- 2013年には「世界の幸福度ランキング」で10位以内だったブータン国が、今では調査対象外にまで急落してしまった。これは、ブータンでインターネット網が充実した結果、多くの国民が外国の豊かな生活を知ってしまったからである。
- 僕が南米のボリビアという貧しい国の農園で30年前に勤務していた時も、「私は世界一幸せな人だ」と言っていたおばさんがいたが、恐らく今のボリビアでもインターネットが充実しているだろうから、ブータンと同じように外国の豊かな生活を知ってしまったので、幸せだと思ってる人は減ってるだろう。
2013年には「世界の幸福度ランキング」で10位以内だったブータン国が、今では調査対象外にまで急落してしまった。これは、ブータンでインターネット網が充実した結果、多くの国民が外国の豊かな生活を知ってしまったからである。
写真はアジアのヒマラヤ山脈山中にあるブータン国王夫妻だが、彼らが2011年11月に来日した時に、ブータン王国が経済的には貧しいにもかかわらず、「世界の幸福度ランキング」で10位以内に入っていたので、日本でかなり話題になったのを覚えているだろうか?一方で日本は経済的には先進国で他国と比べると失業率もインフレ率も低くて、老後の年金、医療保険などの社会福祉もまあまあ充実しているのに、いつも「世界の幸福度ランキング」では50位~60位で先進国の中では最低である。そこで、貧しいけれど幸福度ランキングが高いブータンが、ブータン国王が来日した当時は注目された。
ところが、最近、池上彰が司会するテレビの情報番組を見ていると、「ブータンはインターネット、携帯を国民のほぼ全員が使えるようになったことで、外国の経済的な繁栄、安定した福祉制度などを知ってしまい、幸福度ランキングが急落して、2013年には10位以内だったのが、今では調査対象外まで落ちてしまいました」と、池上彰が言っていてパネラーたちが驚いていた。僕も驚いた。
こちらのサイトにブータンが「世界の幸福度ランキング」の調査圏外にまで、約10年間で急落したことが書いてある。
一方、南アジアにあるブータンは、発展途上国ながら2013年には北欧諸国に続いて世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られるようになった。国民が皆一様に「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と答える姿が報じられたのを覚えている人もいるだろう。
しかし、ブータンは2019年度版で156か国中95位にとどまって以来、このランキングには登場していない。
「かつてブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入ってこなかったからでしょう。情報が流入し、他国と比較できるようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がったのです」
僕が南米のボリビアという貧しい国の農園で30年前に勤務していた時も、「私は世界一幸せな人だ」と言っていたおばさんがいたが、恐らく今のボリビアでもインターネットが充実しているだろうから、ブータンと同じように外国の豊かな生活を知ってしまったので、幸せだと思ってる人は減ってるだろう。
僕が南米のボリビアに1993年にいた時にも、現地で現地の人々と一緒に農園経営の仕事をしていたのだが、農園に住んでいる50歳くらいのおばさんが、「私は世界で一番幸せな人です。農園で素晴らしい人たちと一緒に生活できて、週に1回は教会でイエス様に祈りを捧げて、こんなに幸せな生活はありません。不幸な人たちにこの幸せを分けてあげたいです」と言っていた。僕はこのおばさんにように、自分が世界で一番幸せだとい言う人を初めて見た。それに、これは農園で働いている農夫とその家族ほとんどに言えることで、多くの人が「農園で農作物を作ることは不安定な生活ではあるけれど、家族と仲間と一緒でとても幸せだ」と言っていた。
しかし、僕が思うにはブータン国民もボリビアの農園で生活している人たちも似たような環境にあったと思う。つまり、日本人に比べると外国からの情報量が限られているから、雨風をしのげる家があって農業の仕事をして貧しいけれど生活が出来て、そして、ブータンなら仏教、ボリビアならカトリック教に祈りを捧げているから幸せだと思っていたのだろう。
でも、今のようにインターネットで外国の情報が入ってくると、ブータンもボリビアも先進国に比べると失業率はすごく高いし、インフレ率もすごく高い。ボリビアではボリビアの通貨であるボリビアーノが信頼できないから、何か買う時はドルで支払う方が歓迎されていた。それに、恐らく、老後の年金も病気、ケガをした時のに医療福祉制度も日本に比べると充実していないから、そのような社会的弱者を守る制度も整備しないといけないと気付いたのだろう。そういう制度が外国は充実しているが、自分たちの国はあまり整備されてないと気付いた時に、「自分たちは全く幸せではない」とわかってしまったのだと思う。
「世界の幸福度ランキング」で常に上位にいるのは、フィンランド、スイスのようなヨーロッパの人口1千万人未満の中小国であり、こういう国は日本とは違って国民の数が小さいから直接民主政治とか小さな政府を作って、国民の不満を政府がよく聞くことができる。こういう小さな政府は日本のような人口が多い国には作ることが無理だが、ブータン、ボリビアのような人口が少ない国ならできるはずのことだから、これからヨーロッパ人のようによく働いて、本当に幸福な国を目指さすべきだろう。