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昔の吉本興業のムチャクチャな営業

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今日も僕が小学生だった頃の思い出について書こうと思います。何度も書いてますが、別にドイツネタがつきたのではありません。ドイツに関するブログは別の機会に必ず書きます。

 

僕は父が大手銀行勤務だったので転勤がすごく多く、小学校卒業までは全国各地を転々と引っ越していたことは、このブログでは何度も書いた。それで、今は東北地方の仙台住みだが、僕が小学校6年の時は父は銀行の大阪支店に勤務しており、家族は阪急電鉄の西宮北口駅近くの銀行の社宅に住んでいた。

 

 

小学校6年の秋に大阪の難波に行った時に、僕と妹は「なんば花月に行きたい」と父に言った。「まだ座れるなら花月に入ろう」と父は答えた。

 


1980年秋の日曜日、難波、道頓堀方面に僕と父と妹で出かけた時に、僕も妹もお笑いが好きだったので父に、「吉本のなんば花月に行ってみたい」と言った。「こんな日曜日の昼間になんば花月に行ってもお客で満員で中に入れるわけないだろ?花月に行くなら数日前に座席を予約しておかないと、入れないに決まってる」と、父はもっともなことを言った。それでも僕と妹が「行ってみないとわからない」と言ったので、「それなら、花月に行ってまだ座れるようなら中に入ろう」と父は言って、それで花月に行ってみることになった。写真上は吉本興業の本拠地であるなんばグランド花月。ただし、僕が行った昭和時代後期の頃は、まだこのようにリニューアルされる前で名称も「なんば花月」だった。

 

 

父がなんば花月のチケット売り場のおばさんに「まだ座れますか?」ときいたら、おばさんは「座れますよ。どんどんお入りください」と答えたので、チケットを買って中に入った。

 


父は花月の入り口の窓口に行って入場券を売っているおばさんに、「あの、今からでも座れますか?なんか、随分と混んでいるようなんですけど?」と質問すると、おばさんは「どんどん、入ってください。まだまだ座れますよ」と言った。父は入り口周辺がすごく混雑してるのを見て、「本当に座れるんですか?どう見てもすごく混んでいて、座れないと思うんですけど」と疑いながら確認したが、おばさんは「劇場の中は席がたくさんありますから、座れますから」と言って”座れる”ことを強調した。それで、3人分のチケットを買って中に入った。

 

 

ところが中に入ると「座れますよ」というのは大嘘で、どこも立ち見客で一杯だった。父は全館を見て空席を探したが空席はどこにもなかった。

 

 

ところが、中に入ってみると”座れる”というのはとんでもない大嘘で、劇場は満席どころか全部の通路にも人が座っていて、劇場のドアの所にも人だかりが出来ている状態だった。父は呆れてビックリして「あのおばさんが言ってたことは全くの嘘じゃないか!どこにも座れないじゃないか?ちょっと2階席とかも全部見てくる」と言って、劇場の中の空いてる席を探しに行った。

しばらくして、父は帰ってきたが「2階席もどこもみんな人だらけで空いてる席なんてどこにもないぞ。いや、いや、これが吉本の商売のやり方か?お金になるためならなんでもやるんだな。こんなの客の数人から裁判で訴えられたら、”詐欺罪”で吉本は有罪で経営陣は謝罪することになるぞ」と苦笑いしながら言っていた。父がこういうことを言っていたのは、父は東北大学法学部卒業であり、民法、商法、会社法などの法律にすごく詳しいからだった。だからこそ、父は全国に支店があるお堅い銀行で勤務していたのだった。


結局、僕ら3人は運良く明石家さんまのトークと今いくよくるよの漫才を見ることが出来たが、難波花月の中で一度も座席に座ることは出来ず、さんまのトークはドアの隙間から見て、いくよくるよの漫才は座席と座席の間の通路に座って見た。そこまで見たら疲れたのでもう帰ることにした。

 

 

銀行員の父は帰りの電車の中で「あんなデタラメな商売があるとは、今日は勉強になった。お堅い企業があんなことをやったらアウトだが、吉本だから許されるのだろう」と笑って言っていた。

 

今でも覚えてるが、西宮北口に帰る阪急電車の中で父は、「今日は本当に仕事の勉強になった。あんなデタラメな経営方法でも人気があれば続けることが出来るんだ。もちろん、お父さんの務める銀行であんな詐欺みたいなことをやったらすぐに事件だけど、関西で人気のある吉本興業だから出来る経営方法なんだろな」と、ずっと笑いながら言っていた。


次の日に小学校に行って、「吉本のなんば花月に行ったら全然席がないのに、入場券を売っているおばさんは嘘をついたので、劇場の中に入ってしまった」ということを言ったら、友達は笑って「なんば花月はいつもそうだよ。『今は満員で座れません』なんていう本当のことは絶対に言わないよ。俺が行った時も全く同じだったから。まあ、吉本のやり方は昔からあんなふうに無茶苦茶だから」と言っていた。(笑)

 

こういうデタラメな営業が許されたのは昭和時代までであり、21世紀、令和時代になった今ではコンプライアンスが厳しくなってるので、今時こんな営業をしていたら吉本は訴えられるだろう。

 

 

しかし、これは1980年というまだ昭和時代の話であり、今は2021年の令和時代である。40年近く前なら許されたことが今でも許されるわけがない。40年間の間に日本の企業の経営方法を始め、色んなことが随分と変わった。もし、今でもなんば花月で席が満席なのに、「まだまだ座れますよ」などという嘘をついて入場券を売っていたら、吉本の経営方法は時代遅れとしか言いようがない。


今ではコンプライアンス(法令順守)が求められて、パワハラはだめになり、ブラック企業経営はすぐに報告されている。また、学校と家庭の教育でも体罰は一切禁止になり、いじめ、校内暴力の防止のために、各学校にはスクールカウンセラーが配置されることになっている。


数年前に吉本興業所属芸人の闇営業問題があって大問題になったが、既に高度経済成長期も終わり、こんなに色んなことが新しく変わった時代に吉本興業だけが、「40年前、30年前はセーフだったから」という感じで何も変えないと言うのは、絶対にあり得ないだろう。吉本の経営陣も現代に合った改革を進めないといけない。