Deutschland-Lab

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岸田首相よりもドイツのショルツ首相の方がすごい危機にある

アメリカ合衆国のナンシー・ペロシ下院議長と(2022年2月19日)

岸田首相の支持率が下がって「来年春には解散総選挙をしろ」という声が高くなっているが、ドイツの社民党政権のショルツ首相の方がものすごい政権の危機にある。ショルツ首相の所属する社民党の支持率は「ドイツのための選択」にも負けて、第3党にまで下がっている。

 

 

日本の岸田首相に「増税メガネ」とかあだ名を付けて、自民党の政治資金パーティ裏金問題くらいで岸田首相を辞めろと言ってる人が多いが、ドイツのショルツ首相の方が遥かに大きな危機にある。写真右がドイツのショルツ首相で、アメリカのナンシー・ロペス下院議員と握手をしている。

 

日本だと岸田政権不支持の理由は政治資金裏金問題、増税とその他の自民党議員の不祥事くらいだが、ドイツの場合はもっと政権は火の車状態で、ドイツの近所で行われているウクライナ戦争、ウクライナへの武器貸与を渋るドイツ社民党政権、ロシアのガスパイプラインが全く稼働しなくなってドイツでは暖房が使えなくなる危機など、数え上げたらキリがない。一方でショルツ政権では上手くいった政策はあまりない。今でも移民に甘い政策はメルケル政権以後は継承されているが、これも「ドイツのための選択」という戦後は左翼政権のドイツでは珍しいほどの右翼政党がドイツ各地で議席を確保している。どれくらい右翼政権かというと、日本だと終戦の日には必ず靖国神社に参拝するべきだと主張して、移民政策とLGBTには厳しいという自民党右派くらいの右翼政党らしい。

 

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今のドイツの世論調査ではドイツのショルツ首相が所属する社民党の支持率は17%で、一番支持されていたのはキリスト教民主・社会同盟の連立政党が26%で、ドイツのための選択という極右政党が2位の22%に躍進している。それで、70%がショルツ政権を支持しないという結果になっている。こんな状態なら日本の政治制度だったら、ショルツ政権は既に今年の夏には総辞職をして解散総選挙になってるだろう。それでもショルツ政権は2021年の12月に発足したから、2年経った今になってもショルツ首相が辞任をして解散総選挙になる気配は今のところない。

 

 

これほど最悪な状況でもショルツ首相が辞めないのは、ドイツは「戦う民主主義」という制度を取っており、首相が亡くなるか倒れる、戦争、大規模な自然災害などの危機がない限り、内閣の解散総選挙は4年に1度しか実施しないという制度なのである。僕は日本もこの制度を導入するべきだと強く思う。

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しかしながらドイツのショルツ首相が辞めないのは、ドイツの場合は戦う民主主義制度を導入しており、総選挙の時に最低でも選挙の得票数の5%は取らないと議席は与えられない。5%を取ったら定数736議席のうち40議席が与えられる。僕が強く思うには日本もこの制度を導入するべきだ。少なくともれいわ新選組、社民党、みんなでつくる党などの少数で何をしたいのかわからないような政党には議席を与えても意味がない。ドイツがこのように最低でも40議席しか与えないのは、ヒトラーの率いるナチス党がワイマール共和国から選挙で勝って国を盗んだ背景には、ワイマール共和国では弱小政党が乱立して首相の辞任が相次ぎ、政権が不安定だったので、その隙をついて一番に極右政権で強気の政策を掲げていたナチス党が第一党になってしまったのである。このように、政情が不安定で短期政権が乱立するという政治情勢は今の日本とよく似ている。

 

だから、日本に「戦う民主主義」を導入すれば、小政党が乱立して政情が不安定ということはなくなるはずである。そして戦争、大きな自然災害などの日本人の命に関わるような緊急事態がない限り、総選挙は4年に1度しか実施しないと決めるべきだとも思う。そんなに簡単に解散総選挙ばかりやっても、今の日本だとますます自民党が強くなって野党が弱くなるだけだろう。そして、岸田首相が仮に辞任したとしても何も変わらずに石破か高市が首相になって、また似たような内閣になるだけである。