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なぜ旧共産主義国はドーピングをするのか?

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ロシアの女子フィギュアスケート選手のワリエワはドーピングスキャンダルに巻き込まれて、4位という不本意な成績で終わった。旧共産主義国のロシアはなぜよくドーピングをするのだろうか?

 

 

昨日(2月17日)の北京オリンピックのフィギュアスケート女子の競技が終わって、ドーピングスキャンダル渦中のロシアのワリエワは4位に沈んで表彰台には上がれなかった。ネットの書き込みでは、「15歳のワリエワがドーピングスキャンダルに嫌気が差して、わざと失敗を連発して4位になったのではないか?」という書き込みもある。僕の意見としては、「ワリエワ自身には罪はないが、彼女の周りの大人たちが金メダル獲得をもっと確実にするために、違法な薬を彼女に服用させてドーピングをした」と思っている。それにしても、ロシアのアスリートは別に違法なドーピングをしなくても多くの金メダルを取れるはずなのに、なぜかわざわざドーピングをさせるので五輪から締め出されてしまって、ロシア国の選手として五輪に参加するのを禁止されてしまっている。本当に不思議な国である。

 

 

共産主義時代の旧東ドイツでも、アメリカでも有能な選手にドーピングが行われていた。選手本人の知らないうちに、違法薬物が使用されていたケースもよくあるようだ。

 

 

上の写真は1988年のソウルオリンピックの水泳競技で、出場した6つの種目全部で金メダルを獲得して、「ソウルの女王」と呼ばれた旧東ドイツの水泳選手のクリスティン・オットーである。引退後は約10年間ほど、ZDF(日本のNHKのような公共放送局)のスポーツコーナーのアナウンサーをしていた。しかし、1999年から2000年の調査で東ドイツの水泳選手時代にドーピングをしていたことが判明したが、彼女自身は何も知らなかったと語っていて、金メダルははく奪されてない。

 

他国に目を向けるとアメリカの元陸上女子選手で、2000年のシドニーオリンピックで3個の金メダルを獲得したマリオン・ジョーンズも、2007年の調査で薬物使用が明らかになり、翌年にはシドニーオリンピックで獲得したメダルは全部抹消されてしまい、メダルは次の順位の選手たちに贈られた。その後の彼女の人生は極めて不遇である。ジョーンズの「先輩」とも言われている同じアメリカ黒人女性選手のフローレンス・ジョイナーも、健康なアスリートのはずなのに1998年に38歳という若さで亡くなったので、「選手時代に危険で違法な薬物を使用していたのでは?」と疑われている。

 

ロシア、旧東ドイツという旧共産主義でよくドーピングが行われていた理由は、「共産主義の成功」ということをオリンピックで世界に宣伝したいからである。共産主義国は問題が多いと批判されてるが、オリンピックで成功した国ということを宣伝したいようだ。

 

 

このように、オリンピックでメダルを目指すスポーツ選手は危険で違法なドーピングをしてまでメダルを獲得することがあるが、やはり、旧共産主義国の旧ソ連、旧東ドイツですごく多かった。

 

その大きな理由は「共産主義国家の成功」ということを世界に宣伝できるのが、オリンピックという体育イベントだからである。共産主義国はアメリカを中心とする資本主義国から「経済的に劣っていて失敗してる」などと批判されることが多いので、「オリンピックでたくさんメダルを取っているのだから、共産主義国の方が強い」と世界に宣伝したいのである。

 

もう一つの理由は、西側資本主義国はサッカー、野球、バスケットなどのプロスポーツという娯楽があるが、共産主義国にはプロ選手というのはいなくてプロリーグがないので、オリンピックでドーピングをしてまでたくさんメダルを取って「共産主義国は強い。成功している」ということを世界と国内に知らせたいのである。もちろん、スポーツイベントとしてはサッカーワールドカップの方がオリンピックよりも人気がある大きなイベントなのだが、プロリーグがない共産主義国はどうしてもフランス、ドイツ、ブラジルのようなサッカー大国には勝てないので、オリンピックでたくさん金メダルを取って共産主義国の強さを証明したいという思いが強いのだろう。その証拠にサッカーワールドカップであまり活躍してないロシア、中国、アメリカのスポーツ選手は、オリンピックでドーピングをしてまでメダルを取って、その後にオリンピックから追放処分を受けることが多い。

 

 

いずれにせよ、旧共産主義国のように国家の組織ぐるみでドーピングをしていて、そのドーピングスキャンダルに巻き込まれてしまったワリエワのような若い選手たちは、本当にかわいそうだと思える。一番悪いのは若いアスリートを国家の成功と強さの宣伝に使っている、スポーツ選手の背後にある国の組織だろう。