Deutschland-Lab

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国威発揚作品が多いロシア映画

 

 

 

「T34 レジェンド・オブ・ウォー」というロシア製の戦争映画は、現実にはあり得ないストーリーだった。そして、やはりソ連兵がカッコよくヒーローとして描かれていた。

 

 

今はウクライナで戦争が続いてるので、またロシアについての記事を書くことにする。この前、2018年にロシアで制作された「T34 レジェンド・オブ・ウォー」という戦争映画を見たが、ストーリーはやはりソ連軍の戦車兵が映雄扱いでドイツ軍の戦車兵がヒールというストーリーだった。まあ、ナチスドイツはドイツ制作の映画ですら悪役扱いだから、当然ながらロシア制作の戦争映画では悪役なんだろう。(苦笑)

 

ストーリーはソ連軍のT34ー85に乗ったソ連人の戦車兵たちが、ドイツ陸軍最高司令部の命令でドイツ軍のパンター戦車とドイツ東部の演習場で模擬の戦車戦を行うが、機転を利かせてT34戦車に本物の弾薬を搭載してドイツ軍のパンター戦車と本当に演習場で撃ちあって、パンター戦車を破壊する。視察していた機甲兵総監のグデーリアン大将などのドイツ軍幹部がパニックに陥る中、T34に乗ったソ連人の乗員たちは演習場からロシアを目指して帰還の長い旅に出るのである。当然ながら、ドイツ軍もパンター戦車数台で追撃するが、やはりロシア映画なので追撃を振り切って最後はロシアに帰ることに成功する。

 

シナリオ自体はこんな感じでメチャクチャである。実際にこんな話があり得るのかというと絶対にあり得ない。T34戦車でドイツからロシアまで戦車戦をしながら帰ろうとしても、途中で弾薬切れと燃料切れになるだろうから帰れるわけがない。それに、途中でパンツァーファウスト(バズーガ砲のような対戦車兵器)を持ったドイツ軍歩兵の待ち伏せをうければ、一撃でT34は破壊されるだろう。しかし、この映画で評価するべき点はドイツ軍側の将軍でハインツ・グデーリアン上級大将が出てくることと、武装SSの機甲部隊がけっこう格好良く描かれてることである。ドイツ軍側の将軍で米英軍と戦ったロンメルルントシュテット、モーデル、ケッセルリンク元帥が出てくる戦争映画はあるが、グデーリアンが出てくる映画は極めて珍しい。でも、グデーリアンは東部戦線で活躍した将軍だから、やはりロシア映画では欠かせない登場人物だったのだろう。

 

 

基本的にソ連時代からロシアの映画会社が作る戦争映画というのは、第二次大戦でいかにソ連人が勇敢に戦ってナチスドイツ軍に勝ったかという話ばかりである。

 

 

上の写真はソ連が1970年から3年という長期間に渡って制作した「ヨーロッパの解放」という戦争映画だが、全部で5作で総上映時間は7時間以上という大作である。この作品もやはりソ連のモスフィルムというソ連政府の国営企業が作成した国策映画である。1943年7月のクルスクの戦いから1945年5月のベルリン陥落までを描いているから、当然、ソ連軍が勝った戦いばかりで、1970年代というとベトナム戦争共産主義陣営の北ベトナムアメリカ軍に勝利した時代であり、いかに共産主義国ソ連軍が強いかということを描いている。僕もこの映画を20代の頃に見たが、ソ連兵が占領地区で行った蛮行は待ったく描かれておらず、ソ連軍は規則正しい正義の軍隊として描かれており、一方でナチスドイツ軍は邪悪な侵略者どもと描かれており、「事実とは全く違うではないか」という感想を抱いた。

 

 

だいたいロシア映画というのは、特にソ連時代は「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人などのソ連人たちは、いかに邪悪なナチスドイツ軍と勇敢に戦って『大祖国戦争』(ロシアで第二次大戦のこと)に勝利をしたか」という戦争映画ばかり作っており、このような戦争映画を通して国民の愛国心を煽る作品ばかりだった。グーグルで「ソ連の戦争映画」で検索をすればすぐにわかるが、ソ連制作の戦争映画というと吐き気をもよおすような「ナチスドイツ軍に勝利したソ連軍万歳」という映画ばかりである。一方でソ連兵が東ヨーロッパなどの占領地域で行った蛮行などはほとんど描かれておらず、ソ連兵はソ連と東ヨーロッパを解放した英雄と描かれている。恐らく、ロシア人はこんな映画ばかり見てるから、「自分たちの祖先はナチズムと戦った映雄だ」などと信じているのだろう。

 

 

ドイツ、東ヨーロッパの映画では冷戦時代のソ連共産党による弾圧も描かれてるが、ソ連ロシア映画にはそういうことは描かれてないので、ロシア人はロシア政府が正義だと信じてるのだろう。

 

 

だが、これがポーランドチェコなどの東ヨーロッパの映画だと全く描き方が変わり、第二次大戦末期から東西冷戦時代のソ連人というと自由と民主化を求める東ヨーロッパ人を力で弾圧した乱暴者として描かれている。ソ連とロシアをよく理解するには、東ヨーロッパ、ドイツなどの作った映画もよく見ないといけない。ドイツ映画の「善き人のためのソナタ」、「トンネル」などを見ると東ドイツを含めて東ヨーロッパが本当に解放されたのは、1989年11月にベルリンの壁が崩れて、その後の1991年末にソ連が崩壊した時だとよくわかるだろう。

 

ロシアとソ連の映画について書いてきたが、ロシア人は「ソ連軍はナチスドイツ軍に勝った正義の軍隊だ」という戦争映画ばかりを作って見ているから、プーチンウクライナ戦争を始めて今のロシアをまた旧ソ連に戻そうとウクライナ戦争を始めても、多くの人が「プーチン大統領は正しい」などと信じているのだろう。洗脳というのは本当に恐ろしい。