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映画「雪風YUKIKAZE」はほとんど戦闘シーンのない映画

映画『雪風 YUKIKAZE』の見どころは?太平洋戦争下、海に投げ出された仲間を救い続けた「奇跡の艦」を描く - MAMOR-WEB

 

上映されている映画「雪風YUKIKAZE」は竹野内豊が駆逐艦雪風の艦長役を演ずる戦争映画だが、雪風が幸運艦と呼ばれる由来となった戦争の多くの海戦に参加したが生き延びたという肝心の戦闘シーンはほとんど描かれていない。

 

 

この記事には映画「雪風YUKIKAZE」のネタバレが含まれています。

 

月曜日の午後に仕事の帰りに映画「雪風YUKIKAZE」を見てきた。戦後80年という節目の年に作られた戦争映画で日本海軍一の幸運艦の太平洋戦争の戦いぶりを描いたというので見に行ったのだが、僕のような軍事マニアが激しい戦闘シーンの連続という戦争映画を期待して見に行くと完全に肩透かしを喰らってガッカリすることとなる。この映画で一番多いシーンは、海戦が終わった後に沈没した軍艦から退艦した多くの生存者を救出するシーンである。

 

雪風は太平洋戦争を戦った日本海軍の軍艦の中で一番幸運な軍艦で、開戦から南方資源確保のための東南アジア占領のための諸作戦に従事。その後、ミッドウェー海戦、ソロモン諸島の制海権を巡る各海戦に参加しているが、映画で描かれているのはミッドウェー海戦で日本海軍の敗北が決定した後に、沈没した軍艦から退艦した乗員を救助するシーンだけである。このミッドウェーの乗員救助のシーンがオープニングとなる。そして、その後はソロモン海を巡る諸海戦のシーンは飛ばされていて、1943年11月に竹野内豊が演ずる寺澤艦長が着任するシーンになる。その後、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦、戦艦大和が沈んだ坊ノ岬沖海戦に参加して、終戦まで生き延びた数少ない軍艦となる。そして、これらの海戦でもアメリカ軍の軍艦と戦うシーンはあまり描かれていなくて、日本海軍の敗戦が決まった後に沈没した軍艦を退艦した生存者を救出するシーンばかりが描かれている。

 

 

やはり上映時間2時間と制作費の制限があるからだろうが、この映画は反戦映画の要素が強くて、「戦争に負けても生き残ればいいではないか」ということがテーマになっている。だから、戦闘シーンを期待して見に行った人たちからは酷評されている。

 

 

これはやはり映画の上映時間が2時間しかないこと、制作費にそんなに大金をかけられないという制約があったからだろう。だから、雪風が幸運艦と呼ばれた由来の多くの駆逐艦という小型の軍艦が失われたソロモン海の多くの海戦を生き延びたシーンは完全にカットされていて、これらの海戦の戦闘シーンは全く描かれていない。この映画のHPにも描かれいてるが、テーマは「生きて帰る 生きて還す」なので、海戦が日本海軍の敗北に終わった後に海を漂う生存者を救出するシーンばかりが描かれている。

 

つまり、やはり第二次大戦に負けた日本が制作した戦争映画だから、左翼的な反戦映画の色合いがかなり強い。「戦争に負けたとしても、国民が生き残って戦後に国が復興できればそれでいいではないか」というのがこの映画のメッセージだと思われる。ネタバレになるが、この映画のラストシーンは成長した竹野内豊が演ずる寺澤館長の娘が戦後に海上自衛官となり、台風で屋根の上に取り残された少年と猫を救助するシーンになっている。人命救助がこの映画のテーマになってるのである。

 

まあ、実際駆逐艦の任務は海戦においては空母戦艦という主力艦の護衛が任務であり、敵は空母戦艦という主力艦を目標として攻撃してくるので、空母戦艦が沈んだ後には駆逐艦が生存者の救出を行ったのだから、時代考証としては間違ってはいないが、駆逐艦雪風が太平洋戦争で参加した海戦の戦闘シーンを期待して見に行くと、とてもガッカリすることになる。

 

だから、雪風の戦闘シーンを期待して見に行った人たちは、海戦後の生存者の救助シーンばかりなので、この映画を酷評している。(苦笑)