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ドイツ人名字と名前についての豆知識をまとめてみた!

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 ドイツ人の名字というとどういう名前を連想するだろうか?ドイツ人の名字には何らかの意味があることが多い。また、ドイツで一番多い名前は語尾が[~er]「~する人」で終わる名前である。 

ドイツ語の名前には(~する人)という意味の名前が多い。語尾が(~er)(~mann)で終わる名字の人がこれに当てはまる。

 

ここで、わかりやすいようにサッカー選手で例をあげると、例えば、1990年に西ドイツは3度目のサッカーワールドカップ王者になったが、23人の選手と監督を合わせた24人のうち10人が[~er]「~する人」の意味の名前である。イルクナー、ロイター、コーラー、アウゲンタラー、ヘスラー、フェラー、シュタイナー、メラー、プフリュグラー、ベッケンバウアーの10人。

もっと極端な例をあげると1970年代のドイツ年間最優秀選手のうち、71年と79年のフォクツ以外はゼーラー、ネッツアー、ベッケンバウアー、マイヤーの4人であり、8回も「~する人」という名前の選手が独占している。2010年代でもバイエルン・ミュンヘンとドイツ代表にはノイアー、シュヴァインシュタイガー、トマス・ミュラーという名選手がいるから、今でも「~する人」という名前の選手は多い。

また、[~mann]も「~する人」という意味であり、[~ski]もポーランド系の名前ではあるが、(~する人)の意味である。前者はサッカー選手だとクリンスマン、レーマン、第二次世界大戦の有名な軍人だとハルトマンなどがいる。後者はサッカー選手のリトバルスキー、ポドルスキーなどがその例である。

ヨーロッパでは、ドイツ系の名前や名字でもドイツ人とは限らない。

 

僕の友達でヴァチンスキという人がいたが、彼は「家の家系図を中世まで遡ったけど、ずっとドイツのヘッセン(ドイツ北西部の街)在住だった。もし、東ヨーロッパから移住してきたとしたらそれ以前だろうね」と言っていた。このヴァチンスキさんの例のように、ヨーロッパの場合は中世からかなり移住、混血が進んでいるので、ドイツ人だけど東ヨーロッパ系の名前だったり、ロシア人なのにドイツ系の名前の人がけっこう多い。日露戦争の時の旅順要塞司令官のステッセルはドイツ系であり、日露戦後に小村寿太郎とポーツマス講和会議で交渉をしたウィッテはオランダ系である。また、アーセナルの監督で有名なWengel(ヴェンゲル)は明らかにドイツ系の名前だが、フランス人である。このようにヨーロッパでは、「ドイツ系の名前だからドイツ人だ」と限られているわけではない。これは、日本でも中国大陸、朝鮮半島から日本に来て日本に帰化した人がけっこういるのと同じだろう。

サッカーで有名なベッケンバウアーはドイツでも珍しくて面白い名前。

 

それで、ドイツ人もけっこう驚く珍しい意味の名字が、有名な元サッカー選手のBeckenbauer(ベッケンバウアー)、Schweinsteiger(シュヴァインシュタイガー)である。Beckenは「池、プール」という意味なのでBeckenbauerは「プールを作る人」という意味になる。Schweinは「豚」という意味でSteigerは「上がる人」という意味だから、Schweinsteigerは「豚が上がる」という意味で、ちょっと冗談を入れると「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざになる。だから、サッカー番組で、バイエルン・ミュンヘン所属のSchweinsteigerという名前を初めて聞いた時には笑ってしまった。

さらに面白かったのは、ドイツの陸上選手ですごく綺麗でスタイルがいいのに、名前がKesselschlager(ケッセルシュラガー)(やかんを打つ人)、Spiegelburg(シュピーゲルブルグ)(鏡の城)という名前の女性がいたことである。「(鏡の城)の女性はまだロマンチックな感じがするけど、(やかんを打つ人)の女性は名前でいじられたりしているのかな?」などと思った。

Spiegelburg(シュピーゲルブルグ)まで言及したのでわかると思うが、有名な映画監督のSpielberg(スピルバーグ)はユダヤ系ドイツ系アメリカ人であり、ドイツ語で(遊びの山)という意味になる。だから彼はドイツ人が嫌いなので、「インディ・ジョーンズ」「プライベート・ライアン」「バンド・オブ・ブラザーズ」のようなドイツ軍を悪役として描いた戦争アクション映画を作ったのである。ドイツ人の中には、「スピルバーグの作った戦争映画は見ない」と言っていた人がいた。

ドイツ人は名字でジャーマンジョークを言うこともある。

 

ドイツ人の名字でこういうジョークもできる。実際にドイツの女子バレーボール選手にSchlecht(シュレヒト)(悪い)という意味の家族名の人がいた。彼女はなんか可哀そうだと思った。なぜなら、色々とジョークのネタにされやすいからである。

A(女性のSchlechtさんの写真を見せながら)「彼女がSchlecht(シュレヒト)(悪い)」
B「なんで?そんなに悪い女なの?」
「違うよ。彼女の名前が悪いんだ」
「なんていう名前なの?そんなに悪い名前なのか?」
「違う、違う。彼女はMonik・Schlecht(モニク・シュレヒト)という名前なんだ」
「なんだ、名字がシュレヒトなのか」

このネタを言った時には、僕のドイツ人友達はだいたいが笑っていた。「ジャーマン・ジョーク」とでも言っておこうか。(笑)

日本人がドイツ人に自己紹介をすると、「この名字にはどんな意味があるのか?」と質問されることがある。

 

ドイツ人の名字には何か意味があることが多いので、僕が1999年にシュツットガルト近郊のH家でホームステイを始めた時に漢字で名前を書いて自己紹介をしたら、「この名字にはどんな意味があるのか?」と聞かれた。もちろん、その前にH家の名字の意味教えてくれたが、確かH家はハンブルク近郊の村の出身なので、そこの地名に由来があるというような意味だったと思う。それで、僕の名字はよくある「〇藤」(藤はとうと読む)なのだが、次のように説明をした。

「日本人の名前で〇藤というのは、藤原家という貴族が昔はいたので、それを助けるという意味だと思います。〇藤というのはけっこう多い名前です。でも日本でも藤原家といっても必ずしも先祖は貴族ではありません。日本で貴族制度が廃止になったのはもう 随分と前のことですし、僕もよくわかろりませんが複雑な事情がありますから。それで、仙台の 街を作った伊達政宗の家臣に〇籐という同じ家族名の侍がいるので、僕の父は『うちは絶対にこの〇籐という侍の子孫だ』と言ってますが、証拠はありません。でも、僕の父の父(私にとってはおじいさん)は第二次大戦に負けて大日本帝国が終わるまでは田舎の大地主だったので、先祖が侍という可能性はあります」


この僕の説明を聞いてH家の主人も次のようなことを教えてくれて、それから日本の侍について質問をした。
「ドイツ、オーストリアではハプスブルグ、ホーヘンツォレルンという昔の皇帝の名前の人は確実に皇帝、貴族の子孫で大金持ちなんだ。ドイツに詳しい君ならわかると思うが、(フォン)が名前に入っている人も貴族の子孫なんだ。我々は日本の侍の歴史にも興味があるのだが、伊達政宗の子孫、徳川家の子孫とかは今は何をしているんだ?」
「伊達家、徳川家の子孫の人はやはり莫大な財産と貴重な遺産を持っているので、歴史博物館の顧問とか歴史の研究家とか、それ以外の方々はやはり優秀な方々なので大企業の顧問、政治家とかをやってます。日本もヨーロッパのドイツもアメリカ、オーストラリアのような新世界とは違って長くて古い歴史があるので、貴族、騎士、侍の子孫が金持ちなのは同じですね」
このように、名前の歴史から会話が広まることもよくあった。

だから、日本から海外に長期滞在をする時は、自分の名字の由来、先祖の歴史とかを知っておいたほうがよいだろう。何も説明できないと困ることになるだろうから。

 

写真上はドイツサッカーの「皇帝」ベッケンバウアー。ブログ本文にも書いたように、ベッケンは「プール」でバウアーは「作る人」の意味なので、「プールを作る人」という意味の名字になる。 

 

 

最後に、僕のブログを訪れてくれてありがとうございます。この記事のようにドイツに約1年間滞在した時に多くのドイツ人と交流した時の体験談以外にも、ドイツで10試合ほどブンデスリーガの試合を観戦していて、ドイツサッカーが好きな方に対して色々と興味深いブログ記事を書いているので、時間があったら他の記事も読んでみてください。ドイツ語の勉強の方法、ナチスドイツ軍に関する記事も書いてますし、これからもそういう記事を書いていきます。