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ロシアの市民はプーチンとは明らかに違う

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ロシアがウクライナに侵攻してから1週間が経つが、ロシア軍の攻撃はウクライナの首都キエフと第2の都市ハリコフ前面で頓挫しており、勇敢なウクライナ兵と市民はロシア軍にかなりの損害を与えている。このままウクライナ軍が持ちこたえてるうちに、ロシアへの経済制裁の効果があらわれて、プーチンが戦争継続を断念してくれるのを祈るしかない。

 

2年前に東京で会った30代のロシア人女性は旧ソ連を嫌っていて、「教会を否定してレーニンスターリン崇拝を押し付けた共産主義は間違ってた。ナチスドイツに戦争で勝ったことを誇りに思ってるのは老人だけで、若者にとっては経済発展の方が重要」と言っていた。

 

 

ところで、ロシア国内では主にソ連邦崩壊以後に生まれた若者と、ソ連邦崩壊の頃にまだ子供でアメリカと東西冷戦をしていた頃のソ連をよく知らない世代とが中心となって、各地で反戦運動と反プーチン運動が起こっており、東西冷戦の頃の「強いソ連」と、第二次世界大戦ヒトラーナチスドイツに勝った「偉大なソ連」に興味のない世代にとっては、プーチンと老人のロシア政治家が始めたウクライナ侵攻はどうでもいいようである。

 

実際に2年ほど前に東京で35歳のロシア人女性に会って話をしたが、「ソ連時代のソ連軍がナチスドイツ軍と戦う国策映画なんて興味はない。レーニンスターリン時代の栄光を描いた国策映画は今のロシアの若い世代には意味がない。私はロマンチックな恋愛映画しか見ない。それよりも、プーチン大統領とメドベージェフ首相にはロシアを経済大国にしてほしい。ロシアが日本と同じような豊かな国になれば、私も日本に来て仕事をしなくてすむ。でも、私は日本語がある程度しゃべれるようになったから、まずロシア人がビザなしでも日本に滞在できるように両国の関係を良くしてほしい」と彼女は言っていた。ソ連時代については、「キリスト教を禁止して聖職者を投獄して、レーニンスターリンを尊敬するように共産党政府が強制して、政府に反対する者を逮捕した自由のない時代。今のロシアの方がソ連よりも絶対に良い時代。今の中国も昔のソ連と同じようなことをやってるが、彼らも間違いに気づくべきだ」と言って厳しく批判していた。

 

 

1999年春にドイツのシュツットガルトの語学学校でドイツ語を勉強した時も、2人の若いロシア人女性が同じクラスにいたが、2人とも美しくて優しい女性だった。2人ともシベリア出身で、1人はハバロフスク、1人はチュメニ出身だった。

 

 

さらに僕は他のロシア人女性とも知り合いだったことがあり、1999年春にシュツットガルトの語学学校にドイツ語勉強のために語学留学をしていた時にも、同じクラスに2人のロシア人女性がいた。1人はIという女性で、もう1人はMという女性だった。Iはロシアの極東のハバロフスク生まれだけどドイツに引っ越して住んでいて、Mはシベリアのチュメニ生まれでドイツ人男と結婚したのでシュツットガルトに移住する準備として、ドイツ語学校に来ていた。写真上はシュツットガルト中央駅。僕はこの中央駅でIと一緒に、ホームステイ先の家族に帰る電車を待ったことが何度かあった。

 

Iの方はもうちょっと事情が複雑で韓国系のロシア人なので東洋人の顔立ちをしていて、彼女の母がドイツ人男性と再婚をしたのでシュツットガルトに引っ越してきたのだった。僕はIに、「日本の植民地となった朝鮮から逃げてロシアのハバロフスクに移住したのでは?」ときいたけど、「ハバロフスクに移住したのは私の祖父の時代だからよく知らない。私は韓国語はしゃべれない」と言っていた。それで僕が、「スパシーバ、ハラショー、ヤポンスキー(日本人)、ゲルマンスキー(ドイツ人)、ダワイ(急げ)、ダー(はい)、ニエット(だめ)ぐらいだけどロシア語をちょっと知ってる。トルストイ原作の『戦争と平和』のようなロシア映画を見たことあるから」と言うと笑って喜んでいた。当然ながら2人とも美しいロシア人女性だった。

 

 

 

語学学校での僕の最後の授業の時に、「日本人にとってはドイツとロシアは第二次大戦のせいでイメージがあまりよくない」という話を僕はしたけど、ハバロフスク出身のIは「戦争があったから仕方がない」と言って苦笑いしていた。

 

 

 

それで、僕が語学学校の最後の授業の日に、「日本人はアメリカとヨーロッパのイギリス、フランス、イタリアなどはロマンチックなので旅行して訪れたいけど、ドイツとロシアは第二次大戦の時のヒトラースターリンなどの悪いイメージがあるので、あまり好きな人はいません。ドイツの場合は日本はヒトラーと同盟を結んで一緒に敗戦国になったし、ロシアはシベリア抑留と東西冷戦時代の悪いイメージがあるので、この2国はイメージが悪いのです」と言った。

 

すると、その時にMはいなかったけど、Iは[Das war nur der Krieg oder?]「それって、単に戦争だったからじゃないの?」と言って、そういう話題は避けたい感じだった。絶対に「旧ソ連は邪悪なナチスドイツ軍を撃退して東ヨーロッパを解放して・・・」というようなことを言う性格ではなかった。それでしばらくは第二次大戦と日本とドイツとロシアについて話をしたけど、最後に中年女性のR先生が「今日はT(僕のこと)がずーっと話をするのかと思ったけど、もう時間もないのでやめにします」と言ったので終わりになった。最後にアメリカ人女性のJが「Tはよく第二次大戦の話をしてくれた。多くの国籍の人がいる中で第二次大戦の話ができたのは有意義だった」と言うと、ロシア人のIもうなずいて僕に微笑んでいた。授業が終わって僕が教室を去る時には、やはりIとJは欧米流に僕の頬にキスをしてから、「日本人男性は優しくて礼儀正しくて勤勉と聞いていたけど、Tは本当にそういう男だわ。もうあなたに会えないのは残念だわ」と言って、2人の目には涙があふれていた。

 

 

僕がドイツの語学学校で会ったロシア人女性はハリウッド映画と米英の音楽を好む普通の若い女性だったが、外国を訪問できるロシア人はロシア社会では恵まれている人たちであり、貧民層のロシア人は彼女たちとは違うのだろう。

 

 

僕がシュツットガルトの語学学校でドイツ語を勉強したのは1999年の春のことだが、ソ連邦崩壊からまだ10年も経ってないけど、もう旧ソ連時代の栄光などは若いロシア人女性にはどうでもいいことのようだった。彼女らはロシアでもアメリカ系ファーストフード店のマクドナルドで食事をして、ハリウッド映画を見てマイケル・ジャクソン、マドンナなどのポップ音楽を聴くのが好きだと言っていた。

 

ただし、ドイツ、日本などに滞在して日本語、ドイツ語を学んでるロシア人というのは、ロシア人の中でもある程度経済的に恵まれていて、最低でも高卒以上の教養のあるロシア人たちであり、ロシア人でも海外には行けないような貧民層のロシア人はかなり違う考えをしていると思う。多分、今回のウクライナ戦争を支持してるのは、ロシア人でも旧ソ連時代の栄光を知る年寄りのロシア人と、生活が苦しい貧民層のロシア人であろう。どの時代の戦争でも国内の政治が上手くいかなくなると、政府は戦争を起こして国民の不満を国外に向けようとするものである。