの世界での「〇〇ブーム」が起こるのだと思う。「『鬼滅の刃』に出てくる主人公みたいに強くなりたい」と思うから鬼滅の刃が起こってるのだろう。ドイツの場合はスポーツ界を中心に現実の世界に強いヒーロー、ヒロインがたくさんいるから、別に映画、アニメなどのフィクションの世界での英雄を必要としないようだ。
写真下はサッカーワールドカップでドイツ代表を応援するドイツ人たち。個性の強いドイツ人たちが団結して一つのことを行うのは、このような国際的なスポーツイベントの時ぐらいのようだ。