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アニメ映画ばかりを見ることの危険性

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「鬼滅の刃」が興行成績の1位になったが、最近の日本映画でヒットをしているのはアニメ映画ばかりである。しかし、アニメ映画は実際には有り得ないファンタジーということを忘れないでもらいたい。

 

 

最近は、日本映画というとアニメ映画ばかりが全世界でヒットして実写の映画はあまりヒットしていない。これは、些細な事だと思う人が多いだろうが、僕自身はこれはけっこう大変な勘違いの元だと心配している。

 

大変な勘違いの一つは、現実には絶対に存在しないようなキャラクターに憧れてしまうことである。「鬼滅の刃」は煉獄さんという正義感がとても強い人が人気があるので、大ヒットをしているが、実際にはあんなにカッコよくて正義感の強い人は存在しない。同じような理由で、「るろうに剣心」に出てくる緋村剣心という人も絶対に存在しない。僕は実は言うと、「るろうに剣心」は見たことはないので詳しくは知らないが、「剣心は100人以上人を斬ったけど、1人も殺していない剣豪」という宣伝文句を聞いたことがある。これを聞いた時点で「そんな剣豪はいるわけがない。100人を日本刀で斬ったなら、半分くらいは殺しているのが現実の剣豪だ。最も偉大な剣豪と言われる宮本武蔵だって相当数の敵を殺している」と僕は思った。さらに、「漫画は子供と若者向けだから、特に血生臭い話が嫌いな若い女性向けに『誰も殺していない』という有り得ないフィクションをつけたのだろう」とも思った。

 

 

現実の世界には「鬼滅の刃」の煉獄さんのような英雄はおらず、本当の歴史上の英雄は坂本龍馬のように、彼の成功を嫌う人に殺されてしまうことがある。

 

 

写真上は有名なイギリス人の英雄を描いた「アラビアのロレンス」。ロレンス大佐はイギリス軍の将校だが、純粋にアラブ人の独立のためにアラブ人を率いて第一次大戦でトルコ軍と戦かった。しかし、戦後はその活躍をずる賢い政治家と軍人たちに利用されて、「アラブ人の独立は認めず、イギリスとフランスの保護領にする」と決められてしまう。これが現実の英雄の姿である。

 

日本に目を向ければ、幕末の英雄で有名な坂本龍馬と彼の仲間は、イギリス、フランスなどの欧米列強が隙あらば日本を植民地にしようと虎視眈々と狙っている中で、長州を中心とする尊王派と幕府を中心とする佐幕派の争いを最小限に留めようと努力をした。その結果、坂本龍馬が「大政奉還」の原案を作り、徳川幕府の徳川慶喜もこの案を採用して、徳川将軍が天皇に政治を返すという「大政奉還」で日本の無血革命は成立したかに思えた。しかし、ご存じのように龍馬は仲間の中岡慎太郎と共に大政奉還から約1か月後に、幕府の役人によって斬られてしまう。その後、坂本龍馬という無血革命主義者がいなくなったので、薩摩長州などの新政府軍対幕府軍の戊辰戦争は始まってしまうのである。これが歴史の残酷な現実である。

 

つまり、現実の世界ではアニメ、漫画のように正義感が強い平和主義者が勝ってハッピーエンドということはなくて、実力がある英雄の成功を嫌ってそれを妨害しようとする愚かな人はどこにでもおり、むしろ、愚かな人たちが勝ってしまったりとか、なんかドロドロとした玉虫色の決着に終わることが多い。そういうことが多いから、アニメのように現実にはあり得ない話がヒットするのだろうけど。(苦笑)

 

写真下は「るろうに剣心」の漫画の表紙。とても人気がある漫画だが、やはり若者と子供向けの漫画の話なので、「本当にはこんなことはあり得ない」ということを知っておく必要がある。

 

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全世界で大ヒットした日本映画はアニメ映画ばかりで、実写映画で大ヒットしたのは「踊る大捜査線」ぐらいしかない。「日本はアニメに描かれてるような国だ」などと、勘違いしてる外国人すらいる。

 

ja.wikipedia.org

 

上は日本映画の歴代興行成績一覧だが、リンク先を見ればわかるように、ベスト10の中には実写版には「踊る大捜査線」と「南極物語」が入ってるだけで、その他はアニメ映画ばかりで、特にスタジオジブリの映画が圧倒的に強い。特に平成時代は「スタジオジブリの映画が公開される」と聞いただけで、多くの人が注目した。一方で実写版の映画は昭和時代の人気が信じられないほどに落ち込んだ。これには、日本人でも僕のようなアラフィフ、アラフォー以上の実写映画が好きな映画ファンはガッカリしている。

 

アニメ映画は確かに見ていて楽しいのだが、やはり僕はアニメは子供と若者向けの娯楽映画だと思っている。理由は話があまりにも現実離れしているからである。わかりやすい例を挙げると、「ガンダム」では10代の若者たちがロボットを操縦して宇宙で戦っているが、現実には10代の若者がロボットを簡単に操縦することなど出来ない。「ガールズ&パンツァー」でもカワイイ女子高生たちが各国の戦車を操縦しているが、現実世界では女子高生が戦車を操縦することはまずあり得ない。

 

外国人が日本について勘違いをしていた例としては、1990年代に来日したクロアチア人女性が日本の成田空港に着いた時に、「飛行機で降りた国を間違えた。お城もお寺もなくてコンクリートの建物ばかりで、侍も着物を着た女性もいない。ここは日本ではない」と思って情報センターに行って、「すみません、ここは本当に日本ですか?」と質問したと、彼女がトーク番組に出た時に言っていた。彼女はハリウッド映画の「将軍」を見て日本が好きになったので、400年ほど前の日本が今でも続いてると誤解していたのである。

 

このクロアチア人女性以外にも、日本人男性は週末は着物を着て本物の刀を持って、剣術の稽古をしているなどと誤解している外国人がいる。そのように誤解していたドイツ人にドイツで会った時には、「日本には銃刀法という法律があるから、個人が日本刀を所持する時には警察の許可が必要です。この審査がすごく厳しいのです」と説明したら、ガッカリしていた。(笑)

 

もちろん、日本の美しい面を描いた映画と、楽観的で楽しいアニメ映画ばかりを見て楽観的に生きるという考え方もあるだろうが、昭和時代に「影武者」「乱」「二百三高地」「八甲田山」のような「悲劇」を上手に描いた実写版映画をたくさん見た50歳過ぎの人間としては、なんか違和感を感じるのである。楽しいアニメ映画と同時に、「禁じられた遊び」「自転車泥棒」「Uボート」のようなラストに何の救いもない映画も見てほしいと思うのである。