
- 太平洋戦争開戦前の昭和16年8月に総力戦研究所で戦争のシミュレーションを行って、日本は必ず負けるという結果が出たが政府はその結果を重視せずに開戦に踏み切ったという、「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」というドラマが今週末にNHKで放送される。
- NHKのドラマ制作の意図としては、総力戦研究所で開戦前に敗戦することがわかっていたのに戦争を始めた日本政府は滅茶苦茶だということだろう。だが、当時、ヨーロッパではヒトラーの率いるドイツ軍が快進撃を続けており、日本政府は同盟国のドイツがイギリスとソ連を降伏させるのはほぼ間違いないと判断していた。同盟国ドイツがヨーロッパで勝つことを前提として日本は連合国と開戦したから、日本政府の判断はそれほど滅茶苦茶ではなかった。
太平洋戦争開戦前の昭和16年8月に総力戦研究所で戦争のシミュレーションを行って、日本は必ず負けるという結果が出たが政府はその結果を重視せずに開戦に踏み切ったという、「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」というドラマが今週末にNHKで放送される。
今週末の8月16日(土)と17日(日)にNHKスペシャル「シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~」というドラマが放送される。以下、NHKのサイトから引用する。
NHKスペシャルが終戦80年の夏に送る、実在した総力戦研究所に着想を得たドラマ「シミュレーション 昭和16年夏の敗戦」。
舞台は、総力戦研究所。若きエリートたちは「対米戦必敗」を予見していた…? 命をめぐる“頭脳と心の闘い”を描く、究極の人間ドラマが誕生しました。
原案は、猪瀬直樹さんのロングセラー「昭和16年夏の敗戦」。主人公・宇治田洋一(うじた・よういち)役に池松壮亮さんを迎え、日本映画界の旗手・石井裕也監督が初めて戦争ドラマに挑みます。
つまり、このNHKのテレビドラマは、開戦前の昭和16年夏には日本がアメリカ、イギリスなどの連合国と戦争をすれば開戦から1年位は何とかまともに戦えるが、それ以後はジリ貧になって3年後には本土を爆撃機で空襲されるようになって、最終的には惨敗するという大悲劇になることを予想していたが、それでも連合国との開戦に踏み切ったという当時の政府の滅茶苦茶ぶりを描いているようだ。
総力戦研究所のシミュレーションの結果として、日本が連合国に負けるという報告を当時の近衛内閣の大臣たちは聞いた。それに対して彼らはこのように回答をした。「しかし、実際の戦争では何が起こるかわからない。日露戦争の時もまさか日本が大国ロシアに勝てると思って戦争を始めたわけではないが、結果としては日本が勝利を収めて日本はアジア一等国になった。戦争では何が起こるかわからない」。
NHKのドラマ制作の意図としては、総力戦研究所で開戦前に敗戦することがわかっていたのに戦争を始めた日本政府は滅茶苦茶だということだろう。だが、当時、ヨーロッパではヒトラーの率いるドイツ軍が快進撃を続けており、日本政府は同盟国のドイツがイギリスとソ連を降伏させるのはほぼ間違いないと判断していた。同盟国ドイツがヨーロッパで勝つことを前提として日本は連合国と開戦したから、日本政府の判断はそれほど滅茶苦茶ではなかった。
それでは、総力戦研究所では日本が連合国に必ず負けるという結果が出ていたにもかかわらず、なぜ、日本は米英連合国との開戦を決断したのか?それは当時、ヒトラーの率いるナチスドイツ軍が快進撃をしていたヨーロッパの地図を見ればすぐにわかることだ。
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これが、総力戦研究所が連合国との戦争のシミュレーションを行った1941年夏から翌年1942年夏の頃のヨーロッパの地図。ヒトラーの率いるドイツ軍が連合国であるイギリスとソ連以外のほとんどのヨーロッパ諸国を占領するか同盟国にしており、ドイツと同盟をしていた日本はヒトラーの率いるドイツ軍の快進撃を見て、ドイツがイギリスとソ連を降伏させてヨーロッパで勝利を収めるのはほぼ間違いないから、日本はアメリカと戦争を始めても大丈夫だと判断したのだった。
だから、総力戦研究所で米英と戦争をすれば2年後以降は日本は戦場で敗北を重ねて3年後以降には必ず降伏することになるというシミュレーションの結果が出ても、その結果を近衛内閣も、その次の東條内閣も重視しなかった。その理由は、ヨーロッパでドイツが連合国のイギリスとソ連を降伏させればアメリカだけが孤立するから、日本は戦争に負けないという結論を当時の日本政府は出していた。
それなのになぜ日本政府は総力戦研究所を作って戦争のシミュレーションをさせたのかというと、恐らくドイツ軍がヨーロッパでイギリスとソ連を降伏させるまでに、日本軍がどれだけアジアで戦えるのかということをシミューレーションをして知っておきたかったのだろう。それなら、総力戦研究所の結果を聞いた時に、「日本はドイツと同盟して戦っていて、ヨーロッパでドイツ軍が勝つのはほぼ間違いないから、総力戦研究所の結果はあまり意味がない」と政府は回答するべきだったのだが、ドイツ頼みで戦争を始めるという他力本願と知られると政府としては体裁が悪いから、そのような本音は言わなかったのだろう。